※性描写を含みます。ご注意ください。




 やってしまった。
 胸に抱いたまま既に皺になってしまっているワイシャツに恐る恐る目を向けると、予感していた通り裾の方の生地の端っこが粘ついた液体で汚れている。
 その液体は疑いようもなく、俺の精液……である。
 今ヨシュアはゲームの真っ只中で、かれこれもう何日も会っていない。それがヨシュアの仕事だし、もう何度も繰り返していることだからいつものことと言えばいつものことなのだけれど、ヨシュアの手で丹念に飼い馴らされた身体にはその何日かが途方もなく長かった。
 そんな俺が一人きりの部屋の中で我慢することなどできるわけもなく、たまたまベッドに投げ出されていたヨシュアのワイシャツを掻き抱いたまま、その、致してしまったのである。
 なるべく汚さないように細心の注意を払っていたのだけれど、身体の疼きに振り回されるがままの頭では細心の注意も何もあったものではない。見事に汚してしまった。
「よ、しゅあ……」
 それでも、粘液のこびりついた生地を見た当初は、こんなことヨシュアに知られてしまったらどうしよう、と思っていた。そのはずなのに、段々とヨシュアの衣服を自分の体液で汚している、ということに恍惚と興奮を覚え始めてしまった自分の身体を誤魔化すことができない。
「ん、くぅ……ふ、うぅ、しゅあ……よしゅあっ……」
 衝動のままにワイシャツを抱き締めて布地に鼻先を埋めると、何度も深く息を吸い込んだ。鼻腔に入り込むヨシュアの匂いで頭の芯まで痺れるのを感じながら、射精したばかりにも関わらず再び勃起してしまった性器をぎゅっと掴む。
 本当はこんな拙い自分のゆびではなくて、ヨシュアの長くてきれいなあのゆびで触って欲しいと願ってやまないのだけれど、残念ながらそれはこの街のゲームが終わるまで叶わない。そう思うとますます身体の疼きが強くなって、ワイシャツ一枚しか縋るもののないことが切なかった。
 結局その日はそのまま理性を取り戻すことができないまま、ヨシュアのシャツが涙と唾液と精液でぐしゃぐしゃになるまで行為にふけってしまった。


 それからヨシュアが帰ってくるまでの数日の間に、慌てて指揮者の彼女に頼んでクリーニングに出したワイシャツは、そうっとさりげなくクローゼットに戻しておいた(ヨシュアはゲーム中ほとんど帰ってこないけれど、彼女は大体渋谷川に待機していることが多い)。あれだけ汚したというのに新品のようになって帰ってきたワイシャツを見て、最近のクリーニングはすごいなと妙なことに感心してしまったのだが。
 今日、今まさにヨシュアが着ているそれが、件のワイシャツなのである。
「ネク君?」
「えっ」
 シーツに横たわる俺に覆いかぶさるようにして、ぎ、とベッドを鳴らすヨシュアを思わず見上げると、不思議そうに首をかしげるいつもの動作がなぜか俺をどきりとさせる。
「どうしたの、ぼーっとして。眠くなっちゃった?」
「う、ううん、そんなことないっ……し、したい、よ」
「そう? ならいいんだけど」
 俺の脚を抱え上げながら、ぺたりとゆるくなった後孔に強張りの先端を押しつけてくるヨシュアの熱に、思わず喉がひくついた。
 いつか来るだろうとは覚悟していたけれど、朝ヨシュアがこのワイシャツを選んで袖を通したときから、落ち着かない気持ちでそわそわしっぱなしだった。
 あれだけ俺が散々に汚してしまった服をヨシュアは何も知らずに着て、仕事をして、あまつさえ俺のことを押し倒しているのだ。そう思うだけで背徳感と興奮がとめどなく湧いてきて、胸がはち切れてしまいそうになる。
「ん、く……よしゅあ、は、はやくぅ……っおれ、おれぇ」
 一週間お預けを食らった上にその想像でますます劣情を煽られてしまって、まだ与えられることのないヨシュアの熱を欲してやわらかく髪の絡まる首に腕を回すと、はしたなく腰を揺らした。
「うん、でもその前に……ネク君、このあいだ」
「っ、う……?」
「僕の服使って一人でしてたでしょ?」
 想像もしていなかったヨシュアの言葉に、一瞬で頭の中が真っ白になる。
「へっ……」
「あんなにしちゃっててもちゃんと綺麗になるんだから、最近のクリーニングって大したものだよね」
 奇しくも俺が考えていたのと同じ言葉を口にするヨシュアに、知られていないはずと安心していたことが最初からばれていたことに気づいて、思わずしがみついていた腕を解いた。もはやなんと言えばいいのかすらわからない。
「なっ、なん、で……ヨシュアには内緒でって、言って、あ、ちが……し、してない、そんなのっ」
「ミツキ君はネク君との約束どおり、何も言ってないよ」
「えっ」
「ホント、彼女って君に甘いんだよね」
 まあ僕が言えたことじゃないか、とヨシュアは楽しげに笑っているけれど、完全に頭がパニックになってしまった俺はそれどころではなかった。
「サイコメトリーって知ってる?」
 ふんわりと微笑むヨシュアは常と変わらずやっぱりキレイで、こんなときだというのに見惚れてしまう。サイコメトリー、触れた物質から残留思念を読み取るサイキック。漫画になったりドラマになったりして超能力の中でも有名な部類に入るのではないだろうか。
 まあそんな知識はあってもなくても、今の状況はまったく変わってくれないのだけれど。
 ゲーム中使われるサイキックのバッジ類は全てヨシュアの采配で作成されているのだから、その全てのサイキックをヨシュアが使えないはずないのだ。
 時間を巻き戻して写真を撮れるカメラ機能など、まさにそれに近いものではないだろうか。
「あ、知ってるみたいだね。結構有名だからかな? 僕の場合は読み取れるときと読み取れないときがあるんだけど、今回はたまたま……ね?」
「あっ……う……」
「あは、そんな顔しないでよ。怒ってないから」
 そんなことを言われても、やわらかい雰囲気を崩さないヨシュアからは感情が読み取れなくて、それ以上にヨシュアに隠し事をしてしまった後ろめたさと、はしたない自分を知られてしまった羞恥で泣きたくなる。
「ごめ、ごめん、なさ……い」
「謝らなくてもいいけど……僕がいなくて寂しかったの?」
 するりと、それまで俺の脚を抱え上げていた手が下腹部をなぞって、ヨシュアとの間で情けなく震える屹立にきゅっと絡んだ。
「や、あっ」
「こんな風に自分で触ってたんだ?」
「よしゅ、うぅ……ふ、あふ……ぁ」
「それともこう?」
 ぐち、とヨシュアのゆびが強く先端をつまんで、刺激の強さに思わず腰ごと跳ねる。
「やあぁ、め、だめ、ぇっ」
「ふふ……ねえ、僕にも教えてよ。ほら、ちゃんと自分で握って」
「うぅ、あ、やっ……」
 今にも逃げ腰でシーツを掴んでいた手を取られて下肢に導かれると、そんなはしたないことをヨシュアの前でできるわけがないと頭では考えるのに、穏やかな声音に操られるように、気づけばしっかりと屹立を握って扱き始めていた。
 あまりの恥ずかしさにぎゅっと目を瞑ってしまったけれど、それでもヨシュアのスミレ色の瞳がそんな自分の痴態を見つめているのかと思うと、否応なしに身体が熱くなる。
「ふあ、ぁ……みちゃ、みちゃだめぇ……っ」
「ふぅん、このあいだもそんな風にしてたんだ」
「うー……ふ、ぅ、って、だって……よしゅ、いない、から、ぁ」
「うん」
「おれのこと、こんな風にしたの、ぁ、ヨシュアなのに……!」
 情けない言い訳を漏らしながら性器をいじる手は止められなくて、後から後から漏れ出る先走りで滑ってとても口には出せないような恥ずかしい音が部屋に響く。腰を揺らすたびに後ろに押し当てられたままのヨシュアの屹立がくちゅくちゅと入り口をくすぐるものだから、何度も痙攣する恥ずかしい身体を隠すことなんてできっこなかった。
「よしゅあの服、ぎゅってしてると、抱き締めてもらってるみたい、でっ」
「それで?」
「うく、ふゅ……はぁ、はふ、はうぅ……い、いい匂いする、からぁ……っ」
 言いながら我慢できずにヨシュアの胸に顔を埋めると、やっぱりどうしようもなく俺を興奮させるいい匂いがして、屹立を擦る手の動きがますますなりふりかまわないものになる。
「それ、で……それれぇ……っふあぁ、あふ……うぅ、はぁ、はう……」
「ふふ、何言ってるのかわからないよ。もう一回言って?」
「う、ゃあ……ふく、よしゅ……よひゅあぁっ……」
 もはやヨシュアの前で自慰をしているという羞恥と、求めているものが与えられないもどかしさと、拙い快楽のせいでとっくに呂律なんて回らなくなってしまっているのに、分かっていて問いかけてくるヨシュアは意地悪だ。
 その上悪戯に耳元へくちびるを寄せて耳たぶを食まれたり、舐められたりしては、まともな思考さえ簡単に飛んでしまう。
「あふ、うく、ぅ……もう、もぉらめ、らめぇっなの……! みみ、やめっ……でちゃ、でちゃうぅ……っ」
「いいよ、ネク君がいくところ見せて」
「やら、ぁ……みるな、てばぁ……あっ、は、あぁ……!」
 耳元で直接囁かれたやわらかい声音にぶるりと身体を震わせると、それから射精まではあっという間だった。
 びゅ、びゅ、と精液を吐き出す生々しい快感に身もだえしながら必死で呼吸を繰り返すと、まともにヨシュアの匂いを吸い込んでしまって、頭の芯を痺れさせるそれの行き場のなさにすりすりと胸元に頬を擦りつける。
 余りの刺激の強さに頭が真っ白になって、思わず自分の腕で自分の身体を掻き抱いた。
「う、くぅ……ふぅ……はぁ、はふ」
「上手に出せたね。いい子」
 そんなことを言って優しく俺の髪を梳く指先にもう我慢なんてできなくて、一度は離してしまった手をもう一度ヨシュアの首に巻きつかせて、ぎゅっと抱きつく。
「うぅ、もうやだ、ぁ……よしゅあっ……!」
「なあに」
 ぎゅうぎゅうと子どものように抱きつく俺をあくまであやすかのようにやわらかなヨシュアの声が憎らしくて、べそべそと漏れ出る嗚咽も隠さずに声を荒げる。
「ほしぃ、おれ、欲しいの……! はぁ、はぁ……あふ、うぅ……ヨシュアが、ほしいよぉ……」
 先ほどからヨシュアが動くたびに押し当てられたり、離れてしまったりで一向に与えられる気配のない屹立が恋しくて、早くその熱で貫いて欲しくて、べそべそと身も世もなく泣きじゃくった。
「そうなの?」
「ふ、うぇ……って、らって……おれ、ずっと待ってたのに……っ」
「うん」
「よしゅ、帰ってくるまで……ひ、ひとりで、待ってたのに……うぅ、ふえぇ……こんな……」
 ひ、ひ、とこみ上げてくるものが抑えきれずにしゃくり上げると、ヨシュアはようやく俺の身体を持ち上げるように抱き締めて、ぽん、ぽん、と背中を撫でてくれる。
「うん、ごめんね? 少し苛めすぎちゃったかな」
「んく……んん……よしゅあ……」
「今あげるから、そんな顔しないで」
 ちゅ、と俺の頬に羽のようなキスを落とすと、ヨシュアは先ほどのようにもう一度俺の脚を持ち上げて大きく開いた。恥ずかしい格好だなんて思っているような余裕はとっくになくなっていて、そのままゆっくりとヨシュアの熱に貫かれる感触に、喉のどこかから変な音が漏れる。
「う、あぁ……! あはぁ、あうぅ……よしゅあ、よしゅあぁ……っ」
「入っちゃったね」
「はふ、ぅ、はいってる……っはいってぅ、よぉ……」
 ぎちぎちと粘膜を圧迫する太さがたまらなくて、愛しくて、反動でぎゅうぎゅうと締め付けてしまうのを止められない。
「あはっ……ナカ、すごいよ?」
「だっ、てぇ……あふ、あく……うぅ、よしゅあのぉ……よしゅあのぉっ」
 ずっと飢えていたものが急速に満たされていく感覚に頭が追いつかなくて、ひゅうひゅうと変な音を立てて呼吸をすると、心配そうな顔をしたヨシュアが優しく背中をさすってくれた。
「おれ、ずっと欲しくて……うぅ、おっきくて……あつく、てぇ……」
「うん……」
「お、おれ、ふあぁ、おれぇ……!」
 けほけほと咳き込みながらわけの分からないままなおも口を開こうとすると、ヨシュアはもういいよ、とでも言うようにやわらかなくちびるで俺の口を塞いだ。そのまま優しく食まれると、簡単にヨシュアのくちびるに夢中になってしまって、声を上げるのも忘れてしまう。
「んく、んんぅ……ん、ぷはぁっ……はぁ、はふ……んくぅ……」
「ふふ……今からそんなに息上げてたら、この後持たないよ?」
「ひ、ぅっ」
 ゆっくりと揺りかごであやすように俺を突き上げながら、ヨシュアの器用なゆびがつつ、と俺の性器を撫で上げる。
「ら、めぇ……っやだ、いま、さわっちゃ……!」
「触っちゃ?」
「やだぁ、でちゃっ……またでちゃう、からぁ……! あぁ、はぅ、あうぅ……っ」
 俺ばかりがよくなってしまっているようで嫌なのに、ぶるぶると首を振って見せてもヨシュアは性器のきわを弄くる手をやめてくれない。
「いいよ、いっぱい出して……いくときのネク君かわいいから、いっぱい見せて」
「んんぅ、うぅ……や、ぁ、そんなぁ……うく、うぅ……」
「その分、僕にもちゃんと付き合ってね?」
 囁くヨシュアの声に頭の中まで犯されながら、かり、と先端を形のいい爪で引っ掻かれて、その途端に勢いよく射精してしまった。
「あぁっあ……! あ、あっ……」
「久しぶりなのは、何もネク君だけじゃないんだよ?」
 くすくすと笑いながらヨシュアが内部を突き上げる度に、押し出されるようなタイミングで何度も精液を吐き出してしまうのが恥ずかしくてたまらない。けれど、もうヨシュアにしがみついたまま与えられる快楽に身を任せるしかなくて、肩口に額を押しつけながら回した腕にぎゅっと力を込めた。


「ごめんね、いつも一人にして」
「えっ?」
 ごろごろと、シーツの上に横たわって聖母のような表情で俺を抱き締めてくれるヨシュアに懐いていると、唐突に落とされた言葉に思わず顔を上げる。
「僕がいないから、寂しくてしちゃったんでしょ? わざわざこんな風に変に隠さなくても、そんなの怒れないよ」
 眉尻を下げて申し訳なさそうな顔をするヨシュアに、確かに言われたとおり目の前の人物が恋しくて、寂しくてしてしまったことなのだけれど、それこそそんな顔をされてはこちらが困惑してしまう。
 困ったように笑うヨシュアを見ているとたまらない気持ちになって、ヨシュアがそんな表情をする必要はないのに、そうさせている自分が情けなくてふるふると首を振った。
「そんなの、だって、それがヨシュアの仕事だろ?」
「そう、だけど」
「たしかに、ヨシュアがいないと寂しくて、会えないとどうしていいのかわかんなくなる、けど……でも」
「うん?」
「でも、ヨシュアはちゃんと帰ってきてくれるから」
 じっとヨシュアの瞳を見つめながら言った言葉で、その綺麗なスミレ色がまあるく見開かれる美しさに思わず見惚れた。
「帰ってきてくれて、傍に置いてもらえるだけで……俺、うれしい、から」
 そう言った途端、見開いた瞳が徐々にやわらかく緩んで、そのうちにこの世のものではないほどの美貌でとろけるような微笑みを浮かべるヨシュアの表情にドキドキしてしまって、まっすぐに見ることができずにおずおずと目を伏せる。
「それに、この部屋でヨシュアのこと待ってるの、嫌いじゃない、し」
「そうなの?」
 今ここ、渋谷UGはヨシュアの世界であり、同じ次元で存在させてもらえているということだけでうれしい。そうでなくても、ヨシュアの匂いのするこの部屋で彼のスミレ色を想いながら帰りを待つというは、全然嫌ではないのだ。コンポーザーは常に狙われる立場にあるというのは重々承知の上だから、怪我をしていないだろうか、危険な目にあっていないだろうかというのはいつも心配なのだけれど。
「そっか」
「うん……」
「じゃあ、これからもネク君と一緒にいられるように、お仕事がんばるから」
 当たり前のように俺の身体を抱き締めて、頬に、額に、くちびるにキスをくれるヨシュアがうれしい。俺なんかが今この立場にいられること自体がまるで奇跡のようで、ヨシュアの優しい仕草一つでいつも泣きそうになる。
「いい子で待っててね」
 よく慣れた飼い犬をじゃらすような仕草で、愛しげに俺の首輪を弄んで小さく鳴らすヨシュアの指先に、思わずわん、と返事をしたい気持ちになりながら、大きくうなずいた。



以前おもらしチャットにお邪魔させていただいたときに出た話をヒントに書かせていただきました。
飼い主のお洋服をベッドに寝るわんことか可愛いですよね。 20101008


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