※性描写を含みます。ご注意ください。





「ふ、あ……あふ、ぅく……しゅあ、よしゅあっ」
 暗色のスーツに包まれたヨシュアの身体にぎゅっとしがみつきながら、羞恥心なんてどこにもなくなってしまったかのようにぐちゃぐちゃと腰を揺らした。ヨシュアの屹立から漏れる先走りと相俟って、先ほどから俺の身体のナカはひっきりなしに卑猥な音を立てるほどになってしまっているのに、ヨシュアが動いてくれないからだ。
「自分からそんな風に腰振るなんて、女の子みたい。どこでそんな腰の使い方覚えたの?」
「う、ゃ……ちが、ぁ……かってに、うごいちゃ、っ」
「わるいこ」
「ごめ、なさ、ぁ……おねがぃ、っしゅあも、うごいてぇ……」
 キレイに締められたネクタイに頬を擦り付けながら懇願しても、ヨシュアは玉座の背もたれに凭れたまま頬杖を突いて、そのスミレ色の瞳で悠然とこちらの様子を眺めているだけだ。
「やだよ。朝からそんな疲れることしたくないし」
「はふ、はあぅ、あうぅ……でちゃ、お、おれ、もぉ、でちゃあ……!」
「勝手に勃たせて、勝手に入れて……それで好きに動いて、自分だけ出しちゃうんだ?」
 はぁ、と呆れたように吐き出されるヨシュアのため息も、今の俺には身体を熱くするだけのものでしかない。
「ふ、ぇ……ごめ、なさ……ごめん、なさいぃ……!」
「そんな子に躾けた覚え、ないんだけどな」
 体内に埋められた屹立の熱さとは裏腹に、冷たいばかりのヨシュアの声音に泣きそうになりながら、びくびくと疼きの止まらない身体に俺自身戸惑っていた。
 はっきりとした理由は分からないけれど、どうしてか今日は朝から身体が疼いて仕方なくて、どうしても我慢できなかったのだ。起き抜けに、仕事の日にしては珍しく俺が目を覚ましてからもまだ静かに寝息を立てていたヨシュアの寝顔を、十分少々こっそりと眺めていたばちが当たったのかもしれない。
 ヨシュアが起き出して着替え終わるまでは我慢できたものの、優雅な足取りと所作で審判の部屋の玉座に腰掛ける様子を見ていたら、もうどうしても自分の劣情を隠し通すことができなかった。
 気がつけばヨシュアの足元に跪いて、きちんとスーツを着込んだ下肢を暴き、手に取るだけで愛しくてたまらなくなるその性器を口に含んでいたのだから。
 ヨシュアは始めこそ困ったように首をかしげていたものの、まだ時間的にも始業前だったせいか諦めた様子で俺の好きにさせてくれていて、その膝に跨って体内にヨシュアのものを咥え込むのも簡単だった。
 それでも彼はあくまで俺にされるがままの姿勢を崩さなかったから、ヨシュアの気持ちの伴わない性行為は気持ちいいのに切なくて、それでも止められない自分に泣きたくなる。
「ネク君はもう少し我慢すること覚えないとね」
「う、あっ?」
「僕が少しお手伝いしてあげる」
 かちゃ、と微かな音を立てて頬杖を突いていた手首から細身の腕時計を外すと、ヨシュアはそれを俺の屹立にぺたりと押し付けた。
「ひぁ、あぅ……つめ、たっ」
「何分くらい我慢できるかな?」
「い、あぁっ」
 器用な手つきでベルト部分を根元に巻きつけると、残酷なゆびがぎゅっと締め上げたまま金具を留めてしまう。刺激の強さにそのまま射精してしまいそうになったのだけれど、もちろん強い締め付けに吐精することは叶わないまま、ぴくぴくと屹立が切なげに揺れただけだった。
「やだ、ぁ……よしゅ、いやぁ……っ」
 びくん、びくん、と跳ねる身体が怖くて咄嗟にヨシュアの胸に額を押し付けても、大きな手のひらがいつものように優しく背中を撫でてくれることはなかった。屹立から離れた手は変わらず頬杖を突いて、玉座の肘掛に置かれている。そのことが悲しくて、切なくて、ひくつく喉でしゃくり上げてしまうのが止まらない。
「うぅ、あ、く……こんな、の……やらぁ……」
「まだ一分も経ってないよ?」
「っけほ、けほ……ふ、く……くる、し」
 吐き出せない熱がぐるぐると身体の中を逆流するような感覚に、苦しくて呼吸さえままならなくなる。それでもヨシュアの許しが得られないままでは自分で手を動かすこともできず、ただ震えながらヨシュアのスーツの布地をぎゅっと握っていた。
「しゅあ……こ、な……やだよぉ……とって、とってぇ……!」
「あれ? もうこんな時間?」
 時計の文字盤を見て驚いた様子のヨシュアが、背もたれから身を起こす動作で俺も思わず針の指し示す形を見る。始業時間の五分、いや、三分前。
「あは。ほら、出したいなら早く外して出しちゃわないと。ミツキ君来ちゃうよ?」
「へ、え、あっ」
「ほらほら、早く早く」
「ゃ、あ、まって、まっ……やあ、ぁ」
 慌てて屹立を締め付けるベルトに手を伸ばして外そうとすると、ヨシュアの手のひらに強く腰を掴まれて、強く揺さぶられた。先ほどいくら懇願しても指先一つ動かしてくれなかったくせに、今度はぎゅっと締め付ける内部を味わうように深く突き上げてくる。
「ふ、あぁ……! っめ、まって……まっれ、ぇ……うや、ぁ……!」
「ふふ、さっきは動いてって、泣きながらおねだりしてたくせに」
「ひゃあ、ぁ……だめ、だめぇ……あ、あっ」
「んっ……じゃあ、僕はお先に……出すよ?」
 そう言って耳元で堪えるような吐息を漏らすと、言葉通りにヨシュアの精液がびゅくびゅくと内部に叩きつけられるのを感じた。ぬるりと濡れる体内の感覚にぴく、ぴく、と痙攣する身体では、指先一つ満足に動かせない。
「ん、んく……ふゃ……あぅ……」
「あれ、ネク君まだ出してないの?」
 無邪気に首をかしげるヨシュアに身体を持ち上げられると、ずる、と体内の屹立が後孔から抜けていったのがわかって、そのままぺたりと膝の上に座り込みながら、どろどろと内部から流れ出る精液の感触に頭が揺れた。
 震えるゆびでは腕時計の金具を外すことさえ難しくて、未だにみちみちと根元を締め付けるものから熱を解放することができない。
「は、ゃ……あふ、まって、まだ、ぁ」
「ほらぁ、十秒前ー。……五、四、三」
「や、だ……やぁっ……」
「はい、時間切れー。残念でした」
 あっさりと言い放つと、泣きじゃくる俺をヨシュアが膝の上から下ろした瞬間、コツ、と聞きなれたヒールの音が審判の部屋に響いた。
「お取り込み中でしたか?」
 思わず顔を上げると、身体の前で優雅に手を揃えた指揮者の彼女がぴんと伸びた背筋で立っている。けれど、朝でも変わらず凛とした様子の彼女と、はぁはぁとだらしなく息を荒げながら震えている自分を比べて考えてしまって、すぐにうつむいた。
「ううん、大丈夫だよ。ちゃんとノック聞こえてたから。扉も開いてたでしょ?」
「はい」
「でもごめんね、朝からネク君が構って構ってって悪戯してくるからさ。まだこの書類できてないんだ。少し待っててもらえるかな」
「ええ、それは構いませんが」
 語尾を省略しない彼女には珍しく途切れた言葉にちらりと視線を上げて様子を窺うと、どうやら彼女もこちらを見ていたようで目が合ってしまい、どきりと鼓動が跳ね上がった。一生懸命シャツの裾を引っ張って下肢を隠してはみるものの、未だ劣情を解放するに至っていない身体の震えはどうしても誤魔化せない。それどころかぎゅっと押さえつけたせいで疼く下肢に、ぴくりと肩が跳ねてしまった。
「ああそうだ、ミツキ君」
 ぱらぱらと書類を捲る音を立てながら何気なく呟くヨシュアの声に、彼女の氷色の視線も合わせるように動く。
「なんなら、待ってる間ネク君の相手してあげてくれる?」
 天気の話でもするかのような声音で落とされた言葉は、まさしく俺にとっては青天の霹靂だった。
「へっ……」
「それはご命令でしょうか?」
「うん。見るからに辛そうで、可哀想でしょ? このままほっといても、多分また悪戯しちゃうだろうから。楽にしてあげてくれる?」
 淡々と問う彼女に、返すヨシュアの声も実に軽やかで、当事者であるはずの俺だけが置いてけぼりをくらってしまったかのように、二人の会話が理解できない。
「かしこまりました」
 だから、床に座り込んでいる俺の前に彼女が短いスカートで危なげもなく跪くのを、ぼんやりと見ているしかできなかった。
「失礼します」
 必死に下肢を隠していた両手をどかされて、彼女の白魚のようなゆびがはしたなく濡れそぼる屹立に触れた瞬間、俺の身体はようやく抵抗という言葉を思い出した。
「い、あ……やだ、やだぁっ!」
「ああ、暴れないでください。危ないですから」
「やだ、ヨシュア、よしゅあぁっ」
 命令を下したのがヨシュア当人だということも忘れて、彼女の手を押しのけながら半狂乱で名前を叫ぶ。けれど見るからに女性的な細くて白い腕は、その華奢な見た目に反してぴくりとも動かなかった。
「やぁ、いや……っう、ぁっ?」
 彼女の手に暴れる腕を一纏めにして頭の上で床に押さえつけられたかと思うと、まるでその場に縫いとめられてしまったかのように肘から先が動かせない。抵抗する俺に困ったようにほんの少しだけ眉を下げている彼女の背中からは、黒い骨のような死神の羽がちらりと見えていた。
「手元が狂うと困るので、影を縛らせていただきました。ご了承を」
 とんでもないことを淡々と告げながら、再び彼女の手が俺の屹立に絡んで、痛いほどに根元を縛っていた腕時計が外される。こんな状況になっても未だに勢いを失わない自分の身体が信じられなくて、じわりと涙が込み上げてきた。
「ふあ、ぁ……こ、な……やだぁ……っやめ、ぇ」
「怖くないですから、大丈夫ですよ。私はあの方のように意地悪はいたしませんので」
「う、く……うぅ……ふ、えぇ……や、さわっちゃ、ぁ」
 彼女の言葉にくすくすと笑いを漏らすヨシュアの声が、どこか遠くに聞こえる。
 ヨシュア以外にこんな風に触られるのはもちろん初めてのことで、嫌なはずなのに、滑らかな指先が屹立を滑るたびに腰が跳ねてしまうのが止められない。細いゆびも、マニキュアで綺麗に整えられた爪もヨシュアの骨ばった男っぽい手とは全然違うのに、たまに意地悪くかりかりと先端をくすぐるやり方はヨシュアにそっくりだ。
「んんぅ……んく、んはぁ……っはふ、あうぅ」
「よかったね、ネク君。気持ちよさそうな声上げて……嬉しいんだ?」
「ち、が……ちが、ぁ……」
 ヨシュアじゃなきゃ嫌なんだって、涼しい顔で玉座に腰掛けているヨシュアにうったえたかったのに、こんなに濡れてだらしなくなってしまった声では何の説得力もない。
「あ、そうだ。ミツキ君、前僕にしてくれたみたいにしてあげてよ。あれ気持ちよかったから」
「かしこまりました」
 ぼうっとする頭で、この上何をされるのだろうかと恐る恐る目の前の彼女を窺うと、細いゆびは俺の性器を離れて自身のブラウスのボタンをぷちぷちと外していた。フリルのあしらわれたブラウスの合わせが開くと、豊かな白い谷間が露になる。見てはいけないと思い視線を外そうとしても、どうしても目が釘付けになってしまうのは、だって俺も男なんだから仕方ないじゃないか。
 ぱち、と下着のフロントホックを外してますます豊かに揺れる乳房を重そうに持ち上げると、こともあろうにその谷間でぴくぴくと揺れる屹立を挟み込んできた。
「ひっ、あ」
「あら、女性にされるのは初めてですか?」
「やぁ……なに、して……うゃ、あ、ぁっ」
 ヨシュアと同じ冷たい温度の指先とは対照的に温かい柔肉でゆるゆると扱きながら、乳房からはみ出した先端をぱくりと咥えられて、思わず大きな声を上げてしまう。彼女のハチミツ色の長い髪の毛がさらりと太腿をくすぐる感触が信じられなかった。暴れようと両腕をよじってみても、やっぱりびくともしない。
「やだぁぁ……! それ、やら……あ、あぁっ……」
 びく、びく、と腰を痙攣させても彼女はまったく構わない様子で、やわらかいくちびるでくびれのフチを食みながら、しつこく先端の割れ目を舐められた。その度に漏れでる先走りをじゅる、と吸われる音と、湧き上がる快感に眩暈がする。
「ふぇ、え……やだ、もぉ、うく……んくぅ……はな、し……っでちゃ、でちゃうぅ!」
「構いませんよ。お好きなときにどうぞ」
「やらぁ……はなせ、てばぁっ……はなしてぇ……! だめ、あ、ひゃあ、ぁ……!」
 必死でいやいやと首を振って見せても、温かい乳房に包まれながら先端をくじられる無体に耐え切れるはずがなくて、びくびくと腰を跳ねさせながら射精してしまった。俺が暴れたせいで咥え損ねたのか、受け止められなかったらしい精液がべたべたと彼女の顔と白い胸を汚している。
「ふ、ぁ……だから、め、ってぇ……う、く……うえ、ぇ」
 それでもいつもと変わらずに冷たい表情で、なんでもないように自身の眼鏡や口紅が落ちてしまったらしいくちびるを拭っている彼女を見ると、どうしたらいいのかわからない。彼女が表情を崩すことはあまりないけれど、表面上は分からないながらもいつも優しく接してくれていた彼女にされたことを思うと、ぼろぼろと溢れる涙が勝手にこぼれてしまうのが止められなかった。
「ミツキ君のおっぱい、気持ちよかったでしょ?」
「うぅ……しゅ、あ……おれ、こんな、の……や……」
 縋るような気持ちで見上げたヨシュアにまでそんなことを言われてしまっては、未だに解放されない手で流れる涙を拭うこともできないまま、ぐしゅぐしゅと泣きじゃくることしかできない。
「でもネク君は悪い子だから、ただ出すだけじゃ満足できないんだよね」
「え、っ……」
 すっと細められるスミレ色が楽しそうに笑うのを見て、例えようのない不安が頭をよぎる。けれど、今の俺の生殺与奪は全てヨシュアが握っているのだから、聞いてはいけないと分かっていてもできることなんて何もないのだけれど。
「ミツキ君の準備できてるかな?」
「……はい」
「そう。ふふ、よかったね。ネク君が可愛くてミツキ君勃っちゃったんだって」
「へ、う……」
「いかせてもらったお礼、しないとね……?」
 くすくすと無邪気に笑うヨシュアの言葉がよく理解できなくて、でもすぐに冷たい手でぐい、と脚を押し開かれる感覚に反射的に身体が強張る。いつの間にか下ろされた彼女の下着は肉付きのいい太腿を卑猥に彩っていて、白いフリルが縁取るスカートの下から覗くものがなんなのか、咄嗟には頭が上手く理解してくれない。
 本来女性にはないはずの、毒々しい色で脈打つ肉塊。ヨシュアのものよりも少し細身のそれは、どう見ても男性器にしか見えなかった。
「い……あ……」
「失礼します」
 俺が動けないのをいいことに、そのまま先端がヨシュアの精液が未だ溢れる後孔へ、ぺたりと押し付けられる。紛れもない生身のその感触に、びくん、と身体が跳ねた。
「や、だ……やだあぁ……! う、く、ぇ……なん、でぇ……っ」
「ああ、びっくりしちゃったかな? 珍しいよね。いわゆる両性具有ってやつ、らしいよ。ミツキ君の、可愛いでしょ?」
「よしゅあ、やだぁ……っゆるして、ゆるしてぇ……! だめ、そこはぁっ……」
 駄目なのに、そこはヨシュアだけなのに、いくら普段からよくしてもらっている彼女とはいえ、それだけは。
「おねがい、おねがぁい……よしゅ……あっ、あはぁ……!」
 けれど、俺がいくら泣き叫んで懇願しても、そんなのはこの部屋の中ではあまりに無力で、彼女の屹立は容赦なくずぶ、と俺の身体を貫いた。
「っ……!!」
「はぁ……っナカ、コンポーザーのでぐちゃぐちゃじゃないですか」
「あっ……あ……うそ、だぁ……こ、な……」
 そのまま容赦なく動き出されて、現実から逃げようとする俺の意識を無理矢理引き戻す。
「やだ、うごく、なぁ……! っはぁ、あふ……うごかな、で……」
 体内にヨシュア以外のものを受け入れているということを信じたくなくて、ぎゅっと目を瞑っていたのだけれど、彼女が動くたびに掻きだされるヨシュアの精液を、つう、と冷たいゆびが辿るのを感じて、恐る恐る目を開ける。
 普段とほとんど変わらない無表情で、でも彼女の薄氷色の瞳は俺ではない誰かを見ているようで、その視線はどこか愛しげだった。
 そんな彼女に何を言おうとしたのか自分でも分からないけれど、口を開きかけて、けれど再び突き上げられる衝撃と咥え込む熱にあっという間にそんなことも忘れてしまう。
「うあぁ、やめ……ふか、ぃ、はあ、あうぅ……」
 挿入されて初めて気が付いたけれど、両性具有とはいえどうやら睾丸は備わっていないらしく、いつもは尻に当たるはずの感触がないことがますます不安を煽った。とても確かめる勇気など俺にはないけれど、恐らくその場所には女性器があるから、なのかもしれない。
 彼女が動くたびにたっぷりとした乳房が俺の胸を滑って、はしたなく再び立ち上がった屹立を擦る腹の柔らかな感触もまぎれもなく女性のものなのに、今俺がされていることは何なのかなんてとても考えられなくて、ぐずぐずと頭の中が真っ白になってくる。
「ふぁ、あぁ……ごめ、なさ……ごめん、なさぁい……しゅあぁっ」
「よかったねネク君、また勃ってるよ。気持ちいいんだ?」
「でちゃう、おれ、ぇ……ま、また、いっちゃ……ひゃあぁ……!」
 わけも分からずにただヨシュアへの謝罪を口にしながら、どくん、と身体の何かが決壊したような錯覚に襲われて、そのままびゅくびゅくと俺の屹立は爆ぜてしまった。射精の快感に震えながら、けれど覚悟していたお腹のナカへの衝撃は訪れず、熱いままの性器がずるりと俺の後ろから抜けていったのが分かる。
「お疲れ様でした」
「う、あ……」
「可愛かったです」
 する、と女性らしい仕草で前髪を優しく撫でられて、どう反応を返していいのかわからないままただ呆然と彼女の顔を見上げていた。ちらりと見やった彼女の性器はやはりまだ勃起したままで、けれどその理由を聞けないまま、ヨシュアに手招きされたらしい彼女はブラウスの胸元を整えながら立ち上がる。
「これでよろしいでしょうか?」
「ああ、ちゃんと我慢したんだ。ミツキ君はいい子だね」
「桜庭様を楽に、とのご命令でしたので」
 いつのまにか自由になっていた腕でのろのろと起き上がると、それでもまだ力の入らない身体では立ち上がることも出来ずに、ぺたりと床に座り込んで二人の様子を見つめる。
「そう……じゃあいい子にできたミツキ君には、ご褒美あげないとね」
 でも、顔を上げてしまって後悔した。ヨシュアは書類を置いて彼女の柔らかな曲線を描く腰を優雅に抱き寄せると、未だ高ぶったままの屹立を何のためらいもなく口に含んだからだ。
「っ……こ、コンポーザー」
「いいよ、我慢しないで。出して?」
 ヨシュアがくちびるでゆっくり扱くように頭を動かすと、彼女は珍しく少しだけ頬を紅潮させて(それでもよく見ないと分からない程度に、だったけれど)ぎゅっと拳を握り締めて射精の衝撃に耐えているようだった。
 ごく、と音を立てて飲み込む動作をするヨシュアの喉仏はこんなときでも変わらずキレイだったけれど、ショックが大きすぎて今の俺にはそれどころではない。
「ミツキ君、ちゃんと我慢できてえらかったから、今度はネク君のナカで出させてあげるね」
「……」
「ああ、それともネク君にナカで出してもらう方がいいかな?」
「ご命令、でしたら……どちらでも」
 白い指先で楽しそうに口元を拭うヨシュアはそんなことを言っていたけれど、さっさと身なりを整える彼女は俺ではなくヨシュアにそうされたいんじゃないだろうかと何となく思った。きっとヨシュアには分からないだろうけど。
「はい、じゃあこの書類。よろしくね」
「かしこまりました。それでは、失礼致します」
 先ほどまでの出来事が嘘のようにいつもどおりの鉄仮面を纏った彼女は、そう言って軽く一礼するとコツコツとヒールを鳴らして審判の部屋を後にした。



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