※性描写を含みます。ご注意ください。




 失礼します、とコツコツとヒールの音を響かせて、いきなり指揮者が入ってきたからびっくりした。
 この審判の部屋のノックはヨシュアにしか聞こえないし、あの彼女がノックを忘れるとはとても思えない。だから、彼女の入室はヨシュアが許可したからなんだろうけど、何もこんなときに入ってこなくてもいいのに。
 なにせ、俺は玉座に座ったヨシュアの膝の上で、彼の屹立を受け入れている真っ最中だったのだから。
 彼女に情事を見られたのはこれが初めてではないし、俺が意識を飛ばしている間のことを考えるとむしろ数え切れないほどだと思う。
 彼女は全く気にするそぶりを見せないし、ヨシュアも当たり前のようにしているから俺には何も言えないのだけれど、やっぱり何回していても慣れるものではない。
「ん……」
 ヨシュアを求める動きを止めて、揺れそうになる腰を必死で堪える。もう手遅れなのは分かっているけれど、さすがに彼女の目の前で盛る気にはなれずに息を潜めた。涙にまみれているだろう顔を隠すように、ヨシュアの胸に額を押し付ける。
「みんなに配ってくれた?」
「はい。残ったものは、こちらに置いておきます」
「そう、ありがとう」
 こと、と硬い音が聞こえて、きっと彼女が食器か何かを横の小ぶりな丸テーブルに乗せたのだろうと思う。
 なんだろう。まだお茶の時間ではなかったと思うけど。
「お申し付け通りに致しましたが……お一つでよろしいのですか?」
「うん。僕はネク君と一緒に食べるから」
 くちゅ、とヨシュアが身じろいだせいで場にそぐわない音が響いてしまって、耳を塞いでしまいたくなる。
「よしゅ、やだ……」
 はぁはぁと息を荒げながら、せめてもにぎゅっと目を瞑った。
「かしこまりました」
 それでも彼女は通り名どおりの凛と張り詰めた声を崩さず、一礼したらしい衣擦れの音と靴音を響かせて退室した。
 ようやく彼女の気配から解放されて、ほっと息を吐く。自然に力が入ってしまっていたらしい身体からも、くたりと力が抜けた。
「な、に……?」
 緊張がほぐれると、彼女の持ってきたらしいものが気になる。食べもの、みたいだけど。
「うん、あれ」
 ヨシュアが顎で指し示すのを追うように首を捻った。
「ケーキ?」
 視線の先には、やっぱりヨシュア愛用のいつもの丸テーブル。の上に、ちょこんと小さく切り分けられたショートケーキが乗っていた。可愛らしい華やかなクリームのデコレーションに、グラサージュでぴかぴかのイチゴが美味しそうだ。
 真ん中の辺りにプレートか何かが乗っていた形跡があるから、どうやらホールケーキを切り分けたものらしい。
「昨日、クリスマスだったでしょ?」
「え? あ、ああ」
 そうだったのか。日付の感覚がなくて気がつかなかった。
「駅前歩いてたら売れ残りの安売りしてたから、みんなに買ってきたんだよ」
 クリスマスも働きづめだったからね、と笑うヨシュアこそ一番働いていたに違いないと思うのだけれど。
 貴重な休暇のほとんどを俺と過ごしてくれるヨシュアに、ぎゅっと抱きつく。
「食べたい?」
 考えてみたらケーキなんて食べるのは久しぶりだし、甘いものは嫌いじゃない。生クリームの魅惑的な甘い香りにもそそられる。
 けれど、テーブルの上を見てもケーキの乗った皿が置かれているだけで、フォークやスプーンなどは用意されていない。手づかみで食べるんだろうか、とかヨシュアの前で? とか色々考えていたら返事が遅れてしまった。
「食べたい?」
 首をかしげたヨシュアに同じことを質問させてしまって、慌てて答えた。
「う、うんっ」
「そう、よかった」
 上機嫌に笑って、ヨシュアはテーブルの上のケーキを引き寄せる。
 それから優美な指先でケーキをデコレーションする生クリームを掬うと、俺の口元に差し出した。
「はい、あーん」
「へ、あ、う」
 ヨシュアの突然の行動に驚いたやら、生クリームに負けないくらい白くて艶やかな指先に見とれたやらで、変な声しか出せない。
「いただきます、は?」
 それでも促すヨシュアの声と、白い指先に誘われるようにおずおずとゆっくり口を開く。
「い、いただき、ます……」
 ぺろ、とゆびからこぼれそうな生クリームを舐め取ってから、残ってしまった跡にも吸い付いた。
 甘い匂いを味わうように咥えて、ゆびと爪の境目を舌先でつつくとヨシュアがくすぐったそうに笑う。
「美味しい?」
「ん……んぅ……おいひぃ、れす」
 それから何度もクリームを運んでくれる指先にちゅ、ちゅ、と吸い付くたびに甘い香りが口の中に広がって、本当に甘いのはヨシュアの指先なのではないかと錯覚してしまいそうだ。ちぎったスポンジをつまんで食べさせてくれるゆびにも、自分から口を開ける。
「は、ふ……んく」
「ふふ、くすぐったいよ」
 舌の上でやわらかく崩れるスポンジを嚥下しながら、ヨシュアのキレイなつるつるの爪を甘噛みした。もうケーキを味わっているのか、ヨシュアの指先を欲しがっているのか自分でもよくわからない。
 いつの間にかゆるく腰が揺れてしまっていて、くぷ、と繋がったところからする水音と、ヨシュアのゆびに唾液が絡まる音が部屋の中に響いてしまっていた。
 気がつくと、今俺が飲み下したケーキが最後のひと欠片だったらしい。凝った縁取りの高級そうな白い皿の上にはもう、イチゴが一つ乗っているだけだ。
「あっ……」
「どうしたの?」
「あの……えと、ヨシュアのぶん……」
「僕? 僕はネク君からもらうからいいんだよ」
「へ……」
 ヨシュアの不可解な言葉に首をかしげる暇もなく、ふわりと顎を掬われる。そのまま押し付けられるくちびると舌に、半開きの口をこじ開けられた。
「んっ……んんぅ……」
 ヨシュアのキスはけして強引ではなく、むしろやわらかく優しく感じるくらいなのに逆らえない。
 口内にわずかに残る甘い香りを余さず隅々まで舐め取るように探られて、ずるずると身体の力が抜けていく。
「ん、はぁ……はぅ……」
「ね? 一個で十分でしょ?」
「ぅ、よしゅ……ヨシュア……」
 ヨシュアの声音も、言葉の合間に注がれる唾液も甘くて、思考も何もかもがどろどろに溶けてしまいそうだ。
「なあに」
「お、おいし、ぃ?」
 ふふ、と笑う声が鼓膜を撫でて、頭の中まで優しく掻き回されている気分になる。
「うん、甘くて美味しいね」
 ぺろ、と口端を舐めて離れるヨシュアに追いすがろうとすると、そのくちびるとは違う冷たい何かが押し当てられた。
「はい、イチゴ」
「ふ……ぅ……?」
 く、と押し込まれて反射的に咥えては見たものの、咀嚼しようとしても上手く顎に力が入れられない。さく、とグラサージュとイチゴの表面を少し抉るだけの役立たずになってしまった歯に困惑していると、苦笑したヨシュアのくちびるに再びイチゴを奪われた。
「これなら食べられる?」
 さく、さく、と飲み込める程度に噛み砕かれたイチゴを、舌を伸ばしてヨシュアのくちびるから受け取る。
 甘酸っぱいはずのイチゴがヨシュアの手にかかるとただ甘いだけに感じられて、もっと、と奪うようにヨシュアの口内を探った。
「ほら、こぼしてるよ」
「ぅ、んく……んぅ」
 とろ、とくちびるの端から零れた果肉をヨシュアの舌に舐め取られて、再び口内に押し戻される。
 もうひと欠片ずつ飲み下すのに精一杯で、何度も何度もこぼしてしまうのをそのたびにヨシュアが掬い上げて、飲み込ませてくれた。
「もったいないでしょ?」
 ようやくすべての果肉と果汁を嚥下できたときには、もう上がった呼吸を整えることすらできなかった。ヨシュアの首に巻きつけていた腕さえずるずると滑って、そのシャツの裾を掴むのでやっとだ。
「はふ、はぁ……はぁ……ふ、ゅ」
 既にべたべたと白い粘液が俺とヨシュアの腹の間で糸を引いていて、いつ、何度達してしまったのかも分からない。
 変な呼吸を漏らす俺を宥めるように、ヨシュアの大きな手のひらが優しく背中を撫でてくれる。けれど、もうどこを触られてもじわじわと体中を快感が蝕んで、きゅう、と内部で締め付けてしまうものが苦しかった。びりびりと微弱な電流のように広がる快楽に、それでも力の入らない身体ではわずかばかり腰を揺らすように身じろぎするのが精一杯だ。
 俺の体内で何よりもその存在を主張しているくせに、それでもヨシュアはそ知らぬ顔で、また別のものに興味を惹かれたらしい。
「ああ、ロウソク立てるの忘れちゃったね」
 ケーキのいなくなった皿の影から、ヨシュアが繊細な動作でつまみ上げたのは細いらせん状のロウソクだった。
 ピンク色の可愛らしいそれは、わざわざ彼女が置いていってくれたものらしい。
「よ、しゅ」
「ほら、キレイだね」
 くるり、とヨシュアがそのゆびでロウソクを一回転させると、ぼ、と先端にちいさな火が灯った。
「あ……」
「ね?」
 ぼんやりと、どことなく薄暗い部屋の中でオレンジの光が頼りなく揺れる。
 その様も十分にキレイだったのだけれど、それよりなにより、ふんわりと暖かい色で照らされたヨシュアの前髪や睫毛に目を奪われて、ゆらゆらとスミレ色の瞳で揺れる炎に見惚れた。
 いつもは冷たい印象を与えるスミレ色が、そうすると不思議な優しい色合いに変わるのがキレイだ。
 どきどきとうるさい鼓動を持て余しながらその様子にぼうっと見入っていると、とろりと融けた蝋がヨシュアの指先に向かって伝うのが見える。
「ヨ、シュア、ろうが……」
「うん?」
 くい、とヨシュアがロウソクを傾けると、ゆびに触れる寸前で蝋が止まった。
 ほっと息をつく俺に、ちら、とヨシュアが意味深な視線をくれる。
「……?」
 首をかしげる俺ににっこりと微笑んだヨシュアは、そのままロウソクを大きく傾けた。
「っ……!!」
 滴った蝋が、立ち上がったままの俺の屹立にぽたりと落ちる。びくん、と大きく跳ねた身体をヨシュアの腕が強く支えた。
「あ、ッ……あぁ!」
 続けてぽたた、と垂らされて、文字通り焼けるような衝撃にぶるぶると首を振る。
「動いたら火傷しちゃうよ」
 そう言いながら、さらにロウソクを先端に近づけるヨシュアが信じられない。
「ひゃ、だ……よしゅっ……やだあぁ!」
「ほら、暴れたら危ないってば」
 ぱた、ぱた、とどんどん屹立に被せられる蝋の熱さにがちがちと歯の根が合わなくなって、暴れ出してしまいたいほどに怖かった。
 それでもヨシュアの言葉通り近づけられた炎が何よりも怖くて、身じろぎしてしまいそうなのを必死に堪える。蝋が垂れるたびに、ぎりぎりとヨシュアのシャツに爪を立てるので精一杯だ。
「ふっ、ひう、ぅ……よしゅあ、やらぁぁ……! あつ、あついぃ……」
「ああ、そんな顔しないで。大丈夫だから」
「ぅ、ひぐ……ら、って……あつ……いた、い、よぅ……」
 ぐずぐずと嗚咽を漏らし始めた俺の背中を、ヨシュアの手が再び撫でる。次いで、あやすようにゆっくりと揺り籠のような振動を与えられて、交互に訪れる熱と体内を擦られる快感に咽び泣いた。
「……っく、ぃう……やあ、ぁ……」
 それからみっちりと屹立の先端を蝋で固めてしまうまで、ヨシュアは無体を止めてくれなかった。先走りを漏らす隙間すら与えられず、もはや感じているのが痛みなのか、熱さなのか、快感なのかさえ分からない。
 泣き濡れてべたべたの頬を、ヨシュアの舌がべろりと舐める。
「ふふ、可愛い顔しちゃって」
「ふ、く……ヨシュ、も……ゆるして……ぇ」
 もつれる舌に上手く声を作れず、けほけほと咽ながら懇願しても、ヨシュアは優しく微笑んでいるだけだ。
「ここもピンク色になっちゃったね?」
「う、ぁう……さわ、ちゃ……だめ……」
 ぐ、ぐ、と蝋に覆われた屹立を押されると、尿道の中まで入り込んだ蝋が擦れて、ぴく、ぴく、と身体が痙攣する。もはや自身の上体さえ支えられず、ぐったりとヨシュアの胸に凭れる格好でされるがままに肩を震わせた。
「ああ、火消えちゃった。残念」
 不要になったらしいピンクのロウソクが、ぽい、と皿の上に落とされる。まだ蝋は残っていたようだけれど、ヨシュアが消したのか、自然に消えてしまったのかはわからない。
 そんなことを考えている暇もなく、ロウソクを離したヨシュアの手がぎゅ、と俺の屹立を強く掴んだからだ。
「ひっ……!!」
 そのまま握りこまれて、ぱき、ぱき、と屹立を覆っていた蝋が簡単に崩れる。ぽろぽろと剥がれ落ちるのを待たず、かり、とヨシュアの爪で張り付いた蝋を剥がされる感触に声すら出なかった。
 がくん、と身体が揺れて、びゅく、びゅく、と今まで吐き出せなかった精液が勢いよく飛び出る。
 待ち望んでいた射精のはずなのに、尿道の中で潰れて細かい欠片になった蝋が、射精するたびにナカを引っ掻く快感は想像を絶していた。
「あ……あ……」
 その上お腹の中のヨシュアを強く食い締めてしまって、早く終わって欲しいと思うのに、先走りすら塞き止められて溜め込んだ射精はなかなか止まってくれない。
 ようやく精液を吐き出し終えたころには、はぁ、はぁ、と漏れる呼吸が誰のものなのかさえわからないくらいだった。
 とろ、と体内から熱いものが漏れ出す感覚に、ヨシュアも達してくれていたらしいことにようやく気づく。
「気持ちよかった? でも、まだでしょ」
 残酷な声と共に強く突き上げられて、またゆるゆると立ち上がり始めた屹立に振動が伝わる。
 そのおかげで、ちくちくとまだ尿道を苛むものの存在を感じずにいられなかった。
「ほら、もっといっぱい出さないと。ずっと痛いままになっちゃうよ」
「ふ、ぁ……やだ……いやぁっ……」
「いや? どうして?」
「ぃ、や……も、いくの、こわいぃ……」
 先ほどのような快感を何度も繰り返されたら、本当にどうにかなってしまうかもしれない。
 恐怖に震える腕でなんとかヨシュアの背中にしがみついたのに、落とされる言葉は無慈悲だった。
「ウソ。ネク君、気持ちいいの大好きでしょ?」
「ひゅ、っぅ……うぅ……」
「僕もまだそんなに出してないし」
 容赦なく突き上げられる振動に、とろとろと唾液を垂らす口を閉じることさえままならない。
「大丈夫だよ」
 優雅なゆびが、ゆっくりと俺の首に巻きついた首輪を鳴らす。
「ネク君がちゃんと全部吐き出せるように、最後まで搾り出してあげるから」
 そう言って背中を撫でるゆびも、頬に触れるくちびるもどこまでも優しくて、あまりの切なさに涙が止まらなかった。



ホワイトクリスマ…いや何でもない。 20081225

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