※性描写を含みます。ご注意ください。




 今日も無事仕事が終わって、明日からの休暇に胸躍らせながらいつものようにベッドの上でヨシュアに身を任せていたときのことだ。
 長い腕に抱かれて温かな胸に顔を寄せながら、体内にヨシュアのものを咥え込んだ俺はこの上ない幸福に満たされていたと言うのに、なんだかヨシュアの様子が変だった。
「う……っよしゅ、あ?」
「……うん?」
「ど、した……?」
 いつもなら、最中であってもよほど切羽詰ったときでなければ常時柔らかく湛えられているはずの笑みが、今のヨシュアには見えないことがやけに気になる。
 というか、どちらかというとどこか焦ってでもいるような、そんなようにも見えた。ヨシュアのポーカーフェイスに守られて、嗅ぎ取れた片鱗はほんの少しだったけれど。
「何、が?」
「ん……なんか、よしゅ、あ……いつもとちが、から……」
 俺の言うことにヨシュアは返す言葉が見つからなかったようだけれど、少しだけ驚いたように青白いまぶたがぴくりと動いたことで、それが俺の思い違いではないことがわかる。
 先ほどから俺の体内をねぶる屹立も今はどことなく勢いがなくて、つい今まで硬く張り詰めていたはずなのにということに気がつくと、どくどくと早まる心音と共にどうしようもなく不安な気持ちでいっぱいになった。
「ぅ……お、おれ、きもちよくない……? なんか、や、だった?」
「ううん、そんなことないよ」
「今日、したくなかった? お、おれが、無理矢理した、から……」
 部屋に戻ってきて早々ヨシュアに抱きついて、というかほぼのしかかって、と言ったほうが正しいような体勢で俺が誘ったから付き合ってくれただけで、ヨシュアは本当は乗り気ではなかったのだろうか。
 俺からけしかけるのはいつものことだから気にしていなかったけれど、普段なら嫌な顔一つせず俺の望みどおりにしてくれるヨシュアが、そういえば今日は最初少しだけ渋る様子を見せていたのが今更ながらに気になってきた。無理矢理ヨシュアの下肢を暴いて強引に押し切ってしまったけれど、そう思うと急に怖くなって、すうと背筋が冷えていくのを感じる。
「そんなことないってば、ネク君としたくないときなんてないよ。そうじゃ……なくて」
 困ったような表情で途端に目を伏せるヨシュアに、どうしていいのかわからなくてその穏やかな声が再び紡がれるのを待ちながら首をかしげた。最初のキスで歯が当たってしまったからだろうか。それとも、俺の口淫が気に食わなかったのだろうか。俺の腹の中の具合が悪かったのか。
 不安な気持ちのままでぐるぐると考えてみたものの、野生の動物のような仕草で少しだけ身じろいでその首筋に纏う首輪をちいさく鳴らしたヨシュアの口から出た言葉は、それのどれでもなかった。
「トイレ……行ってきてもいいかな」
「……へ?」
「おしっこ、したくなっちゃって」
 ヨシュアの口から出たとは思えない拙い言葉に、思わずぽかんとして間抜けな声を上げてしまう。でも特にヨシュアに恥ずかしがっているような様子は見られなくて、ただ本当に困っている、という表情で眉を下げていた。
「ホントはネク君が戻ってくるまでに済ませておこうと思ってたんだけど、思ってたより戻るの早かったから……タイミング逃しちゃったんだよね」
 ヨシュアはまるで俺を責めるそぶりを見せないけれど、そのタイミングを逃した、というのは紛れもなく俺が見境なく盛ったせいだし、渋るヨシュアを気にも留めなかったのも俺だ。
 ヨシュアにそんなことを口にさせてしまっているということの罪悪感にざわざわと胸がざわめく。
「あ、う……ご、ごめ」
「ううん、ネク君が謝ることじゃなくて。してる間くらいは我慢できるかと思ったんだけど……ごめんね?」
 それこそヨシュアが謝ることじゃないと思うのに、申し訳なさそうに微笑むヨシュアが愛しくて憎らしかった。
 ただ、先ほどまで不安で冷える背中に身体の熱は身を潜めていたはずが、いつのまにかヨシュアと繋がったところから再び熱を持ってしまっていることに戸惑いを覚えた。
 子どものように無垢で明け透けな欲求を口にするヨシュアに興奮してしまった、と言うのが一番正しいだろうか。
「ん……な、なら」
 ドキドキと高鳴る胸に、とんでもないことを口にしようとしているくちびるはカラカラに乾いていて、無意識の内にぺろりと舐めた。
「今、ここで……して」
 俺の言葉が咄嗟には理解できなかったようにヨシュアの瞳はゆっくりと瞬きして、それから驚愕によってみるみるうちに見開かれるのをうっとりした心地で見守る。
「よ、ヨシュアの、おしっこ……俺の中で飲ませ、て……?」
 とてもまともではない、普通では考えられないような懇願をごく当たり前に口にしている自分が、どこか遠くに行ってしまったかのようにすら感じる。けれど、キレイなヨシュアの排泄物を受け止める器になりたいという欲求は至極真っ当なように思えた。
「ネク君?」
「ぉ、おねがい、っんく……よしゅあ……」
「お願いって……ん、そんなの……お腹壊しちゃうよ?」
 口にしているうちにどんどんと興奮が高まってきて、ゆるゆると腰が動き始めてしまうのを自分ではどうしようもできなかった。こんなことを言って、ヨシュアに嫌悪の目を向けられたらどうしようという一点だけが不安だったのだけれど、ヨシュアは相変わらず困ったように、どこか心配そうな顔をしているだけだ。
「んん、い、いい……からぁ……!」
「ね、くくん……そんなに締めないで……っ」
 ヨシュアは咄嗟に腰を引いて逃れようとしたみたいだけど、こんな状態の俺を一人放り出して行こうだなんて許さない。はしたない自分に背が震えるほどの羞恥を感じながらも、ヨシュアの腰に脚を絡ませてぎゅっと引き寄せる。
「だして、よしゅあ……! なかで、だしてぇっ……」
「だ、めだってば……っ……!」
「んん……んー……!」
 なおも身じろいで離れようとするヨシュアに、ぐ、とお腹に力を入れて咥え込んだ屹立を食い締めると、さすがに我慢できなかったようでひく、とヨシュアの身体が震えた。しゃあ、と勢いよく何かの液体がお腹に叩きつけられる感触がして、次いですぐにじわりと温かいものが体内を濡らし、徐々にお腹の中を満たしてく。その度に自分の身体がびく、びく、と震えて、紛れもない快感による喘ぎが口をついて漏れるのが分かった。
「はぁ、はぁっ……あ、あふ……んく、んんぅ……」
「ねく、くん」
 最後にはしょろろ、と勢いをなくしたそれは、温かい温度で俺の腹をいっぱいにしてようやく止まった。
 ヨシュアの排泄と合わせるように俺も射精してしまっていたようで、ナカだけでなくお腹の上もぬるぬると濡れた感触で盛大に汚れている。
 とろとろと肌を伝っていく感触で反射的に身じろごうとすると、お腹の中をいっぱいに満たした液体に内臓を圧迫されるような感じがして、それだけでぶるりと背筋が震えるような感覚が沸き起こった。
 むずがるようにゆるゆると頭を揺らすと、ヨシュアは相変わらず困ったような表情で俺の髪を梳いてくれる。
「ああ、出ちゃった」
「ふ……うゅ……ふぅ、く、んん……」
「ごめんね?」
 どうしてヨシュアはまた謝るんだろう。だって、こんなに。
「ん、ん……よしゅあの、おしっこぉ……はふ……んん、あったかい……」
 未だヨシュアの性器で蓋をされたまま体内にいっぱいの液体を溜めているのは苦しかったけれど、ヨシュアのものに満たされているという幸福感しか俺の頭にはなかった。
 なのに申し訳なさそうに眉を下げるヨシュアに違うって言いたくて、困らせたいわけじゃないんだって伝えたくて、ぎゅっと首筋に回した腕に力を込める。
「よしゅあ……はぁ、はふ……うぅ」
「ふふ、ネク君もいっちゃったんだ」
「ぉ、おなか……いっぱい、だよぅ……っ」
「うん」
 込み上げてくるわけのわからない感覚にふるふると首を振ると、ヨシュアはそんな俺を宥めるようによしよしと幼子をあやすように身体の色んなところを擦って、撫でてくれる。それは背中だったり、頬だったり、頭だったりするけれど、ヨシュアにならどこに触られても俺は気持ちがよくて、幸せで、優しい声で名前を呼ばれるだけで泣きそうになった。
「ベッド、汚れちゃうけど……このままだと動けないから、抜いちゃおうね」
 そう言ってずる、と俺の体内から抜け出ていこうとするものに、びくんと大げさに身体が跳ねる。それからかすかにきゅるるる、と身体のどこからか聞こえた音と、下腹部からダイレクトに伝わる違和感に思い当たってはっとなった。
「あ、だ、だめぇ……!」
 咄嗟に回した腕と絡めた脚で、ヨシュアの身体を引き止める。けれども達したばかりの身体では上手く力が入れられずに、ずるずるとヨシュアの服の上を滑った。
「うん? どうして?」
「も、もれちゃ……からぁ……!」
「でも、このままじゃどうしようもないよね? 仕方ないでしょ?」
「ちが、ちが、のぉ……はぁ、ひ、ん……! で、ちゃ……でちゃあぁ……!」
 半狂乱になってうったえた涙声での嘆願も空しく、ずるりと生々しい感触を残してヨシュアの屹立は呆気なく抜けて行く。そうすると当然腹の中に溜まっていたヨシュアの尿が一斉に流れ出して、しょろしょろとシーツを濡らしていった。
「あ、あ……あぁ……! だめ、れちゃ……らめぇ……っ!」
 それだけなら俺だってここまで必死にならなかったのだけれど、ぷるぷるといきんで堪えるのも空しく熱い感触がどろりと腹の中を下って行く。どんなにいやいやと首を振っても、腹の中を暴れる奔流を我慢することなんてできなかった。
 ぶしゃ、ととても聞くに堪えないような音がして、液状に近くなった糞便がシーツの上に飛び散る。ヨシュアにかからなかったかどうか今はそれを心配するしかできなくて、でもぎゅっと閉じた瞼を開けて確かめる勇気なんてどこにもない。そしてそれは一度だけでは終わらず、二度、三度に分けて少しずつ俺の腹の中から外界へと送り出された。
「……あ、っ……あぁ……あ……」
 ヨシュアの尿をお腹の中に溜めていたせいでそれが浣腸代わりの役割を果たしてしまったのだと頭では理解できていたけれど、とても受け入れることができない。
 それからいつの間にか開いていた目はただひたすらに天井を仰いでいて、気づけば止め処ない涙がぼろぼろとまなじりを伝って枕にこぼれていた。ぷすす、と空気が漏れる間抜けな音が聞こえて、それでようやく俺のさらしている醜態は一応の幕を閉じたらしいことを知る。
 けれど途端に鼻をつく異臭が漂い始めて、一部始終を見下ろしていたであろうヨシュアの顔を見ることができなくて、ただ闇雲に腕で顔を覆い子どものように泣きじゃくった。
「う、うぅぅ……ふ、ぇ……うあ、ぁ……ひ、うぐ、うえぇ」
「ああ、漏れちゃったね。うんち、我慢してたの?」
「ふ、うぇ……め、らさ……ごめ、ん……なさ……」
「あは。ほら、おしっこもおもらししちゃってる。そんなに気持ちよかった?」
 言われて、自分の性器からしょろしょろと勢いなく漏れ出るものに気づいたけれど、もはやこれ以上取り繕いようなどなくてただ呆然と広がる濡れた感触を受け入れるしかない。
 情けなく頭を垂れる俺の性器をヨシュアの手は衒いなく掬い上げて、未だ少量ながら尿を垂れ流すのにも構わずくにくにと慰めるように撫でてみせた。
「やぁ……さわ、ちゃ……ふえぇ……ごめん、なさいぃ……っ」
「どうして謝るの? ネク君だけが悪いわけじゃないのに」
「う、く……って、だって、ぇ……」
「ああほら、泣かないで……大丈夫だから、ね?」
 汚れていない方の手が頑なに拒む俺の両腕を優しく取り上げ、露になった泣きじゃくってしとどに濡れた頬を何度も撫でてくれて、そのあまりの温かさに俺はもはや黙りこくって嗚咽を漏らす他に術がない。
「大丈夫だよ、僕がついてるから……ね、おフロ入れてあげる。一緒に入ろ?」
「は、ふ……うぅ……ん、んん」
「全部洗って、キレイにしてあげる」
 他の誰でもないヨシュアの前だからこそとても今の醜態には耐えられないと思ったのだけれど、この場から俺を救ってくれるのはヨシュアの他にいるわけがなくて、嫌がる素振りもせずただそっと抱き上げてくれる長い腕と、やわらかく頬に、額に落とされるくちびるにただ身を任せるだけだった。


 お風呂に入って、それこそ身体の中から外から隅々までヨシュアの手によって丹念に洗われた後、ふわふわのタオルとヨシュアが着せてくれたパジャマに身を包んで、ぼんやりと熱に浮かされたようにふわふわと浮き立つ頭で部屋に戻ると、いつも愛用していたベッドマットが丸ごとベッドの上から消えていた。
 どうやらヨシュアがもう使えないと判断したらしく、愛用のオレンジの携帯で丸ごと廃棄場へ転送してしまったようだ。
 なので明日新しいものを買いに行くまでは寝床のない俺たちは、これでもかというくらい床に掛け布団を敷いてから寝そべると、毛布に包まって二人でくっついた。
「もう、落ち着いた?」
「う、ん……ありが、と……ヨシュア」
 いつでも優しく包み込んでくれるヨシュアの腕はどうしようもないくらい温かくて、この腕に好きなだけ甘えられるのは俺だけなんだと思うと、これ以上なんてないくらい心が満たされる。
「それと、やっぱり、ごめん……なさい」
「?」
「俺のこと、き、嫌いに……なったり、してな、い……?」
「どうして?」
「だ、って……」
 ヨシュアを前にすると自分の欲望を抑えることなんてとてもできなくて、はしたなく歪んだ気持ちをさらけ出してしまったことが不安でたまらなかった。
「先におもらししちゃったのは僕なんだから、それでおあいこじゃない?」
「あ、う」
 さらりと言われてしまった言葉に思わずうつむくと、火照った頬がヨシュアの胸とくっついて気持ちいい。ちらりと視線を上にやってみると、ヨシュアは優しく、柔らかく微笑んでいた。
 でも用を足したいというヨシュアを無理に引き止めたのは俺だし、などとずるずると考えたりもしていたものの、ヨシュアのその微笑と抱き締めてくれる身体の体温でうとうとと意識が持っていかれてしまって、なんだかどうでもいいのではないかと思えてくる。
 ヨシュアがこんな風に花開くように笑ってくれるのなら、他のことなんて瑣末な事象に過ぎないではないか。
「ヨシュア、俺のことまだ……好き?」
「好きだよ?」
「本当に……?」
「うん……ずっと、ずっと好きだよ」
 ヨシュアのその言葉を聞くたびに泣きたくなる。今のヨシュアは俺との未来を疑わない。何の衒いもなく口にされるその言葉で、俺は神にも悪魔にもなれるとすら思うのだ。
「お、れも……すき……よしゅあ」
「うん」
「大好き……」
 ヨシュアが優しくうなずくと俺の額に当たってくすぐる首輪の感触に胸がいっぱいになって、ヨシュアの全部が愛しくて、もっともっとヨシュアの全部が欲しくなる。
 もうヨシュアの全ては俺のソウルによって構成されていて、物理的にも俺のものではあるのだけれど、ヨシュアの色んな表情が見たくて、いやらしい顔も、その痴態すらも全部が愛しい。だからヨシュアにも俺の全部を見て欲しくて、はしたないところも、みっともないところも、恥ずかしいところも全てを曝け出してしまうのだ。
 でもただ今はヨシュアの腕に身を任せて眠ってしまいたくて、明日はヨシュアと二人で、久しぶりに街中へ出て買い物がてらの散歩ができそうだから、ただその幸福な日を心待ちにしてゆっくりと目を閉じた。



おフロは子どもの〜系列と被るので省きました。 20100226

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