※性描写を含みます。ご注意ください。




「ふぅ、あっ……あうっ、うぅ、も、やだぁ……!」
 先ほどから吐き気を催すほどの不快感と泣きたくなるくらいの快感を同時に与えられ続けて、ぐずぐずと漏れてしまう嗚咽が止められない。
「よしゅ、うぅ……や、らぁ……もぉ、やらよぉ……ふ、うぐ、うえぇ」
「ふふ、そんなに泣かなくてもいいじゃない。僕、ちゃんとネク君に聞いたでしょ? いい? って」
 ヨシュアの言っていることは本当だ。ちゃんと事の前にヨシュアは俺に試してもいいかどうか聞いてきた。
 けれど、こんなことになるなんて思いもしなかったのだから仕方ないではないか。
 今日はいつも通りに起きて、いつも通りに玉座に腰掛けるヨシュアの元へ行くと、こう言われたのだ。
 新しい子を作ってみたんだけど、ネク君試してみてくれる? と。
 ヨシュアの言う新しい子、というのは新しいノイズの意だ。ヨシュアも死神なのでノイズを作れることは知っているし、度々ソウルを練って試作しているのを見たことはあるけれど、こんな風に完成品を俺に見せてくれるのは珍しい。
 ヨシュアの頼みごととあっては俺には断る理由などないし、ノイズを試すと言うから戦闘テストか何かだと思って特に何も考えずにうなずいてしまったのだ。いや、多分ヨシュアも最初はそのつもりで言ったのだと思うのだけれど。
 まさかその新作ノイズが俺に懐いてしまうだなんて、どうして考えられただろう。
 いや、これはそもそも懐かれていると言っていいのかどうか。
「うく、ふぅ、ぇ……って、だって、こん、こんなぁ……っ」
「でもほら、ネク君のココも気持ちよさそうだし」
 そう言ってヨシュアの繊細な指先につい、と張り詰めた屹立の先端をつつかれて、ひぐ、と喉から変な声が漏れてしまうのも全部、先ほどから俺の身体にまとわりついて離れない触手のような出で立ちのノイズのせいだ。
 玉座に腰掛けるヨシュアの膝に座っている今の体勢は、いつもなら俺を温かで幸せな気持ちにさせてくれるはずなのに、背もたれの後ろ辺りからずるずると影のように姿を現しているノイズのおかげで何もかもが台無しだった。
 出ておいで、とヨシュアがゆびを鳴らした瞬間に玉座の後ろから現れた影は、有無を言わせずあっという間に俺の身体を絡め取ってしまって、あられもない場所をぬめる触手が這い回る感触に簡単にぐずぐずにさせられてしまった。
 そのときにヨシュアがすぐこのノイズを止めてくれればよかったのに、わけのわからないノイズの行動が予想外で面白かったのか、こんなことで快楽を得てしまった俺への仕置きなのか、楽しげな笑いを漏らすヨシュアの手で膝に乗せられて、先ほどからずっと俺の身体はぬめぬめと不快感を催す触手に弄ばれている。
「あ、あぅっ……やぁ、はぁ、はぅ」
「ね、気持ちよさそう」
「やぁ、ちが……きもちく、なんかぁ……」
 ぎち、ときつく巻きつく触手に屹立を締めつけられるたび、とろとろと先走りを漏らす自分の身体が信じられない。
「そう? じゃあこっちも弄ってもらおっか?」
「ふ、えっ?」
 不吉なことを言いながらヨシュアは大きな手のひらでぐい、と俺の尻たぶを持ち上げて、まさか、と自分の想像に身体が強張る。
「う、あ、やだっ、やだぁ……! そこはだめぇっ!」
「ダメじゃないでしょ、ネク君はここも弄ってもらわないと満足できないんだもんね?」
「だめ、やだぁっ……よしゅあぁ……そこは、あ、はぁあ……!」
 従順な触手はヨシュアの思う通りに動いて、ぬるぬると押し開かれた尻の間を撫でていく。そうすると当然のように緩く開いた尻穴を見つけて、そのまま容赦なく入り込んできた。
「ふ、あぅ、あぁ……っやだ、やだあぁ……よしゅあぁ……ひ、うぐ……ふえ、ぇ」
 元々ぬめりを帯びた触手は何の抵抗もなくあっさりと俺の体内に侵入して、ぐぢぐぢと我が物顔で粘膜を蹂躙してくる。一本が入り込んでしまうと、後から少し細身の触手が二本、三本と我も我もと潜り込んできて、ひっきりなしに身体が跳ねた。
「だ、め……らめぇ、なのっ……あうっぅ……」
「何がだめなの? いいじゃない、別に僕以外にされるのだって初めてじゃないんだし」
「ち、がぁ……ふ、うぇ……そこ、はぁ……あぅ、おれ、よしゅ、だけ、ぇっ」
「うそつき」
 楽しそうな笑いを漏らしながらヨシュアがそんなことを言うものだから、前にヨシュア以外のものをそこに受け入れてしまったことを思い出して、今の自分の状況も相俟ってものすごく悲しい気分になった。
 俺がして欲しいと思うのは真実ヨシュアだけなのに、ヨシュアは俺のそんな気持ちまで簡単に弄んでしまえるのが悲しい。けれど、そんな風にされても俺は目の前の男を嫌いになることなどできないのだから、全部わかっていてしているヨシュアは本当にひどい男なのだ。
「や、ぅ……よしゅ、おれ、おれぇ……はふ、あうぅ、こわい、よぉ……っ」
 先ほどから俺の両腕はぎっちりとノイズの黒い触手に縛り上げられてしまっていて、目の前にヨシュアがいるのにしがみつくこともままならない。せめてもにその身体にもたれて胸元に頬を擦りつけてみるけれど、触手に体内を蹂躙される感触と得体の知れないものに犯されて快楽を得てしまっている自分の身体に、湧き上がる恐怖をどこへやればいいのかわからなかった。
 ただヨシュアがその長い腕で抱き締めてくれるだけで、俺は安心できるのに。
「こ、わい……こわいぃ、よっ……!」
 ふるふると頭を揺らしながら必死で目の前の体温に縋ってみても、ヨシュアは先ほどからやんわりと俺の頬や髪を撫でるだけで、わざと俺の不安を煽るかのように強く抱き締めてくれたりはしない。
「はぁ、はふ……うぅ、よしゅ、よしゅあ、ぎゅって、してっ……」
「うん?」
「お、おれ、ぎゅってして、ほしい、のっ……うく、うぅ……こわい、から、ぁ」
「そうなんだ」
「こわ、こわい、よぉ……おねがい、あうぅっ、よしゅあぁ……」
 いつもならきちんとお願いすれば俺の望むとおりにしてくれるのに、今日に限ってヨシュアは俺の懇願を聞いてもふんわりと微笑むだけで、何もしてくれない。
 そんなヨシュアの整った造作をぼやける視界で見上げながら、俺のことなどお構いなしで突き上げてくる触手のぬるついた感触に涙が止まらなくなる。
「ん、んくぅ……ふ、よしゅぅ、やあぁ……」
「ほら、そんなに泣かないの。ウサギさんになっちゃうよ」
 そうやって俺のことを泣かせているのは他ならぬヨシュアなのに、優雅な手つきで俺の頬を持ち上げると、戯れのような冗談を吐くくちびるでやんわりと口づけてくる。
 ちろちろと薄い皮膚を探る舌で口内をくすぐられて、くたりと力の抜けたくちびるは簡単に開いてしまうけれど、相変わらずヨシュアの手は俺の頬と肩にそれぞれ置かれているだけだ。
「ん、んぅ、んんっ……よしゅ、うぅ、やだ、きすじゃなく、て」
「キス、いや?」
「んくぅ、んんぅ……は、ちが……そ、じゃなくて、ん、ふぅ、んむぅっ……」
 ヨシュアから貰えるキスが嫌なわけなんてなくて、優しくついばむくちびるの感触のやわらかさは泣きたくなるくらい嬉しいのだけれど、わざと俺の懇願を遮るように口を塞ぐ行為は意地悪としか思えない。
「ふあ、あぅ、あぁ……あはぁ……っも、やあぁ……おれ、おれぇ」
「うん」
「で、ちゃ……でちゃ、あぅ……よぉっ……! う、ふえぇ……」
 尻穴をほじられながらくちくちと口腔の粘膜を舐られる気持ちよさとヨシュアのやわらかな吐息の感触に快感が高まってしまって、ヨシュア以外に弄られて達するのなんて嫌なのに、もうどうにも我慢できそうにない。
 すると俺のその言葉に反応したのか、先ほどからぎゅうぎゅうと俺の屹立を締め上げていた細い触手が突然亀頭の割れ目を強く擦り始めた。
「ひ、ッ……!」
 そのままつぷりと丸く膨れた先端が尿道口に埋まって、ずぶずぶと尿道に侵入されるのを信じられない思いで呆然と見つめる。
「い、あぁ……! なに、やだ、やだあぁ……! やめぇ、やだあ!」
「あらら、急に元気になったね。どうしたのかな」
「やあぁ、やだぁ、はぁ、あふ、やあ! よしゅ、よしゅあぁ……!」
 あまりに強い刺激にがくがくと身体が痙攣するのが怖くて、助けを求めるようにヨシュアを見上げてみても、当の本人は不思議そうに首をかしげて悪戯に俺の尿道口のフチをくりくりと撫でてくる。
 そんなことをされてはもう堪えることなどできなくて、衝動のままに射精してしまった。
「う、あぁぁっ……! は、ぁ……なに、これぇ……やぁ、あぁ……っ!」
 なのに触手がぬめぬめと俺の尿道を塞いでいるせいでいつものように思い切り精液を吐き出すことができなくて、けれど塞き止められているわけでもないらしい。
 じゅるる、と黒い触手から嫌な音がして、ごぷごぷと何かが触手の内部を通って行くように膨らんだ部分が背もたれの後ろの本体に吸い込まれて行く。
「あは、この子ネク君の精液飲んでるみたい」
 同じことを俺も想像していたものの、はっきりと口に出して欲しくはなかったことをヨシュアはあっけらかんとした顔で言う。
「やぁ、なんでっ、あ、あぅう、ひゃだぁ……!」
「そっか、生まれたばっかりだからソウルが欲しかったんだね。でも作り主を襲うことはできないから、無防備なネク君の方に行っちゃったんだ」
「うわあぁん、やだ、やぁ、あぁ……あっあ……っすっちゃ、あぅ、らめ、え」
「ふふ、生まれたての赤ちゃんみたいでかわいいじゃない」
 ヨシュアはのんびりとした口調でそう説明してくれるけれど、尿道から直接精液を吸いだされる快感の凄まじさにもうそれどころではなかった。
「ふふ、ほらもっとたくさん出してあげないと、いつまで経っても終わらないよ」
「ひ、ぐ、やああぁ、やだ、よしゅあ、それ、やだあぁ……! うわあぁっ……!」
 だというのに、ヨシュアは無邪気な表情で何の慈悲も情けもなく俺の睾丸をつまむと、滑らかな指先でぐりぐりと揉みこんでくる。
 あまりにも強烈な衝撃に内臓ごと吸いだされてしまうような錯覚すら覚えて、頭で恐怖を感じる前にがくがくと身体の震えが大きくなり、びく、びく、とひどく痙攣してしまうのが治まらない。
「ふ、うあ、あっ、あ……や、ふゅ……も、でなっ……でない、ってばぁ……」
 じゅうじゅうと何度もしつこく尿道を吸われて、吐き出せる精液が途切れたあたりで、ようやく屹立を侵していた管状の触手がずるずると引き抜かれた。俺の身体にまとわりついていた触手たちも目的は果たしたのか、あっさりと本体へと戻っていく。
「はぁ、はぁ……っあ……えあぁ……」
 信じられないような快楽を立て続けに味わわされて、あっけなく終わりを迎えても、もう呆然とヨシュアの身体にもたれかかることしかできなかった。
 ぐったりと胸元に頭を預ける俺の髪の毛を、ヨシュアの手がやわらかく撫でる。先ほどあんなに意地悪く俺のことを追い上げた指先だというのに、今はその感触が泣きたくなるくらい嬉しい。
「大丈夫かい?」
 かと思えば、この期に及んであまりにも場違いな言葉をあっさりと落とされて、思わず目を見開く。もう身体のどこにも力なんて入らないと思っていたのに、込み上げる嗚咽はどこかに引っかかることなく俺の喉から吐き出されて、こぼれ落ちた涙はもう止まらなかった。
「ふ、うぅ……う、ううぅ、うえぇ……ひ、ひぐ、うぐぅ……だい、じょぶ、とかっ」
「うん」
「そ、な、わけ、ないっ……だろ……っう、く、ふぅう」
 必死に気持ちを奮い立たせて顔を上げると、きっ、とヨシュアの作り物のように整った造作を睨みつける。俺の大好きな瞳の色で困ったように眉尻を下げられても、誤魔化されてなんかやらない。
「お、おれ、何回も、やだって言った……っ」
「うん」
「うぅ、こ、こわいから、ぎゅって、して欲しかったっのに、してくれなかった……!」
「うん」
「お、おれ、おれ……ちゃんと言った、のにっ……よしゅ、の、ばかぁ……」
 改めて自分で言葉にしているうちにどんどんと悲しい気持ちと切ない気持ちでいっぱいになってしまって、言葉尻がぐずぐずと涙声に変わってしまうのが情けなかった。先ほどからヨシュアが同じ返事しか寄越さないのも真面目に聞いてくれているのかどうかわからないし、震えるくちびると込み上げてくる嗚咽に攫われてしまって、もうまともに言葉を紡げずにただ鼻を鳴らして泣きじゃくることしかできない。
「うん、ごめんね?」
 そんな俺を見てやわらかく吐息を漏らしながら、如才ない仕草でさらりと俺の背中に長い腕を回して抱き締めたりするから、ヨシュアはずるいのだ。
「えっ……う……」
「ごめんね、ネク君。そんなに嫌だった?」
 穏やかな声音で囁きながら、長い腕を存分に使ってこんな風に力強く抱き締められたりしたら、先ほど叶えられなかった寂しさも相俟って何も言えなくなってしまう。
「あ……あぅ、っ……うぅ……」
「ねえ、いや?」
「う、ぐぅ……」
 ぽんぽん、と宥めるように背中を撫でられて、子どもをあやすようなキスを額に落とされて、それでもまだヨシュアに逆らえるような気丈さを生憎俺は一欠けらも持ち合わせていなかった。
 そうなるともう我慢なんてしているのも馬鹿馬鹿しくて、いい匂いのするヨシュアの胸元に鼻先を埋めて、ようやく自由になった手で思い切り目の前の身体にしがみつく。
「や、じゃない……」
「え?」
「いやになれないから、や、なんだよ……っばか、よしゅあぁ……!」
 ぎゅう、としがみついただけ強く抱き締め返してくれるヨシュアの腕は胸が苦しくなるくらい嬉しいし、吸い込む嗅ぎ慣れた匂いだけで今にもまた泣き出してしまいそうだ。
「う、く……ばかっ……よしゅあの……ばかぁ……」
「ふふ、うん」
「ふ……うゅ……す、き……すきぃ……っ」
 すりすりと頭を揺らして胸元に頬を擦りつけると、ため息が出るような優しさで髪を梳いてくれる指先に逆らえるやつなんてこの渋谷のどこを探したっていないと思う。少なくとも俺には一生かかっても無理だ。
「ネク君って」
 そうやって俺が情けない部分も恥ずかしい部分も全部曝け出して素直になってしまえば、ヨシュアはどこまでも甘やかしてくれるのを知っているから。
「ほんとにかわいい」
 俺はヨシュアなしで生きて行くことなどできないのだ。



「もう少し戦闘面での改良が必要そうだから、この子はしばらくここで飼ってあげようかなって」
「えっ、う」
「その方がネク君も嬉しいでしょ?」
「っ……」
「また遊んであげようね」
20110608


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