※性描写を含みます。ご注意ください。 玉座に腰掛けるヨシュアを前に、こんなに緊張する日もそうそうないと思う。 「ヨシュア、これ……」 腕の中の紙袋を手渡すのは、この前以上に勇気が要った。 不思議そうに首をかしげるヨシュアを真っ直ぐに見られない。 「なあに?」 がさ、と受け取った紙袋の入り口を開いてヨシュアが中身に目をやる間は、緊張と不安で余計に目線がうろうろと泳いだ。 クリーニングのビニールも取ったし、タグも取ったし、ええと。 「これって……」 驚いた様子のヨシュアが、紙袋の中身を取り出す。ふわり、と舞うフリルがなんだかこの場には不似合いだ。 「この間の?」 「う、うん」 それはまさしく、この間俺が着せられたやけに手触りのいいメイド服である。ふわふわと膨らむ短い丈のスカートがヨシュアの膝の上でたわむ。 「そういえば最近見かけないから、どっかにやっちゃったのかと思ってたけど」 それは俺が知り合いの死神に頼んで、クリーニングに出してもらっていたからだ。 こんなことを頼むのは悪いと思ったものの、なぜかその死神はノリノリで新しい下着まで買ってきてくれた。謎である。 できれば下着のことは忘れていたかったので、余計なお世話といえば余計なお世話なのだけれど。 「あの、今日、バレンタインだろ」 「あ、そういえばそうだね」 さっき外に出たときにもらったというチョコレートをもぐもぐ食べていたくせに、そんな言い草はなんだか薄情ではないだろうか。俺は嬉しいけど。 「えっと、でも、チョコだとヨシュアはいっぱいもらうから、つまらないかなと思って」 「うん」 「でも、俺、この間上手く着られなかったし、そ、それに、次は着替えさせてくれるっていってたから、その」 なんて言っていいのか分からない。まさか一日ヨシュアのメイドにしてください、とは言えなかった。恥ずかしすぎる。 おどおどと言葉を探していると、ヨシュアが嬉しそうに笑った。 「今日はネク君が僕のメイドさんになってくれるんだ?」 言われてしまった。 「う……ん」 「それで、僕に着替えさせて欲しいの?」 「う、うん」 ヨシュアに言われるままに頷くと、含みのある笑いと視線にじろじろと舐め回される。 「へぇ……」 なんだかとんでもないことを言ってしまったのではないかと、今すぐこの場から逃げ出したいような気持ちになった。自分で言い出したことではあるけれど。 でも、クリスマスは日付が分からないという間抜けな理由で何もできなかったし、今日この日のことはちゃんと覚えておこうと小まめにヨシュアの携帯で確認していたのだ。 ちなみに自分の携帯はあの日置いてきてしまったから持っていない。たぶん、ここでは通じないだろうし、連絡を取るような相手もいないから必要のないものだ。 ふふ、と笑う声に耐えるように、反射的にぴくりと頭が動く。 「それも楽しそうだね。いいよ?」 落とされる優しい言葉に安堵して、差し出される手を取った。導かれるままにヨシュアに背中を預けて、後ろから抱っこされる形になる。 脱がせるのも着せるのも簡単なように、今日も俺が身に着けているのは下着とヨシュアのシャツ一枚だ。なんだかそんなところまで気を回している自分が恥ずかしいような気もしたのだけれど、今更かもしれない。 柔らかい色味の布地にビビットなピンストライプの入ったシャツはヨシュアによく似合うのだけれど、俺が着ているとどうにも頼りなく見えるなあと以前鏡を見て思ったのを思い出した。 そんなことを考えている間にさっさと下着だけ脱がせられて、やたら長い丈の靴下(オーバーニーというらしい)を穿きやすいようにヨシュアの手がくしゅくしゅと手繰っている。 「ネク君、足上げて」 「う、ん」 下着を穿いてない今そうするのはものすごく抵抗があったのだけれど、今更ヨシュアに見せられない部分なんて俺の身体にはないなと思い直し、素直に膝を立てる形で踵を玉座のふちに乗せた。 するすると器用な手つきで両足分穿かせると、今度はシャツの裾を捲り上げてガーターベルトを着けられる。この体勢だとやりづらいんじゃないかと思ったけれど、ヨシュアは何も言わなかった。今は顔が見えない方が俺は恥ずかしくないし、シャツを脱がせないのも、ヨシュアなりの優しさなのかもしれない。 「ん……」 そんなことを思うと勝手に嬉しくなって、太腿を撫でる手がくすぐったいのも我慢できた。 「あれ? 下着変わったね」 けれど、さすがに女性物の下着を手にしたヨシュアに、それを穿かせられる段になるとどうにもいたたまれなくてまた逃げ出したくなる。 隠す部分の布がやたら小さいのも、レースで可愛らしく飾られているのも以前とあまり変わらないけれど、俺の達ての希望で今回は紐はついていない。 「だ、だって、前のは」 「ぐしゃぐしゃにしちゃったもんね」 「う……い、言うなよ、バカっ」 くすくすと笑う声に熱くなる頬を持て余しながら、ヨシュアの手が下着を俺の脚に通していくのを見つめる。なんか、なんだろう、物凄く変な感じだ。 「前のはちょっと大人っぽかったけど、これはこれで可愛くて似合うね」 だから、そういうこと言うなってば! 下着のおさまりをよくするようにふちに入り込んだヨシュアのゆびが尻の線をすっと撫でて、思わずひくりと身体が震えるのが恥ずかしい。 「ん、んん……」 思わず頭をヨシュアの胸に擦り付けても、ヨシュアはそ知らぬふりでぷちぷちとシャツのボタンを外していくだけだ。 「はい、ばんざーい、ってして」 脱いだシャツの代わりにあのフリルの重たいワンピースに袖を通して、頭から被せられる。幼い子どもに聞かせるような言い回しは、若干引っかかるものがあるけれど。 服の合わせが逆になる女の子の服に、俺はボタンを留めるのに少しばかり苦労したのだけれど、ヨシュアの手は淀みなくボタンを留めていく。手馴れているみたいで、やっぱりちょっと悔しい。 仕上げにきゅ、と結んでくれた胸元のリボンも、俺にはこんなキレイなちょうちょ結びは作れないだろうと思う。 最後にエプロンを付け、ヘッドドレスを頭に乗せて両端のリボンを結んでから、ヨシュアの手は俺の髪を梳くように撫で付けた。 「これでおしまい。立ってみて」 俺の身体のあちこちに触れていたヨシュアの手がようやく離れたことに、ほっとしたような残念なような気分になりがら、ふらふらとヨシュアに向かい合うように立った。 「ど、どう……だ?」 どうだもくそもないだろう、と頭の中で叫ぶ声がしたけれど、聞かなかったことにする。 「うん。やっぱり可愛い」 ふわりと微笑んで言われた言葉に、嬉しさで耳まで熱くなった。可愛いなんてヨシュア以外の誰に言われたって屈辱以外の何物でもないけれど、ヨシュアの言葉はまるで魔法だ。言葉だけじゃなくて、その手で、瞳で、俺に魔法をかけるヨシュアはさながら魔法使いだと思う。 「メイドさんに首輪なんてなかなか倒錯的だね」 「とう……」 「せっかくのメイドさんなんだし、格好だけじゃなくてお給仕もしてもらおうかな」 「き、給仕?」 聞き慣れない言葉に慌てる俺に、頬杖をつきながらヨシュアが優しく囁く。 「そろそろお茶の時間だから、ミツキ君のところに行ってもらってきてくれる?」 「う……お茶……」 それは、あの彼女の前にこの格好を晒せということだろうか。不安があからさまに顔に出たのか、ヨシュアが苦笑する。 「ふふ、大丈夫だよ。カップ二つだけだから。こぼさないようにね」 そういう意味ではなかったのだけれど、今日の自分の運命を決めたのは自分なのだから仕方ない。まあ、運ぶだけならなんとかなるだろう。 いってらっしゃい、とひらひら手を振るヨシュアに何を言うことも出来ず、ちらりとヨシュアの方を振り返りながら審判の部屋を後にした。 こんこん、と扉を軽く二回ノックすると、どうぞ、と涼やかな声が返ってくる。 「し、失礼します」と言いながらここの扉を開けるたびに、何だか職員室に入るときやたら緊張していたことを思い出す。ついこの間まで普通にしていたことなのに、なんだか今では遠いことのようだ。 外に出るためにはこの部屋を通らざるをえないからもう何度も繰り返していることなのだけれど、さすがに今日この格好では気が引けてならない。 部屋の中に入って彼女を探すと、ヨシュアの言ったとおりお茶の準備をしているらしい彼女がキッチンに立っていた。以前あったバーカウンターや遊戯台は取り払われて、大きなキッチンになっている。部屋の持ち主が変わったからだ。当然ながらこの部屋はヨシュアや俺の通り道になっているので、彼女の寝室はまた別にある。 足元をわらわらとついて回る魚の群れにいつも通り足の裏をつつかれながら、どぎまぎと彼女の元に歩み寄る。先ほどから歩くたびに下着の中の窮屈な感触が気になるのだけれど、考えないようにした。 「あら」 俺の姿を目に入れた彼女が、珍しく驚いた表情になった。と言っても、よく見ないと分からない程度に目を見開いただけではあるが。 「可愛いメイドさん。何か御用ですか?」 言われた言葉に、思わずうなだれてしまいたくなる。彼女にまで可愛いなどと言われるとは。けれど、他の人物に言われたなら沸き起こるであろう不快感はなぜか湧いてこない。何となく、彼女にはヨシュアと同じものを感じるせいかもしれなかった。 「えっと、ヨシュアにお茶をもらってこいって言われて」 「そうですか。只今お作りしますから、少々お待ちいただけますか?」 「あ、ああ」 彼女の喋り方は丁寧すぎて、なんだかこちらまで緊張してしまう。それにしても、よくよく考えたらこのメイド服は彼女にとっては嫌なものなのではないかと今更気づいた。 慌てる俺を尻目に、それでも特に彼女の表情に変化はない。まるで気にしていない様子に、彼女にとっては思い出すに値しない事柄なのだろうかと思い至ってほっとした。 ふわ、と甘い匂いが鼻先をくすぐる。いつものお茶の匂いではなさそうだ。 「?」 不思議に思って手元を覗き込む俺に、彼女が淡々と解説をくれる。 「ホットチョコレートです」 「チョコ?」 「バレンタインですから」 バレンタイン。まさか彼女の口からその単語を聞くとは思わなかった。と言ったら失礼だろうか。 「甘いものはお嫌いですか?」 「え、いや、そんなことないけど」 「そうですか。あの方は、割とお好きなようですので」 なるほど。女性らしい細やかな気遣いに素直に感嘆した。直接渡すよりも仰々しくなく、自然で、彼女らしいなと思う。ヨシュアはもらえるものに気兼ねしたりしないけれど、こういう気遣いのできるところが彼女を気に入っている所以かもしれない。 悩みに悩んで今日の選択をしたのだけれど、やっぱりチョコレートも用意した方がよかっただろうか、という思いが頭をもたげる。 それが顔に出たのかは分からないけれど、次に彼女が口にした言葉はまるで俺の頭の中身を覗き込んだのではないかと思えるものだった。 「あの方の分は、貴方がお作りになりますか?」 「えっ」 「まだミルクを温めただけですから。私と同じことをしていただければ大丈夫です」 「で、でも」 「そのほうがあの方もお喜びになると思いますので」 多少躊躇いはしたものの、彼女のその言葉に背中を押されてありがたく申し出を受けることにする。 どちらが作ったのかちゃんと分かるように、カップも違うものを用意してくれた。しばらく彼女には頭が上がらないなと思う。 細かく刻んだチョコレートをカップに入れて、少量のミルクで溶かしながらくるくると練る。よく溶けたら、再びミルクを注いで、注ぎながら掻き混ぜる。 そつなくこなす彼女を真似しながら作ったのだけれど、うっかり手元が狂ってミルクがあらぬ場所に飛んでしまった。手鍋をひとつ使うのにもコツがいるらしい。 こぼれたミルクを拭き取りながら、多少失敗はしたものの中身はなかなか美味しそうに出来たんじゃないかと思う。まあバターやら生クリームやらが入っているらしいミルクを作ったのは彼女だし、俺は掻き混ぜただけと言えばその通りだから当然だ。 「お持ちしましょうか?」 「あ、ううん、俺が持って行かないとだから」 カップを二つ乗せたお盆を手にする俺を見つめる彼女の目は、なんとなく不安そうに見える。 「私も参ります」 「へ、でも」 「お渡しする書類もありますので」 そう言って引き出しから書類を取り出す彼女に、俺はそんなに頼りなく見えるのだろうかと少し情けなくなった。 「失礼致します」 「た、ただいま」 部屋に戻ると、並んで歩く俺たちを見てヨシュアの目が驚いたように丸くなった。 「あれ、ミツキ君もついて来てくれたの?」 「いえ。私は書類をお届けに」 彼女の言葉に、脚を組み変えるヨシュアの顔はいかにも仕事したくない、という表情になる。 「なんだ。今日中?」 「資料が揃っていないので、また明日お届けに参ります」 「ふーん。じゃあ目だけ通しておくね」 書類を受け取るヨシュアを横目に、中身をこぼさないようにそうっとカップをテーブルに乗せる。 空になったお盆は「お預かりします」とすかさず彼女が受け取ってくれた。 「なんか、こうして見ると」 楽しそうに目を細めたヨシュアの視線が、俺と彼女の間を行き来する。 「眼福だねぇ」 言われた言葉の意味が分からず、思わず彼女と顔を見合わせた。けれど、よくよく見るとシックなワンピースにフリルのあしらわれた彼女のいつも通りのその服装は、エプロンこそ着けていないもののなんとなくメイドに見えないこともない……かもしれない。 「お戯れも程々に。困っていらっしゃいますよ」 そんなヨシュアの言葉にも顔色ひとつ変えない彼女を俺は尊敬したいと思う。 「ふふ、僕はいつでも大真面目なんだけど」 「それでは、私はこれで失礼致します」 さらりとかわす彼女も彼女だけれど、それを歯牙にもかけないヨシュアもヨシュアだと思った。 「ミツキ君」 「はい」 「ありがとね」 ヨシュアの言葉に小さく一礼すると、彼女はいつも通りのヒールの音を響かせて退出する。 「……資料の足りない書類を持ってくるなんて」 意味ありげに笑うヨシュアに、思わず首をかしげた。 「?」 「よっぽどネク君のこと心配してくれたんだね」 「う……やっぱりそうなのか」 「ミツキ君、ネク君には結構優しいんだよ」 そうだろうか。彼女の気遣いは嬉しいけれど、そんな心配をされてしまう自分がなんとなく情けなかった。 彼女の退出した後にはふわふわと舞う湯気だけが残って、甘い香りに誘われるようにカップを手に取る。 「なんか甘い匂いがする」 五感の鋭いヨシュアも、いつもと違う香りに気がついたらしい。 「ホットチョコレートだって。はい」 ヨシュアにカップを差し出す瞬間は、何故だかドキドキしてしまった。毎年女の子はこんな気持ちでチョコレートを渡しているのかもしれない。 「ああ、そっか。ミツキ君らしいね」 「えっと、あの……ヨシュアの分は、俺もちょっとだけ手伝わせてもらって」 「そうなの?」 「あ、でも、ホントにちょっとだけなんだけどっ」 わたわたとみっともなく取り乱す俺の手を、カップごとヨシュアの手が包む。 「ふふ、ありがとう。じゃあ」 「ぅ、うん」 「飲ませてくれる?」 カップを持つほうとは反対の手が、するりと俺のくちびると撫でた。 「このクチで」 ぴく、とカップを持った手が震えてしまって、中身がこぼれないようにヨシュアが支えてくれる。 「う、あ」 「メイドさんだもんね?」 くすくすと笑う声に逆らうことも出来ず、おずおずと玉座に腰掛けるヨシュアの脚の間に膝をついた。 短いスカートで膝に乗る勇気は出せなくて、座板に片膝だけつく形で顔を寄せる。 湯気を立てるチョコレートにふーふーと息を吹きかけて冷ましてから、一口だけ口に含んでヨシュアのくちびるに口付けた。 「んっ……」 口内に広がる甘い香りを薄く開いたヨシュアの口に流し込む。こく、とヨシュアの喉が動く音がやけに耳について、変にドキドキしてしまった。 「ん、おいし」 ぺろ、と自身のくちびるを舐めるヨシュアの舌がなんとも卑猥に見えて、うろうろと視線が泳ぐ。豊かな香りも、こくのある甘さも美味しいと言って遜色のないもののはずなのに、どうしてかヨシュアのくちびるばかりに頭が行ってしまうのだ。 「う……ん」 「もっとちょうだい」 ちゅ、とねだるように触れ合わされるくちびるに、たまらない気持ちになる。一口、もう一口と含んではヨシュアのくちびるに注ぎ込んだ。 「んく……っんんぅ……」 カップが軽くなる度にヨシュアの舌が俺の口内を探る回数が増えて、僅かな香りも逃すまいとでも言うような触れ方に情けなく膝が震える。カップを持つ手もおぼつかなくて、ヨシュアが支えていてくれなかったら落としてしまっていたかもしれない。 「はぁ……は、ぁ……ふ」 「ごちそうさま」 くちゅ、と絡み合わせていた舌をほどいて漸くくちびるが解放されると、くた、とヨシュアの肩に頭を預けた。 上がった息の整えられない俺の手から空になったカップをヨシュアが攫って、こと、とテーブルに置く音がする。 「おいしかったね」 「ん……っん……」 耳元でヨシュアのくちびるに囁かれると、今にもくず折れてしまいそうな膝にもはや味なんて分からない。 「ネク君のも、早く飲まないと冷めちゃうよ?」 なのに、そんなことを言いながらヨシュアの手が俺の腰ごと抱き寄せた。抵抗できる力なんてどこにもなくて、あっけなくヨシュアの膝の上にまたがるように座り込む。ひら、とめくれるスカートだけは力の入らない手で慌てて直した。 「よ、しゅ……」 「ほら、口開けて」 俺の分のカップを手に取ると、繊細な細工の施されたふちにヨシュアが口をつける。顎をつかんだ手に無理矢理口をこじ開けられて、押し当てられたヨシュアのくちびるから甘いチョコレートを流し込まれた。 「ん、く……ふ、うゃ……」 「こぼさないで」 注がれるものを反射的にこくこくと飲み下したのだけれど、飲みきれなかった分が口端からこぼれて、ヨシュアの舌に拭われる。 息を整える間もなく再びヨシュアが口に含んだものを流し込まれて、顎を掴んだ手が離れてももう口を閉じることができなかった。 「ん、んんー……」 必死で嚥下するものの、ぼうっとする頭と閉じられない口ではどうしてもくちびるからこぼれてしまって、今度はヨシュアも拭ってくれないままに濡れた感触が首筋を伝う。 じわ、と首輪と襟元が濡れるのと同時に、スカートの中に入り込んだヨシュアの手がぐり、と下着の中で圧迫されるものを容赦なく押し上げた。 「ひゃ、あぅっ」 「こぼしたらダメって、言わなかった?」 そのままくに、くに、と下着の上から弄くられて、じりじりと追い詰めるような快感に焦燥感ばかりが湧き上がる。 「ふ、ぇ……ごめ、なさ」 「次はちゃんとできる?」 「ん、ぅん……うん……!」 「そ、いい子」 咎められるのが怖くて必死で頷いたのだけれど、飲み込まされる度にヨシュアの舌が口腔を探り、力の入らない身体では何度も何度もこぼして襟元が汚れた。その度に、言うとおりに出来ない俺への罰のようにヨシュアのゆびが下着の中の屹立をぐりぐりと苛める。 「や、らぁ……よしゅ……やぁっ」 「ふふ、もしかしてわざとやってるの?」 「ちが、ぁ……ちがう、うぅ……」 「本当かな?」 く、く、と爪が先端に食い込むたびに先走りが漏れて、ヨシュアが手を動かすだけでぐちゅぐちゅと簡単にはしたない音がした。 「ふ、えうぅ……っも、ゆるして、ぇ……」 「ダメだよ、まだ残ってるのに」 ヨシュアの手の中で、半分ほどになったホットチョコレートがカップの中で揺れる。それだけの量が今の俺には途方もないものに思えて、勝手に涙が溢れた。 それからカップの中身が空になるまで口内を蹂躙されて、下肢を嬲られて、を繰り返して、漸くヨシュアがカップをテーブルに置いてくれたときには襟から胸元までチョコレートでべたべたになってしまった。 最後の一口を飲み下してからは、下肢を弄られながら何度も何度も舌を絡められているうちに達してしまい、くちびるが離れてからもまともに声も出せない。 「は、ぅ……っはぁ……ぁ……」 「あーあ、こんなに汚しちゃって。またクリーニングだね」 べたべたになった首筋をヨシュアの舌が撫でて、ぴく、ぴく、と身体が痙攣する。座り込んだ下着一枚の薄い布越しに感じるヨシュアの硬い膝の感触に、勝手に腰が揺れた。 「よ、しゅ、ぅ……」 「なあに」 「も、ねが……」 みっともなく揺れる腰を恥ずかしげもなくヨシュアの膝に擦り付けると、くす、と優しく笑う吐息が首筋を舐める。 「ここがいい? ベッドがいい?」 「ベ、ッド……」 必死にヨシュアの耳元で囁くと、長い腕にそのまま抱き上げられた。 「えっちなメイドさんだね」 からかう声音で落とされた言葉に、そんな風にしたのはヨシュアなのにと言いたくても、もう口を開けなかった。 チョコアはやっぱりモリ○ガ↑、と呟きながらお楽しみください。 20090214 →次へ |