※性描写を含みます。ご注意ください。




 さく、とヨシュアの手によって優しく突き立てられた櫛が、繊細な動作で俺の髪の毛を通り抜けていく。
「なんかネク君の髪、犬の毛みたいだねぇ」
 俺を膝に乗せたまま悪びれずに呟くヨシュアの言葉が不可思議で、つい怪訝な表情で返してしまった。
「どういう、意味だ?」
「わあ。ネク君たら、怖い顔」
 おどけて言われた言葉に、そんな変な顔をしていただろうかと思わずかっと顔が熱くなる。
「べ、別に、そんな顔してるつもり、ないけど」
「ふふ……んー、触ってるとアルファ波が出そうだなーって」
 アルファ波? それはもしかしなくとも、犬猫に触っているときの人間に出るという脳波のあのアルファ波だろうか。
 ますます怪訝な顔をしてしまう俺の耳に、ヨシュアは優しくくちびるを寄せながら呟いた。
「触ってると、なんだか安心するってこと」
 あまりにも予想外な言葉と近い距離で囁かれた声音に、どきんと一瞬心臓が跳ね上がる。そんな俺の動揺を知ってかしらずか、器用な手で櫛を通しながらもう片方の手はするすると優しく頬を滑った。
 あ、まただ。
 こうしてヨシュアの膝の上に乗ることはほとんど毎日していることだからなんとか慣れたけれど、そうしながらヨシュアはいつも俺のあちこちを触ってくれる。今みたいに髪を梳いてみたり、頬を撫でてみたり。性行為とは違ってこういった動作は特にヨシュアがいい思いをできるわけでもなく、俺ばかりが嬉しいようでいいのかなと思ってしまうのだ。
 飽きもせず俺の頭を撫でるヨシュアの手に、そんなふとした疑問が頭をよぎる。ほんのささいな疑問だったはずのそれは、みるみるうちに俺の頭をいっぱいにして、大して時間をかけることもなく簡単に不安へと姿を変えた。
「ヨシュアは、さ」
「うん?」
 不思議そうに首をかしげて、こちらを見つめる無垢な視線が痛い。
「あんまり俺のこと触ってたら、飽きちゃわないか?」
 精一杯の勇気を持って口にした言葉は、それを聞いた瞬間驚いたように目を見開くヨシュアのスミレ色に吸い込まれて行き、数秒の間を置いてからため息として形のいいくちびるから吐き出された。
「ふぅん?」
「……」
「じゃあネク君は、僕なんてすぐ飽きちゃうわけ?」
 思いもよらぬ返答に、頭が真っ白になる。
「え、っ……」
「だってそうでしょ? 僕がネク君に触ってる分だけいつも一緒にいるんだもの」
「そ、そんな、のっ」
 たしかにヨシュアとはいつも一緒に居るけど、たくさん抱きしめられたりキスしたりするけど、飽きるだなんてそんなこと考えたこともない。だって俺の全部はヨシュアから貰うソウルで出来ていて、ヨシュアのためだけにあるのだから。それより何より、俺はヨシュアのことが好きなのだから、飽きるはずなんてない。
「だって、ヨシュアが触ってくれると、嬉しくて、気持ちよくて……」
「うん」
「俺が、ヨシュアに、あ、飽きるとか……そんなこと、あるわけない、だろ」
「でしょ? だから、僕も一緒」
「う、あっ」
「触ってると安心するって、言ったじゃない?」
 あっさりと言われてしまった言葉に、ぐ、と胸が詰まって、それ以上何も言えなくなってしまう。次いで、その言葉の意味に気づいた俺はみるみるうちに自分の顔が熱くなるのが分かって、先ほどまで胸を満たしていた不安など跡形もなく消えてしまったのだった。
 相変わらずヨシュアの手は俺の髪を櫛で梳きながら、頬に当てた手でするするとこめかみや顎を撫でる。そのまま耳元まで滑って耳たぶをくすぐる感触にぴくん、と頭を揺らすと、「動かないで」と穏やかな声でたしなめられた。
「ヨ、シュア……」
 でもそんなことを言われても、向かい合ってヨシュアのキレイな顔をじっと見つめていたら、その言葉通りにはとても出来ないな、と思った。だって、そのやわらかそうなくちびるにどうしてもキスしたくなってしまったのだ。
「なあに」
「あ、の、えっと……キス、してもいい?」
 きょとん、と無邪気な瞳でこちらを見つめるヨシュアと視線を絡めながらそれを口にするのは相当の勇気が要ったのだけれど、きっと目を見ないで話したりしたらすぐにヨシュアの機嫌を損ねてしまうだろうことのほうが怖かった。
「ふふ」
「……っ」
「そんなのすぐ出来る距離にいるのに、なんで今しないの?」
「え、う」
「別にお仕事中じゃないんだから、ネク君の好きなときにしていいんだよ」
 頬をなぞるゆびも、落とされる声も優しくて、甘ったるくて、とても平常心を保ったままで受け止めることができない。どきどきと高鳴る胸がヨシュアに聞こえないように、ぎゅっと手を当てて押さえた。
「ん……」
 それからようやく決心がついて、恐る恐るくちびるを寄せた、のに。
「まあ、でも」
「う、っ?」
 ヨシュアのくちびるに触れる寸前、間に入り込んだ人差し指にぺた、とくちびるを押さえられて、キスはお預けをくらってしまった。髪を梳いていた手も離れて、櫛の柄部分を折り畳んでポケットに仕舞うのが見える。
「よしゅ、あ」
 もどかしさに頭を揺らそうとしても、こつ、とヨシュアに額をぶつけられて阻まれた。
「キスしちゃったら、それだけじゃ済まなくなるけど……いいの?」
 微笑みながらそんなことを聞いてくるヨシュアは意地悪だ。だって、そんなの、今更。
「い、い……から、ぁ」
「ホントに?」
 未だにヨシュアとの間を阻む、愛しくて憎らしい滑らかな白いゆびをぺろりと舐めた。あまりの焦れったさにやんわりと歯を立てて咥えると、ヨシュアが喉を鳴らして楽しそうに笑う。
「おねが、い……よしゅあっ……」
「仕方のない子」
 どんどんと強くなる身体の疼きに荒くなる息を抑えながら涙声で情けなくうったえると、ようやく邪魔をしていたゆびを頬にずらして、ヨシュアは優しくキスをくれた。


「ん、くぅ……よしゅ、あ……」
 体内に深くうずめられたヨシュアの熱がじくじくと身体中に快楽を響かせて、だんだんと頭の中を焼いていく。
 ただでさえヨシュアの性器は俺の身体には少し大きすぎて、受け入れているだけでも大変なのに、ヨシュアはわざと俺が一番感じるお腹側の壁を突いたままで留まって、動いてくれない。ヨシュアの腰に跨ったまま、少し身じろぎしただけであられもない声を上げてしまいそうなほど感じてしまって、じりじりと神経を焼くような快感に内側から壊れてしまいそうだった。
「ゃ、らぁ……はぁ、はぅ……しゅあ、こんな、の……っ」
「こんなの?」
「こ、な……こわれ、ちゃ……おれ、へんになっちゃ、ぁ……あふ、あうぅっ」
 動きたくなくても、どろどろに蕩けきった内部は俺の意思とは関係なく勝手に粘膜をひくつかせて、その度に信じられないような快楽が俺を苛むものだから、あまりの切なさにぼろぼろとこぼれる涙が止まらない。
 それでも、そうやって俺を泣かせている当の本人は楽しそうに、かたちのいいくちびるで俺の頬に口づけて、ぬるやかな舌で俺の涙を甲斐甲斐しく拭っているのだけれど。
「ふふ、かわいい声出して……すごく気持ちよさそうだよ。ナカもね、もうとろとろなのに、一生懸命僕のことぎゅ、ぎゅ、ってしてて、健気で……かわいい」
「やぁ、やだぁ……はふ、ぅく……ゆるして、ぇ」
「どうして? そんな顔で泣いちゃうくらい気持ちいいのに」
「ふ、ぅ……うえぇ……えぐ、ぅく……」
 いっそのこと強く揺さぶって何もかも分からなくして欲しいのに、中途半端に意識を残したままただゆるゆると終わりのない快楽を与えられ続けるだけなんて、とてもではないけど耐えられない。けれど、それを決められるのは俺ではなく、目の前で俺を嬲り続けているヨシュアなのだ。ヨシュアが白と言えば、俺がどんなに嫌がろうともそれは黒にはならない。
「ネク君、いろんなとこで気持ちよくなれるようになったね。ほら、こことか」
「う、ぁっ」
 する、と滑ったゆびが耳たぶのピアスホールを爪の先でくすぐって、それだけで身体が跳ねてしまう。
「こことか」
 そのまま首筋を撫でたかと思うと、ぐにゅ、と赤くなってふくれた胸の尖りをつままれた。その刺激が直にお腹の中にまで響くと、ぎゅう、と思い切りヨシュアのことを締め付けてしまって、声も出せない。
「ここもね。あは、ナカはぎちぎちなのに、ひくひくしてる。ほら」
「ふ、く……ゃ、さわ、ちゃ……ぅ、けほ、っけほ……て、ゆるひてぇ……!」
 ヨシュアのものを咥え込んで限界まで広がっている後孔のふちをくちゅくちゅと弄られるだけで、うまく呼吸をすることもできなくなって、何度も咳き込んだ。でもその度にお腹に力を入れてしまって、逃げ場のない快楽の底へずるずると引きずられてしまいそうになる。
「うぅ……ふ……ぇ……」
「あれ?」
 何度も繰り返し繰り返し俺を嬲っていた手をあっさりと離して、ヨシュアは不思議そうな声を上げた。
「……?」
 顔を上げたくないような、上げてはいけないような、そんな気持ちでいっぱいだったのだけれど、つい好奇心に負けてヨシュアの顔を見つめると、子どものように無垢な表情で首をかしげていた。
「そういえば、まだここはしてあげたことなかったよね?」
 ここ、と言って俺とヨシュアの腹の間で勃起したままぷるぷると震えている性器をやんわりと握られたけれど、ぴく、と肩を跳ねさせながらも言葉の意味がよく理解できなくて戸惑う。だって、そこは今までに、何度も。
「ひ、あぁ……!」
 唐突にヨシュアがそのキレイな爪を割れ目に食い込ませて、尿道口のふちをくりくりと探り始めた。あまりにも強い刺激に、がく、がく、と全身が激しく痙攣する。
「っめ、だめぇ……! はふ、ぅあ、あぅ……く、くちのとこは、あぁ……あっ……」
「うん、そうそう。まだクチのところしか弄ってあげてなかったんだ」
 何でもない顔でくるくると何度も爪を食い込ませながら、ヨシュアは先ほど胸ポケットに仕舞った折り畳み式の櫛を再び取り出した。ぱちりと接続部を回転させて柄を伸ばす仕草を、怯えきった目で見つめているであろう俺は、ヨシュアの瞳にどう映っているんだろう。
「大丈夫だよ、怖くないから。まあ、少し痛いかもしれないけど」
 食い込ませていた爪を離すと、代わりのように取り出した櫛の先端、細い柄の滑り止めなのであろう小さな球体部分をく、と押し付けられた。ヨシュアが何をしようとしているのかがまるで分からなくて、恐怖から咄嗟に身体が逃げ出しそうになったのだけれど、体内にヨシュアの屹立を打ち込まれていてはそれが叶うわけもない。
「ネク君痛いのも好きだから、結構気持ちいいんじゃないかな?」
「ひ、ぃ、や、いやあぁ……!」
 能天気に微笑みながら暴れようとする俺を難なくいなすと、ヨシュアはそのまま櫛の細い柄を俺の尿道に押し込んだ。いくら細いとはいえそんなもの絶対に入らないと思ったのに、ぷくぷくとそこから漏れ出す先走りのぬめりを借りて、ぐちゅっと淫猥な音を立てながらあっさりと柄の根元まで入ってしまった。あまりのことに声も出せなくて、呆然とヨシュアの無邪気なぶどう色の瞳を見つめる。
「ぅ、あ……あっ……あ……」
「ふふ、ほら入っちゃった。ぴーんってなってて、かわいいね」
「や、ぁ……やだ、やだあぁ……いや……ぁ……」
 本来入るべきものではないものがそこに入っているという異物感は凄まじくて、じわじわと尿道を犯す痛みと恐怖に、涙腺が壊れたかのように後から後から涙が溢れて止まらない。それでもぼろぼろと情けなく泣きじゃくる俺などまるで気にしていない様子で、く、く、とヨシュアのゆびは無慈悲に櫛の頭を押して遊び始めた。
「っお、おしちゃ……あぁっ……はふ、はうぅ……! やあぁ……」
「イヤ? イイ、の間違いでしょ」
「しゅ、いたぁい……ひ、く……うくぅ……いた、いたい、よぉ……」
 ほとんど叫び声のようになってしまった声で、嗚咽混じりにうったえても、ヨシュアは優しく微笑んでただ額にやわらかいキスをくれるだけだ。
「大丈夫だよ。ネク君自分で思ってるより、痛いの好きだから」
「ふ、ぅく……だっ、て、ほんとに、いたい、ん……だ、てば……ぁふ、うぅ……こわい、しゅあ……っ」
「すぐキモチよくなるから……ね?」
「はふ、うぇ……って、らって……ふえぇ……こんな、こわ、ぃ……こわいぃ……!」
 はぁはぁと涙混じりに荒くなる息をヨシュアの胸に押しつけながら必死でその身体にしがみつくと、大きな手のひらでしっかりと抱き締め返してくれて、子どもをあやすような泣きたくなる仕草で背中をぽんぽんと撫でられた。
「ん、く……んく、ぅ……んん、んぅ」
 そんな俺をよそに、ヨシュアは優雅な指先で櫛の平たい頭を掴むと、ちゅくちゅくと音を立ててゆっくりと俺の尿道を出し入れし始める。すると、先ほどまで声も出ないほどの恐怖と痛みに頭が支配されていたのに、尿道内を細い柄と、先端の球体部分が擦る度に、段々と痛みと快楽の境目が分からなくなってしまった。
「よしゅ、よしゅあ、ぁ……よしゅあぁ……」
「どうしたの?」
「あふ、あうぅ……お、おれ……なんか、ヘンっ……ヘン、だよぅ」
 何度も出し入れされているうちに、ぎゅーっと切ない感覚が胸を締め付けて、じわじわと屹立の内部に熱が集まってくるようで、どこかもどかしいその感触に暴れだしてしまいたくなる。ぐいぐいと櫛で尿道内を弄くりながら、柄の太さに押し広げられてぱくぱくと開閉する尿道口を指先でくすぐられて、たまらずに大きな声を上げてしまった。
「やあ、あぁっ……あぁぁ……!」
「ヘンって、どんな風に?」
「わ、かんない……わかんなっ……からだ、熱くて、へ、へんになっちゃ……ぁ、ふあぁ……っゆび、うごかさないでぇ……!」
 気づけば、咥えこんだヨシュアの屹立で自身の内部を擦るように、自らぐちゅぐちゅと音を立てて腰を揺らしていた。冷たい無機物に尿道を犯される感触と、火傷してしまいそうなヨシュアの熱に体内を擦られる感触とで、何もかもが分からなくなってしまう。
「うあ、あぁ……はぅ、しゅあ……よしゅあぁっ……こわ、こわぁい……こわい、よぉっ」
「気持ちよくなってきちゃったんだ? ふふ、涎垂らして……かわいい」
 ぺろ、と口の端から流れる唾液を舐め取られて、そのままついばむように口づけられるだけでおかしいくらいに身体が跳ねた。ヨシュアのくちびるが恋しくて、こくこくと必死でその唾液を飲み込む。
「ん、んぅ……っあつ、い……よしゅ、おれ、でちゃっ……でちゃうぅ……!」
「うん、いいよ。僕も出すから……ナカに、欲しいんでしょ……?」
「ほし、ほしぃれす……よしゅあのぉ、なかに……い、いっぱい……っ」
 出して、と最後まで口にすることが出来ないまま、強く突き上げる動きに促されてそのまま達してしまった。びくん、と大きく身体が痙攣して、びゅくびゅくと射精する衝撃と共に一瞬目の前が真っ白になる。けれど、からんからん、という音で、勢いよく飛び出した精液に押された櫛が落ちて、玉座から床へ転がって行ったのがわかった。
「ん、うく……はぁ、はぁ……は、ぅ」
「あは、すごいね。まだ出てる。そんなに気持ちよかった?」
 もう全部吐精しきったはずなのに、あまりの刺激の強さに腰が小刻みに震えてしまうのが止まらなくて、その度にぴゅ、ぴゅ、とやわらかくなってしまった性器から精液が飛び出す。じわじわと焼けるように尿道が熱くて、たまらずにヨシュアの胸に額を擦り付けた。
「はふ、あぅ……うぅ、やだ……なん、か……じくじく、する……」
「初めてだったから、ちょっと刺激が強かったのかな? でも、ちゃんと気持ちよくなれたでしょ?」
「う、ぁ……や、さわっちゃ……あぅ、うぅ」
 くたりと頭を垂れる俺の性器を大きな手で包むように握られて、尿道内に残った精液を全部吐き出させるようにきゅ、きゅ、と繰り返し扱かれる。その度に強くいきんでしまって、お腹のナカに迎え入れたままのヨシュアのものが苦しかったけれど、とろとろと後ろから漏れ出すヨシュアの精液に、気持ちよくなってくれたんだ、と思うとうれしかった。
「よしゅ、あ……は……?」
「うん?」
「よしゅあは、ん、んく……きも、ち、よかった?」
 でもどうしてもヨシュアの口から、その声で聞きたかったから、おずおずと顔を上げて聞いてみる。そうすると、ふんわりと微笑んで優しく頭を撫でてくれたのがうれしくて、大きな手のひらに頬を擦り寄せた。
「うん、ネク君かわいくて……すごく気持ちよかったから、いっぱい出ちゃった」
「ほんと、に?」
「本当に」
 腰を支えていた手が後ろに触れて、そのゆびでヨシュアのものを咥え込むふちを押し広げるように悪戯に撫でる。どろ、と一気に溢れ出す精液のぬめる感触に、ふるふると背筋が震えた。
「ほら、お腹のナカ僕のでいっぱいなの。分かるでしょ?」
「ん、うん……っうん……」
 見て見て、とお気に入りのオモチャを見せびらかす子どものように無邪気な様子のヨシュアが愛しくて、こくこくとうなずきながら、細身なのにしっかりと揺るがない体躯にぎゅっと抱きつく。少し着乱れたスーツの温かいその胸に頬擦りすると、視界に入る今日のネクタイの柄は赤の布地に白と黒の犬が散歩しているものだった。ぼんやりと、俺の髪の毛が犬のようだと言ったヨシュアの言葉を思い出す。
「ヨシュア、も……」
 首に回した手をヨシュアの後ろ頭に伸ばして、そうっとその繊細な感触と幻想的な色の髪の毛を撫でてみた。不思議そうに首をかしげるヨシュアの動作を追うように、さらりと流れる前髪を見ているだけで、ぎゅう、と胸がいっぱいになって、満たされた気持ちで苦しくなる。
「ヨシュアの髪も、やわらかくて、気持ちよくて……触ってると、あんしん、する」
 お返しのように俺の頭を撫でてくれるヨシュアのゆびはやっぱり優しくて、この心地よさの半分でも俺がヨシュアにあげられていたらいいのに、と少しだけ分不相応なことを考えた。
「そ? じゃあ飽きるまで触ってていいよ」
「う、うんっ」
 機嫌が悪いときはこれっぽっちも俺のことなど構ってくれないくせに、こんなときばかりヨシュアはこちらがびっくりするくらいに甘えてくるから油断できない。俺はそれがうれしくて、くすぐったくて、いくらでも甘えて欲しいと思ってしまうのだけれど。
 ぽす、と俺の髪に顔を埋めて頬擦りをするヨシュアの頭を撫でながら、俺が犬ならヨシュアはきっと長毛種の猫か何かに違いないと考えて、気まぐれなヨシュアの穏やかなぬくもりを噛み締めた。



ピカさんとの会話からネタのヒントいただきました。ありがとうございました! 20090911

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