※性描写を含みます。ご注意ください。




「そういえばさ」
 ベッドの上でヨシュアに押し倒されながら、今まさに行為の始まりを告げる口づけを瞑目したまま今か今かと待っていた矢先に、くちびるの代わりに落とされた前置きがそれだった。突然のことに思わず瞼と顔を同時に上げる。
「な、なんだ?」
「この間、ネク君僕に優しくしてほしいって言ってたじゃない」
 言われて、記憶を掘り起こすのにしばしの時間を要した。この間、というのは少し前にヨシュアとしたいのしたくないのと駄々をこねたときのことで、そういえばそんなことも口走ったような、そうでもないような。
 でもなんで今その言葉が出てくるのか分からなくて、訝る表情も露に首をかしげる。
「……? う、ん……でも、なんで」
「ネク君がそうしてほしいなら、優しくしてあげたいなって思ったんだけど」
「へっ」
 恐れ多くもヨシュアの口から出たとは思えない突拍子もない言葉に、思わず目を丸くした。
「でも優しくってどういうことか具体的によくわからないんだよね」
 当のヨシュアは涼しい顔で飄々と、淡々と続けるけれど、ヨシュアらしからぬその言葉はまさに青天の霹靂で、頭が上手くついていってくれない。
「そ、う……なのか?」
「うん。だからね」
「う、うん」
「ネク君のしてほしいことだけしてあげようかなって」
 やんわりと、その滑らかな指先で俺の髪を梳きながら囁かれるヨシュアの言葉をうまく飲み込むことができない。
「してほしいこと、言って?」
「へ、う」
「どうしてほしい?」
 咄嗟に反応が返せずに右往左往する俺を見て、ヨシュアは困ったような、悲しそうな瞳でため息を吐いてみせるものだからますます慌ててしまう。
「ネク君は僕にしてほしいこと、ないの?」
 とどめにそんな風に言われてしまったら、もう俺はだんまりを貫き通すことなんかできっこない。口にした自分ですら辛うじて記憶の端っこに留まっていた程度で、掘り起こすのにも多少の時間を要する言葉を、ヨシュアはきちんと覚えていてくれたのだという。
 思いがけない言葉に驚くばかりだったけれど、もはやそんなことはどうでもよかった。だって俺はいつだってどこにいたって、ヨシュアのことが欲しくないときなんてないのだから。
「あ、う……じゃ、じゃあ……」
「うん」
「キス、して」
「うん」
 俺が要望を口にした途端それはもう嬉しそうに破顔したヨシュアは、こくりとちいさくうなずいてからゆっくりと、俺のくちびるに自身のそのやわらかな感触を押し付けた。
「ふ……あ……」
「ん、っ」
 少しかさついたくちびるが徐々に湿り気を帯びるのも、薄く開かれた隙間から漏れる吐息すらもまざまざと感じさせられてしまって、もうヨシュア以外とのキスでなんて満足できっこないと心底思う。
「んん……しゅ、あ……っくっつけるだけ、じゃ、やだっ……!」
 けれど、期待に胸高鳴らせて口を開いて待っていたというのに、まるで子どもをあやすようにただ触れるだけのキスしかしてくれないヨシュアに思わず抗議の声をあげる。
「そ? じゃあ、どうしたらいい……?」
 意地悪く問い返されて、でも閉じかけたまぶたを必死に持ち上げて見つめた先にあったヨシュアの瞳があまりに無垢で、どうしたって逆らえない。
「う、く……くち、あけて……舌だして……!」
「こう?」
「ん……んん……ふ、ぁ」
 差し出されるヨシュアの赤い舌を見たらもう待ちきれずに、噛み付くように口づけてからぬるつく舌に吸いついた。
 くちゅ、くちゅ、とはしたなく音を立ててあたたかな口腔を探っていると、ヨシュアも俺の挙動を追うように真似してやんわりと舌を絡めてくれる。それだけで俺はもうたまらない気持ちになってしまって、腕を伸ばしてヨシュアの頭を抱え込むと夢中で口内を貪った。
「はふ、あっ」
「んん……ふふ、そんな風にしなくても、逃げないってば」
「はぁ、はぁ……あふ、よしゅ……よしゅあ……!」
 息継ぎすら忘れてヨシュアの唾液を求める俺を危惧したのか、大きな手にぐっと後ろ髪を引っ張られてやんわりと引き剥がされてしまったけれど、一度疼きを覚えてしまった身体はもう止まってくれない。口端からだらしなく垂れる唾液も乱れて整わない呼吸もそのままで、目の前の男に身体を擦りつけるようにしてしがみついた。
「よ、しゅあ……」
「なあに」
 熱くなった身体を持て余しながらその整った造作を見上げても、ゆるりと首をかしげるだけでヨシュアは何もしてくれない。俺がしてほしいことだけする、イコール俺が何も言わなければヨシュアは動いてくれないということだ。
「ふく、脱がせ、て……」
「うん」
「ちゃんと触れ、よ」
 普段なら言うまでもないことまで口にしなければならないというのは想像以上に俺の羞恥を煽ったけれど、こんな状態のままで放っておかれる方が何倍も辛い。
「どこを?」
 なのにヨシュアは平気な顔で俺の隠したい恥ずかしい部分まで意地悪に暴きたてようとするから、余計に熱を持つ身体と頭でわけがわからなくなる。
「え……あ、う……胸、とか」
「ふぅん……こう?」
 俺の言葉に応えるように、するすると裾から服を捲り上げた大きな手が胸を撫でて、思わずぴくりと身体が震えた。
「や、う」
 けれどその指先はくすぐるように肌の上を滑ったり、肋骨を撫でたりしているだけで、肝心なところには触れてくれない。俺の身体で知らない性感帯なんかないはずのヨシュアがわざとやっているのだろうことは火を見るよりも明らかだったけれど、だからといって俺にはもう従順に欲望を口にする以外の選択肢は残されていなかった。
「ここ、ここさわって……っ」
 悪戯に動き回るヨシュアの手を捕まえて指先を胸の尖りに導くと、ヨシュアはやわらかな息を漏らして笑ったようだった。
「ちくび触ってほしいの? どんなふうに?」
「えっ……!」
 今の動作だけでも俺はなけなしの勇気を振り絞って必死で行動に移したというのに、そんなことまで聞かれるとは予想していなかった。思わず動揺してしどろもどろになってしまったけれど、今更止められるわけもない。
「う……つ、つまんで、ぎゅ、って、して」
 どう説明したものか考えるだけでも顔から火が出そうな思いをしたというのに、それを言葉にするのはもはや想像の範疇を超えていた。まさしく穴があったら入りたいと本気で思う。
「こう?」
「あっ……!」
 けれど、実際にヨシュアのゆびが赤く充血した乳首をつまんだ途端、くだらない羞恥心はあっという間にどこかへと飛んで消えてなくなってしまった。滑らかなゆびに何度もぎゅ、ぎゅと押しつぶされて、綺麗な爪で引っ掻かれているうちに、どんどんと身体も心もヨシュアに逆らえなくなっていく。
「これでいいの?」
「ふ、ぁう……うく、いい、いぃ、よぉっ」
 何度もうなずいてはくはくと乱れた呼吸をする俺に、ヨシュアは丁寧な手つきで愛撫を繰り返してくれた。けれどいつまでたっても俺が導いた方の乳首ばかりしつこく弄るものだから、何もしてもらえない反対側が次第に疼き出す。
「よしゅ、よしゅあ……っゆびだけじゃ、やだぁ」
 懇願しながら、先ほど自分が口づけていたヨシュアの濡れた舌の感触と温度を思い出して、きゅう、と胸が苦しくなる。舐めてほしいだなんて、そんないやらしいことを平気で考えている自分が信じられない。
「いや? じゃあどうしたらいいの?」
「うぅ、もうかたっぽも、なめて……噛んでもいいからっ」
 けれどヨシュアに快楽を覚えこまされた身体の欲求に逆らうことは到底不可能で、結局は涙声で欲望を口にしてしまっていた。まるで飼い主のお手の声を聞いた犬のように従順に顔を伏せたヨシュアは、味見でもしているみたいに何でもない顔でぺろりとずっと触れられないままで赤く膨れ上がった乳首を舐める。
「やぁ、く……あ、歯、あたって……ぇ、うぅ」
「もっと強くした方がいい?」
「ひ、ん……!」
 硬い爪の先とつるつるした歯で敏感になった性感帯を両方から責められて、何もしていないはずなのにもはや下着の中でぱんぱんに勃起してしまった性器が苦しかった。
「ふ……しゅあ、ねが……したも、下もさわっ、て」
 ひくひくと勝手に痙攣する下半身を持て余しながら、こんな言い方では到底ヨシュアを動かすには足らないだろうと分かってはいたのだけれど。あまりの焦燥感に思わず口を開いた俺に、やはりヨシュアは変わらず涼しい表情を崩さない。
「どこ?」
「ふ、うぅ……こ、こ……」
 俺の脇のシーツに置かれて遊んでいるヨシュアの手をひったくるようにとると、恥じらいなどかなぐり捨てて自分の下肢に押しつけた。それでも、手馴れた動作で下着を脱がせるヨシュアの詰問は容赦なく続く。
「どうやればいいの?」
「うう、いっぱい、しごいて……」
 もうこうなっては、従順にヨシュアの望むはしたない言葉を連ねるしかない。自ら脚を開いて、みっともなく露骨にねだっている自分をヨシュアのスミレ色の視線は余すところなく見ているのだと思うと、どうしようもなく身体が火照りを増した。
 くすくすと優しい声で笑いを漏らしながら、ヨシュアはその綺麗な手で濡れそぼった震える屹立を握ってくれる。
「うく、うぅ……はふ、あうぅ……! やぁ、あく……」
 ゆびの関節から爪のひとつひとつまで作り物めいた造作の白い手を自分の欲望で汚しているのかと思うと、それだけで頭がおかしくなりそうだ。剥けきっていない皮を使って竿を強く扱かれて、眩暈がするほど感じてしまう。と同時に、強い快感に慣れた身体はそれだけではもう満足できない。
「あ、あっ……先っぽも、いじって……」
「どうやって?」
「わ、われめのとこ、そう……つめ、たてて……っ……! おしっこの穴、くじってっ」
 言葉の通りに一つ一つの動作を確認するように手を動かしながら、先端の割れ目に埋められたヨシュアのゆびがついに尿道を強く穿って、自分からせがんだにも関わらずその余りの刺激の強さに腰が引けてしまった。
「ひぃ、いあぁ……! よしゅ、だめっ……それだめぇっ」
「ふふ、おかしな子。自分で言い出したのに」
 見るもの全てをその場で恋に落としてしまいそうなやわらかな微笑みを浮かべながら、思わず大きな声を上げてしまった俺に構わずヨシュアはそのまま埋め込んだ指先でぐりぐりと尿道口を責める。
「うあぁっ……! め、だめ、だめ、えぇ……!」
 びく、びく、とどこかの機能が壊れてしまったかのように震えと痙攣の止まらない自分の身体に初めて恐怖を感じた。けれど俺を責め立てている当の本人は慈悲の欠片を見せる素振りすらなく、あまつさえ反対の手で俺の弱い睾丸をやんわりと握りこんでくる。
「ひ、ぃっ……も、もう、だめだから……やめ、やめてぇ、よしゅあっ」
「そうかな? でもネク君気持ちよさそうで、もっともっとって顔してるよ?」
「やめ、やめれえぇ……! ほん、ほんとぉっ、に」
「ホントに?」
「もぉ、らめ、っから……! やめれぇ……やめ、くださぁ……よしゅあぁっ」
 ヨシュアのゆびがほんの少し動くだけでろくに閉じられないくちびるからは喋るたびに唾液がこぼれて、まともに呂律も回らなくなる。そんな風に快楽責めにされて、我慢なんて今更できるわけがない。
「だめ、えぇっ……! や、ああぁっ!」
 強く責め立てるヨシュアの手に促されるままに、屹立を震わせながらあっけなく射精してしまった。
「はぁ……はぁ……あふ、ぅ」
 あまりに強すぎる快感を立て続けに与えられたものだから、精液の放出が終わってからもしばらく動けず、頭が真っ白になった。
「上手にいっぱい出せたね。いい子」
 けれど、そう言って彫刻のように均整の取れた手を汚す精液をぺろぺろと舐め取るヨシュアの姿を見た途端に、正直な俺の身体は本当に自分が欲しい物をまだ与えられていないことを思い出して、ここぞとばかりに俺を急き立て始める。
 しばらく羞恥と欲望の間で葛藤を繰り返したものの、強く自分を追い立てる身体の疼きに耐えられずに、そうっと流れる先走りで汚れた後孔にゆびを挿しいれた。俺のその行動を見てヨシュアが不安そうな顔を見せたのが分かったけれど、もはや自制をきかせることなどできやしない。
 子どもの俺のゆびなどやすやすと飲み込んでしまった後孔を何度も捏ね回してしまって、その度にくちゅくちゅといやらしい音が空しく響く。
「ネク君、自分でするからもう僕なんていなくていい? いなくなった方がいい?」
 表情を曇らせたままのヨシュアから発せられる言葉があまりに真剣味を帯びていたものだから、冗談なのか本気なのか判別できない。
「あ、やぁ……っちが……ちが、くて……っ」
「うん?」
「おれ、おれぇ……はぁ、あふ、ぅ……も、ヨシュアが、ほし……」
 はくはくと乱れっぱなしの呼吸が邪魔をしてうまく喋れないのがもどかしかったけれど、沈んでいたヨシュアの表情が一瞬驚いたように瞳を見開いた後、嬉しそうに綻ぶのを見るとなんとか俺の言いたかったことは伝わったらしい。
「あは、そうなんだ」
「あ……ヨシュ、ア」
「なあに?」
 ふと、少し前のヨシュアの言葉が思い浮かんで、他愛もない要求を思いついてしまった。ヨシュアは俺がしてほしいことをしてくれるのだという。
「あの……服、ぬいでくれる、か?」
 ヨシュアはいつも日替わりで選んだスーツをきっちりと着込んでいて、行為の最中も必要最低限しか衣服を乱さない。休みの日なんかはラフに着崩した部屋着を身につけていることもあるけれど、ヨシュアが全裸になるのなんて入浴のときくらいで、そもそも俺はあまりの恐れ多さになかなかヨシュアの裸を直視することができないのだ。けれど、一度くらいはベッドの上で裸になってヨシュアと抱き合ってみたいと思っていたのも本当だ。せっかくのヨシュアの申し出だし、もしかしたら。
 そんな気持ちで今までしたことのない要求を口に出すのになけなしの勇気を振り絞ったのだけれど、当のヨシュアは不思議そうな顔をしながらもあっさりとうなずいた。
「うん、いいよ。全部脱げばいいの?」
「う、うんっ」
 あまりに容易に通ってしまった要求に、言い出したこちらの方が逆に焦ってしまう。俺は元々ヨシュアの持ち物であるワイシャツを身にまとっているだけでほとんど裸みたいなものだし(唯一の下着も先ほどヨシュアの手で剥ぎ取られてしまった)思わず息を飲んでするすると着衣を肌蹴ていくヨシュアを見守った。
「ん、く……んぅ」
 優雅な手つきでしゅるりとネクタイを解いてシャツのボタンを外していく様も、ベルトの金属音を鳴らしながらズボンを抜き取る仕草も全てがあまりにも色っぽくて、お預けをくらったかのように後ろに咥え込ませたゆびを動かしてぬちぬちと自分を慰めてしまうのを止めることができない。
「これでいい?」
 そうして生まれたままの姿になってこちらを見下ろすヨシュアを、やっぱり俺は真正面から見ることができなくて、ちらちらと忙しなく視線を動かしながらそれでもなんとかうなずいて見せる。
「う、んっ……あり、がと……よしゅあ……」
「どういたしまして。ねえ、でもほら、僕のまだ大きくなってないから、ネク君にあげられないんだよね。どうしよっか?」
 そんな風に言われたら、もうとっくにヨシュアを欲しがってひくつく尻穴を持て余している俺にはどうしようもこうしようもなかった。
 頭よりも先に身体が動いて、空いている方の手でくたりと下を向くヨシュアの性器を掴む。
「ネク君が大きくしてくれるの?」
「ん、んんぅ……は、ぅ……しゅ、あ……よしゅあ……!」
「そう、いい子だね」
 ぎゅ、ぎゅ、とヨシュアのものを握って扱いていると興奮のあまり力加減を間違えてヨシュアに痛い思いをさせてしまいそうで、そうならないよう一心に手指の先に神経を集中させた。性器の太さやら、熱やら、次第にとろとろと流れ出る先走りの感触をありありと感じてしまって、頭がどうにかなりそうだ。
 けれど俺がそうしている間、暇を持て余したらしいヨシュアの手が犬にするようにごろごろと頬のラインを撫でたり、優しく髪を梳いたりするものだから、一向に治まらない身体の熱と相俟ってどんどんわけがわからなくなる。
「よ、しゅあ……よしゅあ……はぁ、あぅ……あつ、い、よぅ」
 滑らかな指先から逃げるようにヨシュアの肩口に顔を押しつけると、うっすらと汗ばんだ肌やらふわふわと鼻先をくすぐる髪の毛やらからヨシュアの匂いを吸い込んでは余計に気持ちが高ぶってしまって、もうどうにも逃げ場がない。
 俺の手を先走りで濡らしながら十分に勃起した性器から手を離すと、ヨシュアに見せつけるように脚を大きく開いて、両手でそうっと後孔を押し拡げた。
「んんぅ……ヨシュアっ、おれ……も、がまんできな、ぃ」
「そうなの?」
「ここに、ここに欲しいの……ヨシュアのほしいのっ」
 拡げるために挿しいれたゆびで無意識のうちにぐちゅぐちゅと入り口付近を弄くっていると、ヨシュアは素直にその凶悪なまでの屹立を後孔に押し当ててくる。けれど、そのまま貫かれる予感に息を熱くした俺の期待を裏切って、ただ先端を押し当てたままの状態で何もしてくれない。
「そう、でも大丈夫? いきなり入れたら壊れちゃわない?」
 そんなことを言い出すヨシュアの詰問は今の状態の俺にはもはや拷問に近くて、あまりのもどかしさに開閉する粘膜を振り切って自分の尻から手を離すと、必死でヨシュアの身体に腕を回してしがみついた。
「いいの、いぃ、からぁ……っらいじょうぶ、からぁ……! あ、はや、はやく、うぅ……!」
「ああほら、またよだれ垂らして……本当に大丈夫?」
「ほんと、に、ほんとぉ、だからっ……お、おれ、おかしくなっちゃ、から、はやくいれてぇっ……! はく、あふぅ……っ」
 そうやって抱きつくと、普段は衣服に覆われているはずのヨシュアの腹にしょうこりもなく勃起した俺の性器が当たってしまって、何度も擦りつけるように腰が揺れてしまう。同時に俺の薄っぺらい胸とヨシュアの裸の胸がくっついて、その温度と感触でうるさいほどの心臓に内側から壊れてしまいそうだ。
「僕のおちんちん入れてあげないと、ネク君おかしくなっちゃうんだ?」
「んん、んくぅ……うん、うんっ……!」
「そうなんだ。じゃあしょうがないね」
 まるで他人事のようにあっけらかんとした口調でそう呟くと、ヨシュアは俺の額にやんわりと口づけを落としながら容赦なく俺の中に屹立を押し込んだ。
「ッ……!!」
 何の前触れもなくいきなり太い先端で粘膜を掻き分けられて、あまりのことに声も出せない。
 それでもずっとヨシュアを求め続けていた俺の粘膜は、取り込んだ熱を逃がすまいと体内の屹立に勝手に絡みつく。
「大丈夫? 苦しい?」
「うぅ、ううんっ……だい、じょぶ……だから……!」
 はぁはぁと不自然な呼吸を隠すこともできない俺を心配そうに見下ろしてから、ヨシュアはそんな俺に呼吸の仕方を教えるかのように優しく何度もキスをくれた。
「んく、んー……んむっ、よ、しゅあ……も、へーき、だからっ」
「うん」
「いっぱい、動いてぇ……!」
 喉に絡まる唾液と嗚咽でぐずぐずの声になってしまって、それでもなんとか懇願すると、ヨシュアはあやすようなペースで徐々に動き始めてくれた。尻に触れるヨシュアの腰やら太腿やらの感触が普段とは違って生身のそれだということが新鮮で、包み込むむき出しの腕にもドキドキしてしまってなんとも落ち着かない。
 その上時折緩急をつけながら的確に弱い粘膜を突き上げられると、もうどうしていいのかわからなくなる。
「よしゅあ、よしゅあっ……よしゅあぁ……!」
「なあに?」
「あふ、うくぅ……っきもち、きもちいぃ、きもちいいよぉ……っ」
「そうなの?」
「すきっ……よしゅあ……あ、ヨシュアは、きもちく、ない……のか……?」
「ううん、すごいきもちいい」
 ふるふると首を振りながら無垢な表情で平然とそんなことを言うヨシュアに、胸が苦しくて、嬉しくて、泣きたいようなたまらない気持ちになった。
「だってほら、ネク君のここ一生懸命僕のこと受け入れてくれて、狭くて、あったかくて」
「あ、ぅ」
「わかるでしょ?」
 ヨシュアは自身の首にぎゅうぎゅうとしがみついていた俺の手を片方だけ外させると、ちょうど中指と人差し指でヨシュアの屹立を挟むようなかたちにして、後孔のふちへと導いた。
 そうするとヨシュアの屹立が出たり入ったりする感触やら、ぬるぬるとそれを食い締める自分のはしたなさやらが触覚としてダイレクトに伝わってきて、嬉しいのか、恥ずかしいのか、もうやめてほしいのか、もっとしてほしいのかすら自分でもわからない。
「ネク君、僕もう出ちゃいそうなんだけど、どうしたらいい? 外に出す?」
 俺がわけも分からず快楽に喘いでいる間に、普段はもう少しペースの遅いヨシュアの限界が早まったらしいのが嬉しくて、でも付け足すように言われた一言はぜんぜんうれしくなかった。
「やだ、なかにだして……なかで、びゅくびゅくしてぇ……!」
「そう? でもお腹壊しちゃうかもしれないから、外に出したほうがいいんじゃない?」
 優しくするって言ったくせに、どうにも今日のヨシュアは普段よりも意地悪なようにすら思える。もっと自分勝手に、横柄に、支配者の顔で振舞ってくれていいのに。
「だめぇ……なかでだしてっ……! よしゅあのせーえき、いっぱい飲ませてぇっ……おねがい、よしゅあ、おねがい!」
「そうなの?」
「ん、んぅ……そうっ……そう、なのぉ……!」
「じゃあ今、あげる、ね……っ」
 けれどきちんとお願いすればヨシュアはちゃんと素直にうなずいてくれて、穏やかな声音を崩して言葉尻を跳ねさせるヨシュアにぎゅっと強く抱きついた。
 一呼吸置いてどく、どく、とあたたかな愛しい液体が体内に注がれる感触に、歓喜で震えるとはまさにこのことかと身をもって実感する。
「ん、く……」
「はぁ、いっぱい出ちゃった」
 ヨシュアのその無邪気な言葉に、じんわりと広がる幸福感を噛み締めながら思わず口元が綻んだ。
「よしゅ、あの……あったかい……」
「ふふ、ほらネク君のも。たくさん出したからお腹ぬるぬるだね」
 やわらかい吐息と笑いを漏らしながら、ヨシュアは骨ばった手のひらを俺のお腹に行き来させて、その優しい仕草に愛しさばかりが募るものだから胸が苦しい。
「優しくするの、どうだった? 満足した?」
 ちゅ、ちゅ、とヨシュアの羽のようなキスを額に受けながらふと問われた言葉に、そういえばそもそものコトの発端は自分の発言からだったというのを思い出した。思い出して、果たして実際どうだったかと考える。
「んん……と、ヨシュアが……俺のこと考えてくれたの、すごい嬉しくて」
「うん」
 俺がそうしてほしいと言ったから、俺に優しく、なんて、オモチャ同然にしか扱われていなかった頃に比べたら(俺自身それを喜んで受け入れていたし全然よかったのだけれど)人間的な感情としては大進歩だ。
 でも、必死に考えをまとめながら口を開いて、言おうとしている言葉があまりに自分にはおこがましい気がしたのだけれど、ヨシュアに対してはいつでも誠実でいたかったので、ありのままの言葉を伝えることにした。
「嬉しかったけど、でも……やっぱりヨシュアがしたいって思ってくれたこと、してくれた方が、もっと嬉しい……かも、って」
 せっかくヨシュアがしてくれたのに、と思うと後ろめたさからつい沈みがちの声になってしまったけれど、それを慰めるようにヨシュアは優しく俺の頭を撫でてくれた。
「そっか、じゃあ今度はいつもどおりにするね」
「う、ん……ヨシュアの、したい風に……してほしい」
 こくりとうなずいてから、大きな手のひらに引き寄せられるままにヨシュアの胸元へと頭を預ける。
 でも、何でも俺の言うとおり従順に(時折聞く耳を持ってくれない場面もあるにはあったけれど)あらゆる行動の決定権を俺に委ねてくれていたヨシュアは、なんだか普段のお互いの立場が逆転してしまったようで、倒錯的な気持ちよさがなかったとは言い切れない。いや、正直、あれを続けられたらどつぼにはまってしまいそうでまずいかもしれない。
 呼べば必ず返事をくれることも、優しくて意地悪な愛撫も、くたくたになった身体を包む俺に言いなりの裸の体温も、全部嬉しいことばかりで、逆にそうじゃないことを探す方が難しい。
「け、けどっ」
「うん?」
 慌てて口を開く俺の考えてることなんて、ヨシュアは全部お見通しなのだろうと思わなくもなかったけれど。
「たまに、なら……またしても、いい……かな」
 もごもごと語尾を濁す俺にヨシュアはふんわりと極上の笑みを浮かべながら、それでもごく短い囁きだけを俺にくれた。
「そう」
 その微笑みと穏やかな声音は俺にとって千の言葉にも勝るほど雄弁にヨシュアの気持ちを教えてくれていたから、心配することなんて何もないのだ。



ノープロブレムヨシュネクさん。 20100729

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