「落し物を届けにきたよ」
 その言葉とヘッドフォンと共に、ヨシュアは俺の部屋に訪れた。


 あの日俺が落としたヘッドフォンをヨシュアは拾って、届けにきた。
 それは俺が仕組んだことでもあったけれど、あまりに時間が経ってしまって、諦め半分でもうヨシュアには会えないんだろうとなんとなく思っていた。
 会えて嬉しいやら、あれだけ待たせておいて、と悔しいやら、最後のゲームのことやら、突然のことだったからもう頭がぐちゃぐちゃで、そんな俺の頭をヨシュアは優しく撫でてくれた。
 それから紆余曲折を経て、どうしてか俺はヨシュアに定期的に会える権利を得る。
 そのことは俺にとっては喜ぶべきことで、尚且つあいつが望まなくては叶わないことだから、ヨシュアも俺に会いたがってくれているらしい……ということは、やっぱり俺を嬉しくさせた。
 ヨシュアが届けにきたヘッドフォンはすでに俺には不要なもので、結局ヨシュアの持ち物におさまることになる。
 なのに充電器を持ち帰るのが面倒だとのたまったあいつは、週末になると俺の部屋にヘッドフォンを充電しに訪れるようになった。
 それは単なる口実で、ヨシュアに会えるという約束を、あいつは俺にくれたのだ。
 日付が変わる少し前の時間、こんこん、と控えめなノックが聞こえる。都合が悪ければ、俺は声を出してヨシュアを待たせる。何もなければ、俺は無言で待つ。
 そうすると手品のように窓の施錠はカタン、と開けられて、ヨシュアが部屋に上がりこむ。時折ヨシュアの都合がつかず、待ちぼうけを食らうこともままあるから、何ものにも代えがたい、幸せな時間だ。
 あのヘッドフォンが、今は俺とヨシュアを繋いでいる。世界と俺を隔絶する手段だったそれが、今はそんな役目を果たしているなんて皮肉だと思いながらも、それはくすぐったくて、素直にとても嬉しい。
 この気持ちをくれたのがヨシュアだというのが、何よりも幸せなことだと思う。
 そんなヨシュアを、俺は今日も自分の部屋で待っている……はずだった。


 身体が、痛い。
 寝返りを打とうとして身じろぎすると、むき出しの腕にじゃり、というざらついた感触を覚える。
 じゃり? おかしいな、ここは俺の寝慣れた布団の上のはずだ。
 寝ぼけた頭でぼんやりと考えても、確かに自分の部屋のベッドに横たわったのが最後の記憶である。
 なのに、触れる感触は明らかにさらさらのシーツとふかふかの布団……ではない。ざりざりと不快な肌触りと、背中に当たる硬い感触。
 まるでコンクリートの地面に放り出されたような。
 そこまで考えて、はっと意識が覚醒する。目を開けても、辺りが暗すぎるようで何も見えない。ひゅう、と肌を撫でていく冷たい風は、外の空気だ。その風にざわざわと揺れる、木々の音。
 夜、だろうか。だが、いくら夜でもこんなに辺りが見えないのはおかしい。首を動かして周りを見回しても、充電中の携帯の光も、いつも俺の部屋で明滅しているデジタル時計の数字も見当たらない。
 やはりここは外だ。しかも、街灯が見当たらない、暗闇の中。
 予想外の事態に、がばっと勢いよく身を起こした。が、その途端ぐらぐらと眩暈が襲って、起こしただけの上体がふらついた。ずき、ずき、と頭が痛む。
 暗闇に周りの様子も分からず、自身の正体もおぼつかなくなりそうだ。そのまま再び硬い地面に倒れこむかと思ったそのとき、そっと回された何かが背中を支えた。
 誰かの腕? だろうか。
 ふらつく上体をしっかりと支えられて、揺るがないその感触はどこか覚えのあるもののような気がした。知らず知らずのうちに身を任せる。
 それでもぐらぐらとまだ眩暈を起こす頭はなかなか治らなくて、後から考えるとそんな非常事態に、無防備にも程があったと思う。
「大丈夫かい?」
 落とされた声は優しい響きを伴っていて、とてもよく聞き慣れたものだ。
 ようやく見つけた知っているものの気配に、ほっと溜息が漏れる。
「よ……」
 名前を呼ぼうとして、うまく声が出ないことに気がついた。寝起きだからだろうか。
 咳払いをしようとして、それすら思うようにできないほどに身体に力が入らない。思う通りにならない身体を不思議に思っていると、す、と辺りが明るくなった。月明かりだ。
 どうやら今まで雲に隠れていた月が、顔を出したらしい。明るくなった空に浮き上がる、俺に覆いかぶさるように枝を伸ばす木々の影がいくつも見える。
 そのまま俺を支える腕の持ち主を見上げれば、見慣れた顔がそこにあることを疑わなかったのだけれど。
「!」
 それは俺の予想していた人物ではなくて、驚きに身体が強張った。
 咄嗟に身を離そうとしても、身体がうまく動かない。
 不思議そうに首をかしげるその人の顔は、俺のよく知った顔に似ているようで、どこかが違う。
 俺が予想していた、というかそいつに違いないと疑いもしなかった人物は元々大人びた表情をするやつではあったけれど、これはそういう問題じゃない。
 大人びた、というか、大人そのものである。
 丸みを帯びて柔らかそうだった頬のラインはシャープになって、あどけなさの欠片もない。
 夜闇に溶けてしまいそうな暗色のスーツという装いも、初めて目にするものである。
 装いとは対照的に、浮き上がるように月明かりを反射する淡い髪の色と、スミレ色の双眸はそのままだ。でも、俺の知っている人物ではなかった。
 背中を預ける腕も、スーツの上から見て取れる体格も、記憶の中の細っこいものよりしっかりしている気がする。
 強いて言うなら、大きくなったヨシュア……とでも言うべきだろうか。
 俺の年頃では短期間で劇的に成長して、変化するやつもいるけれど、さすがに先週会ったばかりのやつがここまで変化するとは思わない。普通は。
 俺の脳みそは至って平凡で常識的な思考回路をしているので、これは別人だ、と思うのはごく当然のことと思う。
 それに、ヨシュアはUGの人間だ。あまり詳しくはないけれど、生きている人間のように成長することはなく、見た目も変わらないと聞いていた。
 だから、俺の成長に合わせて徐々に縮まる身長差に、嬉しいような、寂しいような気持ちすら抱いていたのだ。
 そのため、目の前の人物はヨシュアではない、と咄嗟に判断する。
「誰、だ……?」
 ようやく声を発することに成功すると、その言葉に彼が息を呑んだのが分かった。
 返らない答えと、沈黙。時折吹く風にその葉を揺らしてざわめく木々の声だけが響いて、その音色に不安になる。
 するとその動揺が伝わったのか、驚いた表情を隠して目の前の人物が悪戯に微笑む。その表情はひどく魅力的で、同性ながら一瞬どきりとさせられた。
 笑うと少し幼く、あどけなさが見え隠れして、俺のよく知っている人物の表情に少なからず近づいたようだ。
「誰だと思う?」
 質問に質問で返されると、問いかけたほうとしては非常に困る。
 その声音も、意地悪な切り返しも、やっぱり俺の知っているものと同じように思えた。
 記憶と一致する部分と、まるで違う部分を併せ持つ目の前の人物はひどくちぐはぐで、ぐらりと揺れる頭で考えては余計に混乱してしまう。
「ヨシュ、ア?」
 一度は人違いだったら困る、と思い別人と判断したものの、目の前の人物はやはり当初の予想通りヨシュア本人にしか思えなかった。
 背中に触れる腕の気安さ、口調から、お互い見知った人物であると考えるのが自然だ。
 それならこんな風に振舞う人物を、見た目ではなくまとう雰囲気や、こんな表情、仕草をする人物を俺は一人しか知らない。
「よかった。また記憶喪失にでもなったのかと思ったよ」
 肯定する言葉に、我知らずほっとした。
 その『また』にかかる記憶を奪ったのは紛れもなく目の前のこいつなのだけれど、そのことは棚上げらしい。
 おまえ以外に、誰が好き好んで俺の記憶を欲しがるというのか。
 それにしても、本人が肯定しているのだから疑うまでもないのだけれど、やはり今のこいつがヨシュアだというのはにわかには信じがたい。
「つか、なんで、急にでかく……なってる……?」
 不信感を隠さずにいぶかしげな視線をやると、ヨシュアはあくまで飄々と、あっさり言ってのけた。
「急にも何も、これが本来の僕の姿だよ。前に言わなかった?」
 初耳だ。
「そうだっけ。ふーん、まあいいや」
 全然よくない。仮にも関係を持っている相手のそんな重大な事実を知らされずにいたというのに、まあいいやで済ませるなんて言語道断にもほどがある。
 未だに思うようにならない身体でなければ、一発くらい殴っているところだ。
 本来の姿? なら、俺は今までお前の仮の姿しか知らなかったってことか?
「まあ、見た目なんてささいな結合規律の違いなんだから。僕にとっては能力を制限している、していないっていう認識の方が重要だよ」
 ヨシュアの言っていることはよく分からないが、大多数の人間にとって見た目というのはそこそこ重要な判断基準のひとつだと思うのだが。
 人間は見た目より中身、という言葉もあるけれど、現実的に考えて往々に判断基準とされるのは、やはり見た目からなのだ。
 まあ、ヨシュアと俺とではそもそもの価値観が、住んでいる次元から違うのだから、そのことで喚いてもしょうがないのかもしれない。
 ヨシュアという人物そのものを知ってしまえば、たしかに見た目なんて些細なことにも思えるのだけれど。
 それでも好きな相手について自分の知らないことがあれば、悔しく思うのは仕方がないと思うのだ。こいつについて俺は普段から知らないことだらけだと痛感させられているから、尚更。
 それにしても年齢からすでに違うなんて反則じゃないのか。道理で、何かというとこいつは俺のことを子ども扱いするはずだ。同い年なのに、とふてくされていた自分がなんだかばかばかしい。
「お、まえは……なんでいつも、そう……」
 普段どおり、滑らかによどみなく喋るこいつに反論しようと思うのに、なぜかうまく言葉が出てこない。
 舌が回らないというか、口を開くのもおっくうに思えてきた。
 そんな俺の異変に気づいたのか、ヨシュアが不思議そうに首をかしげる。
「ネク君? どこか、具合悪い?」
 疑問を投げかけると同時に混じる気遣わしげな声色が、けだるい身体を嬉しくさせた。
「わ、かんな……身体、だるく、て……あたま痛……」
 目覚めた当初は寝起き特有のだるさだと思っていたのだけれど、ここまで調子が戻らないのはおかしい。
 未だに支えを必要とする背中を、ヨシュアの腕が抱えなおす。
「なんだろう? んー、何か……あ」
 何かに気づいたようにヨシュアが声を上げると、す、と今までが嘘のように身体が楽になった。
「どう? 楽になった?」
 急に圧迫感のなくなった身体と、爽やかなこいつの笑顔に不信感が募る。
「ああ……今、何した?」
「少し僕の波動を制限したんだよ。ネク君と僕の波動の差が大きすぎて、ネク君にプレッシャーがかかっちゃってたんだね」
「波動?」
「んー、まあ、力の差、みたいなものかな」
 まだ多少息苦しさはあるものの、なんとか身体が動くようになった。
 コンポーザーであるこいつと、元参加者にしかすぎない俺とでは、まあ力の差は歴然だろう。
 それにしても、ただそこにいるだけで身体が動かなくなるなんて、普段飄々としているこいつの秘めたるものを見せつけられたようだ。
「俺といるときは、いつも抑えてるのか?」
 身体が動くようになってまでこいつの腕に支えられているのはなんだか気恥ずかしくて、逃れるようにもたれていた身を起こした。
「うん、いつもネク君と会うときは子どもの僕でしょ? あれが僕の波動の一番最低の状態」
 尚も手を貸そうと追ってくる腕を振り払うと、苦笑したヨシュアはすっと無駄のない動作で立ち上がる。
「立てる?」
「ああ」
 言葉と共に差し出される手を借りるのはやっぱり癪で、ふらつく頭を振って自力で立ちあがった。苦笑するヨシュアは、不要になったその手で自身の前髪を掻き上げる。
 その仕草はあまりにも様になりすぎていて、なんとも腹立たしい。なんだってこいつは、こんな何でもない動作の一つ一つを優雅に振舞ってみせるんだろう。
 身体にまとわりつく砂の感触を振り払うようにはたくと、当たり前のようにヨシュアの手が伸びる。
「背中汚れてるよ」
「……さんきゅ」
 優しく背中をはたく手は、やっぱりこちらを子ども扱いしているようで何となく釈然としない。
「低位同調、は説明したよね?」
 それでもなんでもないように話を再開するヨシュアに、俺もなんでもない風を装った。
「RGにいる俺がUGのおまえを視認できるように、実体化すること……だろ?」
「そう。ちゃんと覚えてたね、えらいえらい」
 こいつは幼稚園児でも相手にしてるつもりなのかと思える口調にむっとしながらも、からかわれるのは御免なので、反論しそうになるのをぐっと堪えた。
「UGはRGよりも高次元……高波動だから、同一空間であってもRGからUGのものは見えない。高波動っていうのは、低次元では 変換しきれない波動がたくさんあるってこと。だからRGに実体化するときは、その変換しきれない部分を簡略化して、RGの波動に合わせてるんだよ」
「死神の羽がなくなったり、とかか?」
 難しい単語を自分なりに噛み砕きながら辿り着いた結論に確認を取ると、ヨシュアはやけに嬉しそうな顔をする。
「やっぱりネク君は頭がいいね。話が早くて助かるよ。そう、死神は羽だけで済むんだけど、僕くらいになると外見年齢まで変わっちゃうみたいだね」
 そのくらいコンポーザーとRGには波動の差があるってことか。
「羽狛さんのレポート、読まなかった?」
「読んだ、けど」
 あのゲームの後、突然送られてきた大量のメモのことだろう。羽狛さんと通じてるこいつなら、あれが今俺の手元にあることを知っていてもおかしくない。
 ただ、あれを読んだ当初は小難しい単語が多すぎて、あまり理解のいかないまま机の引き出しの肥やしになっている。
 それでもあやふやな記憶と今目の当たりにしているヨシュアの変化から、少しずつ理解できてきた。
「若年化、ってやつ?」
「そ。羽狛さんくらいまで行っちゃうとまた羽が消えるだけで済むみたいだけどね。コンポーザーなんて、中途半端な中間管理職なのさ。変化する部分はわりと個人差があるみたいだけど、僕の場合は外見年齢。若返るってことさ」
 そう言って笑うヨシュアの顔はオトナの表情で、なんということはないのにやけにドキドキする。
 さらに、こうやって立ち上がった今、ヨシュアと俺の体格の差は歴然だ。
 そろそろヨシュアに追いつきそうだ、と思っていた身長はさらに頭一つ分は違く、見上げなくては視線がぶつからないし、細身ながらその体躯は大人の骨格をしている。
 RGにいたなら俺は子どものヨシュアしか視認できない、ということは。
「じゃあ、おまえがその格好ってことは」
「ここはUGってことになるね」
 しんと静まり返った辺りは、ここがどこかということすら判然とさせない。それでも立ち上がった今、目を凝らせば、木の影に隠れてしまっていたらしい電灯がぽつぽつと見える。
 遊歩道のようにコンクリートで舗装された道と、多くの木々が生える土がむき出しの植え込み部分。
 並木道、というには少々木々の生え方がばらばらで、何より敷地が段違いに広そうだ。公園、か何かだろうか。
「さあ、僕のプライベートに関するおしゃべりは一端おしまい。ここ、どこだと思う?」
 そう言われても、この暗さと何も特徴のない景色では判断がつかない。
 続きを促すようにヨシュアの顔を見上げると、いつも通りの不敵な笑みを湛えている。あまりこいつと目を合わせて喋っていると、首が痛くなりそうだ。
「僕の見たところ、代々木公園かなと思うんだけど」
「代々木公園……」
 渋谷駅から宇田川町を越えて区役所のさらに向こうにある、あのだだっ広い公園のことか。
「ネク君を一人にするわけには行かなかったから、まだ歩き回ってないんだけど……そうだとするとA地区のほうだね」
 ヨシュアによると代々木公園は井の頭通りをはさんで、噴水がある北側のA地区と、スポーツ施設やイベントホールなどがある南側のB地区とに分かれているらしい。
 俺の印象としては代々木公園といえば原宿の方が近いイメージなのだけれど、一応区としては原宿も渋谷区に分類されているはずだ。
 渋谷のコンポーザーであるこいつが言うのだから、まだ確証は得られていないながらも間違いないだろうと思う。
「とりあえず状況を確認しよう。僕はいつもどおりコンポーザーのお仕事をつつがなく終了させて、ネク君のところに行く途中だった。最後の記憶がそれ。気がついたら、ここにおねんねしてたってわけ。隣に倒れてるネク君と一緒にね」
 ネク君は? と向けられる視線に、曖昧になりかけている記憶を掘り起こす。
「俺、も……いつもみたいに部屋でおまえのこと待ってて……ノックが聞こえたけど、それっきりだ」
 こんこん、というあのノックが聞こえた気がしたのは夢だったのかどうか定かではないのだけれど。
「フム……多少タイムラグはあるようだけど、大体似たような状況だったんだね」
 ますます分からない。どうしてその俺とヨシュアがこんなところに?
 こんなときは動かずにいたほうがいいのか、いやでも、このままでいてもジリ貧な気もする。
「何かなくなってるものはない?」
「いや……」
 そもそも寝る準備をしていたのだから、身に着けていたものなんて寝巻きくらいだ。それでも言われて身の回りを正すと、よくよく見れば寝巻きではなく普段着を着ていて驚いた。きっちり靴も履いている。
 なくなっているというより増えていた。まあ、あえて言うなら寝巻きがなくなっているが、大した問題にも思えない。残暑とはいえ、夜は冷える。とりあえずは十分に夜風に耐えうる服装だったので、風邪は引かないで済みそうだ。多少の気色悪さは残るが。
「そう……僕は、ヘッドフォンがなくなってるみたいだよ」
「え?」
「この辺りには落ちてないみたいだね」
 ヨシュアも俺も、意識を失ったと思ったらここに倒れていた。
 何者かがここに連れてきたのだとして、その途中で落としたのだろうか。でも、コンポーザーであるこいつにそんなことができるやつなんているんだろうか。ますます増える疑問に混乱してくる。
 いつものクセで、手持ち無沙汰に自分の前髪をいじった。
 と、俺はそんなに難しい顔をしていたのか、眉間に寄せた皺をほぐすようにそっとヨシュアの指が額に触れる。あまりに不意打ちなヨシュアの温度に、どく、と鼓動が大きくなった。
「とりあえずここにいてもしょうがないね。危険は承知で、少し歩き回ってみよう」
 そう言って歩き出すヨシュアに、今の動揺を悟られなかったことにほっとして、後に続いた。



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