■ 六日目
さて、どうしたもんかね・・・
色々思う所はあるが、俺、外歩っても平気なのかね。
・・・どうしても、厄介事が起きる様な気がしてならねぇ。
だいたい、このなげぇ鎖、どうすりゃいいんだ。
ジャケットの内側に仕舞い込めるようなもんでもねぇし
・・・自分で持つか?引きずって歩くか?
どっちもカッコつかねぇが、考えてみりゃクテラが鎖を持ってる時だって大差ねぇか。
外を歩く欲求の方が強かったのか、1人で折り合いをつけ宿の外に出る。
結局、鎖は後ろに引きずったままにした。
露店街を歩く。
街の商店が立ち並ぶ通りとは別に、様々な物を売る、様々な屋台が集まる通りがある。
もともと、そう広くない通りの両端に屋台を出しているものだから、中央の通路は、人間、2人分くらいのスペースしかない。
どんな街でも、上品な部分と、そうじゃない部分を持っている。
そりゃそうだ、人だってよそ行きばかりを着て過ごせる訳じゃねぇ。
どんなに取り繕ったところで、金がねぇ奴、仕事がねぇ奴、そんな連中が集まる場所が出来ちまう。
それは精霊協会のお膝元、ハイデルベルクだって例外じゃない。
ま、見るからにやばそうな裏路地は避けるだろうしな。
とすれば、一見華やかにも見えるこの辺りが、つまらないトラブルに巻き込まれる可能性が一番高い場所だ。
「おや、ナインさんじゃないですか」
露店の間を進んでいくと、不意に露店の店員から声を掛けられた。
「こんな所で会うとは思いませんでしたよ。」
「そりゃお互い様だ。なんだお前、いっぱしの商人みてぇなカッコしやがって」
故郷で世話になった男だ。
主に薬品を横流ししてたっけな。
下街じゃ品薄のまっとうな薬も扱ってたので、よく買いに行ったもんだ。
「酷いですね、私は下街に居るころから商人でしたよ?」
「闇商人がよく言うぜ。てめぇに何度粗悪品つかまされた事か」
冗談交じりに、ギロリとにらんでやる。
「いやですね、そんな怖い顔しないでくださいよ。それに、カッコでいったらナインさんだって、随分なカッコじゃないですか?」
「そういやそれで思い出した。あんた、巫女を見なかったか?」
「は?巫女って、あの巫女様ですか? 巫女様も里をお出になられたて、こちらにいらっしゃるんですか?」
ま、そういう反応になるか。
下街に居たとはいえ、元々は里に居た人間だ。
アイツがここに居るなんて、思いもしねぇだろうさ。
「見てねぇならいい。せいぜい励んで出世しな商人殿」
「つれませんね、ま、客に何故を問うなが商人の礼儀。またのご贔屓お待ちしてますよ、ナインさん」
冗談じゃねぇと男に背を向け歩き出す。
■ 八日目
満月ねぇ・・・
気付かなかった
そういうのも、あんま感じなくなっちまったんだな
俺にも覚えがある
ガキの頃なんかは、満月のたんびにぎゃんぎゃん吠えてどやされるもんだ
でもまぁ、そういうのとは次第に折り合いがついていくもんなんだが・・・
あれから、最初の満月
あれから、まだ1ヶ月もたっていない
そりゃ、戸惑うか
あぁそれと、今日の別行動も響いてんのかもな
あのくらいなら大丈夫かとも思ってたが、タイミングが悪かった
だから、しょうがねぇんだ
喉が乾いたらから水場にいくようなもんだ
そう、そんだけだ
翌朝
「〜〜〜!! 〜〜〜〜〜!!!!」
「うっせぇな、こっちは寝不足な」
「ナイン! なんで裸なんですか!!!」
「は?何をいまさら 俺は寝るときはいつも裸だぜ?」