■ 七日目


何もしなくても 時間は進む

何もしたくなくても 事態は動く

いつのまにか 朝が来て

いつのまにか 仲間が増えて

返事もしたし 同意もしたし

戦いもしたし 作成もしたし

迷惑かけてないし 迷惑じゃないし

でも 自分の事は何もできてないし

ただ 実感が無くて

ただ 何にもなれない 現実が重い



人数増えて 旅路も 賑やか 

なんだかノエルも 楽しそう

人数増えて 戦闘 賑やか

森の魔物も 敵じゃない

青い勇者と 赤い少女と 犬の様な生き物と

なんだかもう ボクなんかの出る幕じゃない


結局 ごめんと いてない

だから いいなと いえてない

結局 ごめんと いえてない

だから うらやましいと いえてない

犬耳勇者と その末裔と 箱の様なエンブリオ

なんだかもう ボクがとどく世界じゃない


だから 箱は ボクを選ばない

だから ボクは 箱を選ばない

■ 八日目


まわれ まわれよ 今宵は祭り
まわせ まわせよ さかずきを

天の月ほど みつるさかずき
それなら飲まねば 男がすたる

神火の炎に照らされ 真っ赤
酔った騒ぎも 責めはせぬ

まわれ まわれよ 今宵は祭り
まわせ まわせよ 舞踏の曲を

可愛いあの子が ハンカチ落とした
それなら行かねば 男がすたる

神火の炎に照らされ 真っ赤
途中で消えても 責めはせぬ


浅い眠りの 赤い夢

あの晩から よく眠れない

浅い眠りの 赤い夢

逃げた晩から 眠れていない


ノエルに聞かれて 家族の話

忘れていたい 家族の話


うちの兄さん ゴレム使い

村一番の 力持ち

次の兄さん ノーム使い

村一番の 器用者

間の姉さん ウンディーネ

村一番の 器量良し


みんながみんな 大活躍で

みんながみんな 大人気

なのにお前と がっかり顔で

なのにお前と ため息ついて


浅い眠りの 赤い夢

あの晩から よく眠れない

浅い眠りの 赤い夢

逃げた晩から 眠れていない


ハンカチ目がけて 駆け行くボクに

なんでお前と 白い目で

ハンカチ目がけて 駆け行くボクに

あんたじゃないと 冷めた目で


浅い眠りの 赤い夢

あの晩から よく眠れない

浅い眠りの 赤い夢

逃げた晩から 眠れていない


お前のせいだと 罵るボクに

お前なんかと 罵るボクに

最後に聞いた あの声だけが

最後に聞いた あの言葉だけが

今でも耳の 奥から消えない

今でも胸の 奥から消えない

■ 九日目


今宵 砂原 獲物を探し

年端もいかぬ 少女が1人 

奪い 殺した 千の夜越えて

砂丘に足掛け 少女が1人


かつて かの山 岩屋の砦

泣く子も黙る 盗賊団

連れて行かれりゃ 帰れぬ砦

そこに生まれた 少女が1人


かしらと仰いだ 父の後追い

気がつきゃ既に 盗賊家業

友と家族と 慕った仲間と

奪って 殺す 盗賊家業


やがて 悪名轟く頃に

奪われ 殺され 少女は1人

報いを受けよと 皆殺された

夜の砦で 少女は1人



今宵 月夜に 居場所を探し

年端も行かぬ 少年一人

千と一つの夜越えた

少女の瞳に少年一人 

■ 十日目


人狩少女を引あげて 引き渡しまで ひとやすみ

砂地に寝ころび 夜空を見上げる

追われた時には東の月が 今では西に ひくくかたむく

なぁ と ためしに声をかける

日の出までだ と 声がする


ありがとう たすかったよ

今回だけだ もう これきりにするんだな

だけど なんで いままで どうして

今回だけだ もう これきりないと思うんだな


赤い夜から 聞こえぬ声が

赤い夜から 見えぬ姿が

千と一つの夜を越えた 今夜 今だけボクにも届く

あのさ エンジェル

あの うんと その


ごめん・・・


・・・許さねぇよ


そう・・・ だよね・・・



おまえは おまえの ともとやらを探せばいい

おまえを 英雄にする ともとやらを探せばいい


その為に おまえは 村を出たのだろう?

その為に おまえは 旅をしているのだろう?


どうした 危険な目にあって 里心でも付いたか?

ふざけるな そんな都合よく 頼りにするんじゃねぇ!



そう・・・ だよね・・・




人狩少女を引わたし 東の空に日がのぼる

なぁ と ためしに声かける

だけどあいつは返さない

だけどあいつは喋らない


ゆがんだ関係 ゆがんだ契約

またエンブリオたちの姿は よく見えなくなって

またエンブリオたちの声は よく意味が解らなくなって