■ 十一日目


)&0$$Gh4-4)$&&r:39"$+)2-P9,2'$}$/,<%!B#?8・)0.1-)>

『ナイン、お前の腕は確かに力強いよ
お前が本気であがけば、届かない所にだって届いちまう
だがな、その振り回した爪が、誰を傷つけてるのか、お前は知ってるのか

そう言われて、俺は今から薬を飲む
次にこのメモを見たとき、その意味が分かるそうだ
なにいってんだか、訳わかんねぇ』


書いた覚えのないメモと、白い粉と、飲料水のビン

確かに俺の字だ



ロFカG腆モ8・Piナk3b3ZオRィdlテ.6xンア??@ン・MmェHウ'」ィ(ホ&B衄ツtモuホ袢XdYB
O}ッqVヘシ尋F」xカrZZ「?b原ロy廛g鶫*キロト_勞s^ZNe味F kルENF・|Jヲ粢ュiQ?ワx(イ昆
ヌO.ワリ埣b恋メ<5イ。hso゙・キ擇ニワカ寉-fォシ色lYN「はG・珍ィ・X>憐9)・奘1セfO




パレードが綺麗だったんだ
沿道には沢山の人々。
中央の道を行くのは、良くわからない昔の格好をした人と、大きな山車の列
その列の真ん中に、一際目を引く輿があって、その中から一人の女の子がニコニコしながら手を振ってた

ねぇ、あの女の子、誰? なんであそこにいるの?

「女の子? あぁ 巫子様の事か
そんなことも知らないで祭りに出てるのか
怒るなって、だってな、今日の祭りはあの子のためのものなんだ」

あの子が巫子様に選ばれたことを祝う為の祭り
あの子が巫子様に選ばれたことを知らしめるための祭り

だから、あの子が主役なんだって。

「それとね・・・」

女の子じゃないの!!

「男の子でもないんだけどね」




なんか大騒ぎだった
すっごい怒られた
だって、退屈そうだったんだもん


あの子、あんなに立派な服着てたのに、走るのが速かった。

「遊んでくれるの わんちゃん」

ちがう、僕は犬じゃなくて、おおかみだ
でも、おあいこか
僕も、最初あの子を女の子だと思ったし

追いかけっこで、追われる側で、結構速かったけど、追いついかないと泣きそうになって
追いつかれたら、捕まって、あちこち撫でられてくすったくて、尻尾でくすぐり返して
2人で笑い転げてるうちに、大人に見つかった。





もう一回、会いたくて、遊びたくて

でも規則が、警備が厳しくて


それでも、なんとかたどり着いた。
警報をすり抜け、警備を巻いて、枝の上からあの子を見下ろす。

窓越しに見るあの子は、あの頃の面影が、はっきり見て取れる。

よう、覚えてるか?

ダメみたいだな。 
ま、しょうがない
随分と時間が掛かったしな

これならどうだ
そんな思いで、しっぽでくすぐる。

ダメか
ま、しょうがない
随分と時間が掛かったしな

そんじゃ まずは 自己紹介からだ





随分と罠も警報も増えてんな。

ま、だからどうしたって話だがよ。


よ、元気か

なんだよ、随分愛想がねぇな
え? 誰だって?
確かに少しあいちまったが、そんなに怒るなよ
ちょっと俺にも色々あったんだって

ほら、笑ってくれよ
そんな思いで、しっぽでくすぐる

って、なんて顔してんだよ
まさか・・・
本当に・・・


わかったよ、なら、しょうがねぇ
それなら、忘れられなくしてやるぜ
まずは、街に繰り出すところからか?



wC=+33・GA`#410A>G*+・A-/GBO/KFR)+N1\%(377ァ」・B@




「ひでぇ夢だな・・・」
協会の医務室で目を覚ます。
どうにも精霊兵の睡眠Uにやられたらしい。
なかなか目を覚まさないので運び込まれたそうだ。

「混乱と睡眠の相互作用で悪夢を見るという前例が・・・」
聞いてはみたものの、どうでもよかった

時間的にはあまり経ってねぇみてぇだな。
とりあえず戻るか。

また、忘れられても困るしな

■ 十三日目


暇だ。

依頼をこなして宿に戻ったはいいが、やることが無い。
この街にもだいぶ慣れてきたはずなんだが、やはりクテラには夜の街に繰り出そう、なんて発想は微塵も起きないらしい。
まぁ、それならそれでありがたい。
どうせ街に出たところで、この有様では何もできやしないし、
クテラが余計なトラブルを連れてくるのは、今までの事から考えても明白だ。

そんな感じで、ありがたくはあるんだが・・・
「暇だ」

ベッドに転がりながら、備え付けの机で日記を書いているクテラに聞かせるでもなくうめく。
そういえば寝床がベッドなのにも慣れちまったな。
急に変わり過ぎた生活だったが、良くも悪くも慣れてしまうんだな。
あいつが隣にいる生活も、それが普通に感じるようになっちまった。



暇に耐えかねて、宿の親父が設置した本棚から持ち出した本に目を向ける。
『世界の焼肉』『つくね大全』『幻の味 〜インフェルノ焼きを求めて〜』
クテラにバーベキューの説明をした時の資料が積みあがっている。
他の読み終わった本も加わって、だいぶがさばってきた。
あとで下に返しにいかねぇとだな。

しかし、なんとも微妙なセレクションだ。
だがまぁ、にらむ度青い顔をした親父が、蔵書を入れ替えるようになった。
どうやら、精霊協会の図書館から借りて来てるみたいだな。
なかなかいい環境になったもんだ。


積まれた本を1冊手に取り読むでもなく眺めはじめる。
返す前にもう1度見ておきたいと、1番上に積んでおいた本だ。




「なにを読んでいるんですか?」
めずらしく、クテラがこちらを気にしてきた。
読書中は気を使ってなのか、滅多に話しかけてこないんだが。
今日は、日記に書くことも見つからないんだろう。

「城の本だ」
そう言って『築城技術指南書』と書かれた表紙を見せた後、挿絵のある辺りを開いてやる。

きれいですね、とか、すごいですね、とか そんな感じの感想を聞き流しながら別の事を考える。

「そういえば、白の里にも大きな城壁があったよな あんた、あれ、どうやって作ってか知ってるか?」

「知ってますよ 巨人族の土木親方が積んだんですよね」

この間、一部崩された場所も親方たちが修理してました そう胸を張って答えるクテラ。

「あぁ、正解だ」

じゃあ

「この城の城壁はどうやって作ったか知ってるか?」

挿絵の城を指さしながら訪ねる。

「やっぱり巨人さんが?」

「なわけねぇだろ この城は普通の人間の街にあるんだぜ?」

「でも、こんな大きな石 人間じゃ運べないですよね」

あぁ、俺もそう思う。
だが、違う。人間たちはやっちまうんだ。
時間を費やし、道具を使い、技術を重ね、巨人並みの仕事をしてしまう。


だから、あの里の人間たちだって、そのうち魔物を必要としなくなるかもしれない。
だから、クテラ お前だって・・・

「じゃあ、人間の親方と巨人の親方が力を合わせれば、もっとすごいのが作れますね」

そうであったら、どれほどいいか・・・

■ 十五日目


契約の日、里と森の契約の更新日。
森は里を守り、里は森に尽くす。
その契約はごとの1年契約で、期日がくれば切れてしまう。
だから、新たな契約を結びなおす必要があって、それが契約の日だ。
もっとも儀式を執り行うお偉いさんでもなければ、新年の祭りという意味合いの方が強いんだが。

あと、この日は無礼講が許される日でもある。
なんでも『日付が変わって契約が切れた夜中から再契約の儀式が終わるまでの間は未契約なのだから、御霊にも法にも我々を縛る力はない』とか言った奴がいたらしく、その時の御霊も悪ノリして結果日付が変わってから儀式が終わるまでは無礼講が許されるようになったんだとか。
しかも悪ノリが続いて、年々儀式の開始時間が遅くなっていって、今じゃすっかり夜の儀式になっちまった。
ま、無礼講だといったって、度が過ぎて捕まったバカを何人か見てるから、額面どうりじゃねぇんだろうがな。

クテラは契約の日とクリスマスが重なった、なんて浮かれてやがるが、俺はこの無礼講の日が好きじゃねぇんだ。
無礼講の日にはヤツが来る。
俺が下街に降りてから毎年だ。
特に最初の年はひどかった。
身構える事すら出来ず、横合いからの一撃で終了。
何があったかさえ解らなかった、気が付けば自分の寝床で転がってた。

クテラと一緒に街を歩く。
そこかしこに赤い服の爺さんが置かれているのを見て、ヤツはこれに扮していたのかと妙に納得する。
真っ赤なカッコに、白い髭で顔を隠して。


とは言っても、ハイデルベルクまでは追ってはこないだろう。
今年は大丈夫だ。
そう自分に言い聞かせて落ち着こうとするが、体は警戒を解いてはくれない。
手枷や首輪が外れていてくれたことが有り難い。

「手、繋がないと、今日は人多いですし……」

鎖が無くなって不安なのか、クテラがそんなことを言ってくる。
だけど、それはまずい。
今日に限っては致命的になりかねない。
って、真っ先に出た考えがこれかよ・・・
ヤツは来ない、そう思ってたんじゃねぇのかよ・・・


そうして、買い出しをこなしていく。
いつの間にか、クテラは手を繋ぐのをあきらめ、俺に前を歩かせていた。

そして、ヤツを見つけた。
ご苦労なこった、ほんとにここまで追いかけてきやがった。
流石に、人込みで始める気は無いらしく、あちらに誘っている。
方角から言って、街外れにでも出る気なのだろう。

「わりぃが、ここから別行動にさせてくれ」
突然の事に、クテラが言いよどんでいるうちに走り出す。
とにかくここはまずい。
とにかくクテラの傍はまずい。

まずは、追う展開。
商店街を抜け、露店街をぬけ、目立つ赤い服を追って走る。
今の俺で見失わない所を見ると、誘導の為に加減して走ってるってとこか。
その証拠に、街外れの空き地にたどり着くころには、その背中を見失っていた。

「きてやったぜ、出てこいや」

日が陰り始め、薄暗くなった周囲に目を凝らし、状況を確認していく。

「といっても、俺だけだけどよ」

高木が左手に1本、正面に残土の山、その奥に瓦礫、右手側は平坦だが城壁が近い。

「今のあいつにゃ、あんたは毒だからな」

どこに隠れる、俺ならどこに・・・
状況確認?戦術予測? 今までやったことなかったな。
全て、こっちに来てから学んだ知識だ。
俺も随分と臆病で小賢しくなっちまったもんだ。


高木を警戒し距離を取る

様に動く

ほら、きやがった

背中を取ったつもりで、城壁の上から重い一撃と共に飛び降りてくる。

振り向いて【防御】で受ける。
今ならわかる、これは【強打】だ。
「そういうことかよ」

一度間合いを取る、完全な接近戦では膂力に勝るヤツには勝てない。
相変わらずの赤い服、とその下のごつい体。
そして、白いひげでの変装。
去年と同じだ。
「ずっけぇぞ、今までも、精霊術使ってやがったな」

会話にかこつけながら【命中】を待機させていく。

「大体、なんでこんなとこまで来てんだよ、てめぇ 暇なのか?誰も構ってくれねぇのか?」
【神速】を待機

「そういや、そのカッコ、サンタなんだろ?ごつすぎて最初、解んなかったぜ」
【超神速】を待機

「そんじゃあよ、ここまで来てもらってわりぃが、そろそろ死ねや!!」
【憤怒】発動
 【超神速】対抗発動
 【神速】対抗発動
 【命中】対抗発動
「今年こそくたばれ、クソ親父ーー!!」 

「ぬるい、軽い、出直せ半端野郎」
当然の様に【防御】で止められる。
あぁ、なるほどな、気合入れて殴ってもきかねぇわけだ

その後、当然の様に【強打】(多分Xくらい)を直撃で貰い意識が飛ぶ。
例年どおりと言えば例年どおり。
違うと言えば、何されてたかが解ったくれぇだ。