※性描写を含みます。ご注意ください。




　ヨシュアに手を引かれて歩く。
　コツ、コツ、と響く靴音はヨシュアのものと俺のものとで、二人分だ。
　迎えに来るよ、と言ったその言葉通り、ヨシュアは俺が会いたいなと思えばその日にすぐ迎えに来るようになった。学校帰りの俺を校門で待ち伏せていたらしいヨシュアを横目で見ながら、頬を赤らめて通った数々の女子生徒の様子はあまり思い出したくない。ヨシュアは俺のなのに。
　こいつは最近オトナの姿のままＲＧに同調する術を覚えたらしく、校門前で平然とその目を引く容姿を安売り大セールだ。もちろん低位同調しているからさほどプレッシャーもかからない。器用なヤツめ。
　安売りしていたくせに、当の本人は周りの視線など知ったことかという態度で当たり前のように俺の手を取ると、有無を言わせず歩き出した。その恭しい手つきと言ったら、今思い出しても顔から火が出そうな気持ちになる。
　こんな風に手を引かれて並んで歩くと、身長差からますます自分が小さな子どものようでいたたまれなかった。街中からそのままずっと歩いてきたものだから、相変わらず俺はコイツから公開羞恥プレイを受けっぱなしだ。
　それでもぎゅっと握り返せば、微かにヨシュアの手の力も込められるのが分かるから、嬉しくて、振り払うなんて持っての外ではあるけれど。
　ずっと歩いて、裁かれしものの道を通り抜ければやっと審判の間だ。この道を通るのも何度目だろう。ヨシュアの部屋……と言っていいのかわからないけれど、俺は勝手にそう思っている。
　外では俺の一歩前を歩いていたヨシュアが、部屋に入ってからは緩やかな足取りで俺と並んだ。
「ふふ、なんかネク君ちっちゃいね」
　言葉と同時にぽんぽんと頭に手を乗せられる。唐突で、あまりにもあからさまな子ども扱いに、不機嫌な表情になるのを隠せない。
「なんだよ、それ」
　発する声も思い切り不満を表したものになったが、ヨシュアは涼しい顔だ。
「ううん、なんか改めて並んだら小さいな、と思って」
　見上げるヨシュアの顔は俺の頭一つ分以上は上にあって、多少伸びたはずの俺の身長などあってなきがごとしだった。優雅に歩く長い足も、簡単に俺を制してしまえる長い腕も、なんとも言えず悔しい。
「おまえがでかいだけだろっ」
　曲がりなりにも俺だって男なのだから、小さいと言われても何も嬉しくなんかない。馬鹿にされてる、絶対。
「このくらいだと抱くのにラクだよね」
　ますますむっとする俺を、やっぱりヨシュアは構わずにそっと俺の頬に手を伸ばす。そのまま滑るゆびが耳元を撫でた。思わず首をすくめる。
　そうされると弱いの、知ってるくせに。
「ん……せっかく追い越せそうだったのに……」
　成長期に伴って標準的な伸びを見せていた身長は、ここしばらくでぱたりと成長が止まってしまった。単純に俺の成長期がそれだけだったのか、ＵＧに関わりすぎているせいなのかは分からない。
　例え後者だとしても、身長かヨシュアかなんて選ぶまでもないバカバカしい選択肢だから、別に構わないのだけれど。
「そんなに僕を見下ろしたいなら膝に乗れば簡単だよ？」
　そんなことを言いながら、ヨシュアはそのままの足どりで辿り着いた玉座に腰掛ける。その姿も一連の動作も、それはもう堂に入った手馴れた様子で、実に優雅だ。ご丁寧にぽんぽん、と自身の膝を叩いてみせる。
　だから、こいつはどこまで俺をおちょくれば気が済むんだ。
「子ども扱いするな！　も、もうそんなガキじゃないんだからな……」
　そうは言いながら、ヨシュアに抱かれてその膝に座る行為が悔しいほどに心地よいことは身を持って体験しているので、少し言葉尻が弱くなった。ああもう、なんて素直なんだ俺は。
「ふぅん、ならいいけど。ごめんね？」
　そんなことで煩悶している俺の様子を見透かすように、こちらが拍子抜けするほどあっさりと、ヨシュアは笑いながらその長い足を組んでしまった。これでもう膝に乗ることはできない。くすくすと漏れ聞こえる吐息が腹立たしい。
　でもそうしてヨシュアが落ち着いてしまうと、俺はどうしていいのかわからなくて困る。この部屋で俺の居場所にしていいところなんて、ヨシュアの傍以外ないのだから。
「べ、別に……これくらいならできるしっ」
　それでもどうしても悔しくて、強がってヨシュアに歩み寄るとその胸元のネクタイを引っ掴む。それから、立ったまま少し屈んでキスをした。
　まだ自分で舌を入れられる勇気が出せなくて、ついばむだけの拙い口付けになる。それでもうっかりすれば膝が震えてしまいそうで、怖かった。
　いつも見下ろされてばかりだから、こんな風にヨシュアを見下ろしながらできるキスは好きだ。好きだけど、でも、やっぱりなんか違う。
「よくできました」
　からかうような口調で微笑むヨシュアは、それはもう間違いなく俺のことをからかっている。
　でもなんだか怒るのももうバカバカしくて、意地を張るのもくだらなく思えてきた。俺がそうしたいのに、我慢する必要なんてないではないか。
「ん……これ、邪魔……」
　組まれた膝の上におずおずと手を乗せてその瞳を見つめれば、ヨシュアはすぐに分かってくれる。
「いいよ、おいで？」
　ゆったりと組んでいた足を解くと、優しい声音と、その大きな手のひらで腰から抱き寄せられた。そのまま持ち上げるように膝に座らされて、恥ずかしいのにやっぱりその心地よさには勝てない自分が悔しい。
「も、もうオトナなんだからなっ……子ども扱い……したら怒るからな」
　止まってしまったとは言え身長も伸びたし、あのころよりは年齢的にも気持ち的にも、多少大人になったつもりだ。いつまでも子ども扱いされていてはむずがゆくてしょうがない。
「うん、知ってるよ？　オトナなんでしょ？」
　そう言って微笑むヨシュアは大人しく俺の腰を抱いているだけで、なんだかいつもと違う。いつも俺をからかうようにくすぐるゆびも、くちびるも触れてはこない。
　まっすぐにスミレ色の視線だけが俺を射抜いていて、ドキドキと鼓動ばかりが早くなる。
「う……ちゃ、ちゃんと、キスも出来るようになったし……ほらっ」
　そのスミレ色の視線に耐え切れなくて、ぎゅっとヨシュアの首にしがみつくと、思い切って口付けた。今度はなんとか勇気を振り絞って、薄く開いたヨシュアのくちびるに舌を潜り込ませる。誘うように舌を擦り付けてもヨシュアは俺を試すように自分からはあまり動いてはくれなくて、ぐっと狭くなる胸を堪えながら一生懸命絡め合わせて、口腔を舐めた。
「ふ、うゅ……んん……」
　ぺちゃ、とはしたない音を立ててしまって、それでも羞恥を押して一生懸命ヨシュアの口内を探る。ときおりお返しのように優しく応える舌に、どうしようもなく身体が震えた。
「は、は……ぅ、あ」
　いつもヨシュアに翻弄されてばかりだったから、なかなか呼吸のタイミングがつかめなくて、自然と離れたくちびるは荒い呼吸を漏らす。
「……上手になったね。次は？」
　褒めるように頬を撫でられて、ひく、と肩が跳ねるのがわかっているのに、ヨシュアは尚もそれ以上は触れずに言葉で促すだけだった。
「んっ……え、と……」
　正直な話、これ以上はいつもヨシュアにされるがままで自分からしたことがない。惑う俺に、それでもヨシュアは何も示してくれなかった。ただスミレ色の瞳だけが笑っている。
「ぅ……こ、こう？」
　ヨシュアの襟元でゆるめに締められているネクタイを引っ張ると、しゅ、と案外簡単に解けた。ヨシュアは何も言わずに俺の手つきを見守っている。恐る恐る上から一つずつボタンを外して、その白い首筋に口付けた。
　行動に移すまでは本当に及び腰だったのが自分でも情けないほどだが、思い切って触れてしまえばなんだか離れがたくて、うずうずともっと触りたくなってくる。
「ん、んっ……」
　ちゅ、ちゅ、と首の筋にそって何度吸い付いても物足りなくて、とくとくと脈打つ柔らかい皮膚に噛み付いた。しつこく歯を立てるとヨシュアの白い肌が赤くなって、なんだかものすごくいやらしい。
「そんなに噛んだら、アトついちゃうよ」
　くすくすと笑いながら、ヨシュアはされるがままだ。付けてしまった噛み跡を詫びるようにちろりと舐めると、くすぐったそうに淡い色の髪が揺れる。
　頬をくすぐるその感触にドキドキしながら、そろ、とヨシュアのベルトに手をかけた。
「あの……舐めてもいい？」
　好奇心から、随分思い切った言葉を口にしてしまった。首筋からくちびるを離して恐る恐る見上げると、ヨシュアは一瞬意外そうな顔をしたあと、面白そうに口の端をつり上げる。
「いいよ、やってごらん」
　居心地のいい膝の上から降りるのは少し残念で、離れがたかったのだけれど、それよりも好奇心のほうが勝ってそっとヨシュアの足元に跪いた。
　俺を解放したヨシュアは、そのまま肘掛にもたれるように頬杖をついている。王者然としたその振る舞いに、どうして胸が高鳴るのかなんて自分でもよく分からない。
「ん……」
　伸ばした手でそのままベルトを外して、乗り出すように床に膝をつく。ファスナーの金具を歯で咥えてゆっくり引き下ろすと、じーという音がやけに生々しく聞こえて、鼓動が早くなった。
　下着をずらしてまだ反応していないヨシュアのものを取り出す。手を添えるだけでドキドキしてしまって何度か躊躇したものの、恐る恐る口を開いてなんとか咥え込んだ。
「ふ……っん、んく」
　とても全部咥えるのは無理なので、少しずつ口内に迎え入れるように舌を這わせる。まだヨシュアはどこがいいのか分からないから、自分の感じる所を思い出してなんとなく検討をつけながら口を動かした。
　自分でも拙い動きだと分かっていたから少し不安だったけれど、少しずつ大きくなるものが苦しいながらも嬉しい。
　それでも段々口内を圧迫されて咥えるのが難しくなってきたので、横から舐めてみたり、先端をくちびるで食むようにしてみる。足りない所は手も一緒に使った。
　そうするとヨシュアのゆびが優しく頬をくすぐったり、頭を撫でてくれたりして、しているのは俺のはずなのにだんだん変な気持ちになってきた。
　無意識に腰を揺らすと、いつの間にか反応していたらしいものが下着の中で擦れて、余計に腰が動く。
「ん、ぅ……ふ……」
　もじもじと脚を擦り合わせても余計に疼きが強くなるばかりで、は、は、と荒くなる息を吐き出しながら、手は勝手に自分の下肢に伸びていた。
　堪えるように服の上から押さえると、くちゅ、と中でくぐもった水音がして、どうしても我慢できない。そのままの手でもどかしくベルトを外してしまうと、ヨシュアがおかしそうに吐息を漏らしたのが分かる。
「どうしたの？」
　咎める響きではけしてない、柔らかな声音なのに、びくりと肩が跳ねた。
　それでも手を止めることは出来なくて、下着の中に入り込ませた手でゆっくり自身を擦り上げる。
「ごめんなさ……い……、っ……ぅ……」
　無意識に漏れた謝罪にもヨシュアは笑うばかりで、あまりの羞恥に泣きそうになった。
「ネク君が先に気持ちよくなったらだめでしょ？　悪い子だね……」
「うぅ……う、ゃ」
「ネク君」
　柔らかなままの声で、外れた自分のベルトを引き抜きながらヨシュアは続ける。
「手、後ろに回して」
　一瞬何を言われたのか分からなくて逡巡したものの、すぐにこれは命令だと気がつく。逆らってはいけない、と直感的に思った。
　疼く下肢を持て余しながら言われたとおりに後ろ手に回すと、そのまま腕同士を括るようにベルトで縛り上げられてしまった。硬い革の感触がぎゅ、と腕に食い込む。
「あっ……あ……許し、ぇ……やらぁ……！」
　あまりの仕打ちに嗚咽交じりで懇願しても、ヨシュアは再び頬杖をついて、笑いながら見下ろしているだけだ。俯いた俺の顎を、ぐ、と革靴のつまさきが持ち上げる。
「ほら、おクチがお留守だよ？　オトナなんだから、ちゃんと最後までできるよね……？」
　有無を言わせぬ口調で微笑む端正な顔に、泣きながらもう一度ヨシュアのものに舌を伸ばした。
　震えるくちびるでしゃくりあげてしまって、上手く口が動かせない。
　とても口では咥え切れないのに、ヨシュアは俺の髪を掴むとぐっと奥まで押し込んだ。
「んん、んー……！」
　喉を突くか突かないかの加減で何度も口内を蹂躙されて、苦しくて、何度もえずいてしまいそうになる。ぎゅっと目を瞑ると、目尻に溜まっていた涙が簡単に零れた。
「出すよ」
　短く告げた言葉の後に、ヨシュアの精液が口内に溢れる。全部を飲み込むなんて芸当は俺にはとても出来なくて、熱く粘ついた感触に咳き込んだ。
「うっ、く……っけほ……」
　床にうずくまりながら何度も咳き込んで、口から零れた精液がぱた、ぱたと落ちる。
「ネク君にはまだ少し難しかったね」
　落とされるその声音はとても憐れみに満ちていて、けれど続く言葉は酷く残酷だった。
「でも、汚しちゃったのはちゃんとキレイにしようか」
　そっと顔を上げると、掃除して、と視線で命じられた。逆らうような意志なんてもうとっくの昔に失せていて、再び床に顔を伏せる。足元に飛び散った精液を丹念に舐めて、少しずつ飲み込んだ。
　変な味だな、と思うけれど、ヨシュアのものだからそこまでの嫌悪感は湧いてこない。ヨシュアの靴の表面を汚していたものまでキレイに舐め取ると、もういいよ、と穏やかな声が告げた。
「ちゃんとできたね。いい子だ」
　動かせない腕に戸惑っていると、脇の下にヨシュアの腕が回って優しく抱き上げられる。そのまま先ほどのように膝に乗せられて、触れる体温の温かさに泣きそうになった。
「ふ……ヨシュアっ……」
　甘えるように肩口に顔を埋めると、柔らかく頭を撫でるゆびが嬉しい。
「う、ぅ……も、ひどくしな、で」
　優しい仕草が嬉しくて、先ほどの放り出されたような感覚とのギャップに戸惑った。
「ひどい僕より、優しい僕のほうが好き？」
　覗き込むスミレ色に、そんな言い方はずるいと思う。
「ど、っちも……ヨシュアだから……好き、だけど……けど」
　触れる体温に今はただ甘えていたくて、大きな手のひらに頬を擦り寄せた。
「ふふ、いいよ。優しくね」
　もごもごと口ごもりながら見下ろすとヨシュアはふわりと笑ってくれて、そっと頬に口付けられた。
「んっ」
　そのまま震える膝を立てると、する、とヨシュアのゆびが後ろに触れて、ぐるりと入り口を撫でられる。それだけでひくつく感触に、体が跳ねた。
「ふぅ……も、よしゅあの、ほしい……」
　一度も達せないまま放られた身体はどんどんと熱くなるばかりで、そんな些細な仕草が拷問のように思える。
「うん、でもちゃんと慣らさないと」
　ぐぬ、と入り込んだゆびが内部を探って、言葉通り慣らすように動き回った。身体が震えるたびにヨシュアのものが太腿の裏に擦れ、徐々に熱くなる感触が直接伝わってきて、たまらない。
　あまり間を置かずに二本、三本とゆびが増やされるのに、物足りなさに締め付ける粘膜がびくびくと収縮した。
「あ、っ……やだ、も、いいから……！」
「どうして？　痛くしちゃうでしょ？」
「うぅ……ゃ……いじわる……っ」
　囁かれる声は明らかに笑っていて、もどかしさにどうにかなってしまいそうだ。
　ばらばらに動く骨ばった指の節が内部に擦れる感触だけで、太腿に触れるヨシュアの屹立だけで、そこからどろどろに溶けてしまいそうな気分になる。
「ヨシュア……！　これ、取れよ……取ってっ……」
　拘束されたままの腕が痛くて、身じろぎながら懇願した。
「これ？」
　そっとヨシュアがもう片方の手で俺の腕を縛るベルトを撫でるから、こくこくと頷いた。だって、これじゃ。
「ん……ぎゅって、できないと、こわぃ……」
　嗚咽混じりにうったえると、ヨシュアはふ、と優しく笑って内部からゆびを引き抜き、ベルトを外してくれた。
　痺れて上手く動かない腕にも構わず、必死でヨシュアの首にしがみついた。
「ヨシュア、よしゅあ」
「うん、ごめんね」
　縋るものの確かな感触に涙が溢れる。そんな俺のまぶたに、ヨシュアは優しくキスをくれた。
「ん、ぅー……も、いい……？」
　疼く身体を持て余しているのが苦しくて、ねだるようにヨシュアの瞳を見つめる。
「いいよ。ちゃんと上手くできる？」
「ん……」
　与えられた許しにほっとしながらこくりと小さく頷くと、手伝うようにヨシュアの手が腰を支えてくれた。
「ん、んん、ぅ……！」
　ヨシュアのものをあてがいながら、恐る恐る腰を落とす。割り広げられる熱い感触に、勝手に漏れる声はいつも我ながらまぬけだなと思う。
　やっと与えられたものに急いてしまいそうな気持ちを必死で抑えながら、少しずつ力を抜いて受けいれた。
「ふ、よしゅ、あ」
　屹立の熱さに翻弄されながらも、なんとか全部収めることができたようで、宥めるように背中を撫でる手の優しさが嬉しい。
「なあに」
「うー、じょ、ずに……できた……？」
「ふふ、上手だったよ。いい子だね」
　幼子を褒めるように優しくくちびるを触れ合わせながら、ヨシュアが囁く。
「でも、もう少し入りそうじゃない？」
「え……ぁ」
「ほら」
　そう言うと腰を掴んでいたヨシュアの手が離れて、すでにがくがくと震えていた膝は支えを失い、簡単に崩れた。
「ひ、あ、あぁっ」
　体重に任せてずるり、とヨシュアのものが先ほどよりも奥の奥まで入り込み、がくん、と衝撃が走る。
「あ……ぁ……」
　あまりのことにまともに声も出せず、ぶるぶると震える身体を宥めるように撫でるヨシュアの手だけを確かに感じた。
「あれ、もういっちゃったの？」
　つ、とヨシュアの指が俺の下腹部をなでると、ぬるりと濡れた感触がある。
「ぁ……ごめ、なさ……」
　咎められるのでは、と咄嗟に謝罪を口にすると、想像とは正反対の優しい感触が達したばかりの屹立を撫でた。
「いいよ、我慢してたんでしょ？」
「ん、ん」
　優しく愛撫する手に合わせて、自然と腰が動く。少しずつ大胆に揺らしながら、先に噛み付いた首筋にもう一度触れたくなって、くちびるを落とした。
「それ、そんなに気に入ったの？」
　苦笑するヨシュアの吐息が耳をくすぐる。
「ん……」
「アトつけるの楽しいでしょ」
　落とされた声音は意味深で、顔を上げた。悪戯なスミレ色の瞳。
「僕の気持ちわかった？」
　つ、とゆびが心臓の上を撫でた。
「やぁぁっ……！」
「もうそろそろ、消えなくなってきたよね。もらっちゃうよってちゃんと言ったのに」
　笑いながら、何でもない顔でなぶり続けるヨシュアのゆびが信じられない。
「だめ、だめぇ……！　やだ、やぁ」
「わぁ、すごい声。そのうちここだけでいけるようになるんじゃない？」
「あ、さわ、なぃで……やだ、でちゃ……！」
　ヨシュアの指がそっとそこを撫でるだけで気がふれてしまいそうなくらい感じてしまい、中のものを食い締める粘膜が痙攣する。屹立がびくびくと跳ねて、もう出る、と思った。
「だーめ」
「ひっ……！」
　途端にヨシュアのゆびにぎゅう、と阻まれて、解放されない熱が身体を暴れまわるようだ。
「やら、よしゅっ……ひぅ……っ」
「今度は一緒に、だよ」
「ひ、は……あぁ……！」
　もう何も考えられずに、ただひたすらにしがみついてヨシュアの熱を感じる。
　優しく突き上げる無体な刺激に耐えながら、ギリギリまで射精を引き延ばされて頭の中が真っ白になった。

「ネク君、もう帰らないと」
　ヨシュアの手が、優しく肩を揺らす。
「んー……」
「時間遅くなっちゃうよ」
　重たいまぶたを上げるとヨシュアに腕時計を示されて、しぶしぶと寄りかかっていた身体を起こした。
「ちゃんと家まで送ってあげるから」
「……帰らないとダメか？」
「ダメだよ」
　子どものような物言いをする俺に、ヨシュアは困ったように苦笑する。
「そのときが来たらって言ったでしょ？」
「ん……」
　そのとき、がもうさほど遠くないことは分かっていたけれど、離れがたい気持ちでヨシュアの肩に頭を預けた。
「そのうちにすぐ、ネク君が嫌だって言っても一緒にいられるようになるから」
　成長の止まった身体。消えるまでの日数が徐々に長くなる胸の傷。恐ろしかった変化が今はただ嬉しいばかりなのだから、自分のなんと現金なことか。
「ああ」
　その日が一日でも早く訪れればいいのにと思いながら顔を上げると、ゆっくりと床に足を下ろした。



順調に奴隷エンドまっしぐらです。
高樹さんとのメッセからネタいただきました。ありがとうございます！　２００８０９２１

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