※性描写を含みます。ご注意ください。




「やだ……見るな……っ」
 握った屹立はあとからあとから先走りが零れて、ぐちゅ、と音を立てる。
 ベッドの上で、後ろに座るヨシュアに抱きかかえられた格好はまるで小さい子どもだ。その上、自分のものを握っている今の状況は、恥ずかしすぎてまともな思考など保っていられなかった。
 ヨシュアは俺のお腹に腕を回して、震えるゆびで自慰をする俺を見ているだけだ。
「ほら、ちゃんと手動かさないと……辛いのはネク君だよ?」
 すぐ耳元で囁かれる声に、びくりと身体が跳ねる。
 そんなことを言われたって、ヨシュアに見られているのがわかるのに上手くできるわけない。
「ばか……おまえなんか……っ」
 それでも先ほどからヨシュアは直接的なことは何もしてくれないから、拙いゆびを必死で動かす。
「なあに? 僕なんか……? あれ、びくびくしてるね。どうしたのかな」
 ヨシュアの視線を感じると、握ったものからまた先走りが零れた。
 どくどくと鼓動を持つものを見せつけているのに耐えられなくて、ゆるゆると頭を振る。
「ネク君やっぱり耳弱いね。首とか、脇腹も好き? あ、ここもね、触ってあげるといつも可愛い声出すんだよ」
「ゃ、ぁっ」
 お腹に回されていた手が滑って、そのまま腰骨をたどられる。ふるりと背筋から快感が走って、全部が全部、ヨシュアの言葉通りに反応を返す身体がうらめしかった。
 先ほどからヨシュアは思い出したようにそこここに触れて、俺の反応をいちいち説明する。
「ば……か、離せ、どっかいけ……!」
 そのたびにどんどん恥じらいは溶けて消えてしまって、自身を擦るゆびが止められない自分が怖かった。
「へえ、いいの? 僕がいないと上手に出来ないんでしょ? ほら」
 途端にお腹に回された腕をほどかれて、慌てていやいやと首を振る。
「やっ……! ち、ちが、離すな……っ」
「わがままだなあ。触って欲しいの? 欲しくないの?」
 くすくすと笑いながら、その口で耳たぶを噛まれる。びく、と跳ねる身体に、もうヨシュアに触られて感じないところなんてないんじゃないかと思った。
「さ……さわっ、て……ほし、っ」
 びくびく痙攣する身体で発する声も震えて、限界をうったえている。
 なのに。
「だーめ。ちゃんと、自分でいってごらん?」
「はぅ……! や、いやぁっ」
 ヨシュアはあくまで俺にやらせるつもりのようで、脇腹を撫でる手のあまりの切なさに咽び泣いた。
「ふふ、やらしいねネク君。もう僕がいないといけないんだ?」
 その手でぐりぐりと腰骨のへこみをいじられると、じれったい快感が腰に響く。
「そんなこと、ない……っや、ダメぇ……!」
 震える指先にもう力が入らなくて、上手く握れない手がずるずると滑る。
 達したいのに達せなくて、ぐずぐずと嗚咽を漏らす俺にヨシュアは溜息を一つつくと、やわらかく俺の手を包んだ。
「ほら、おててがお留守だよ。ちゃんと触って? 教えてあげたでしょ?」
 耳のすぐ後ろから落とされるヨシュアの声に、背中を包む体温。
 ぴったりとくっついた身体はそこから溶け出してしまいそうなのに、ヨシュアの手は再度いき方を教えるように俺の手を動かす。
 導かれながらあくまで感じるのは俺自身の手で、一番熱い場所にはヨシュアの手は触れてくれない。
 俺の手を使って扱くその指先が、恋しかった。
「あ……見るな、ゃだ……ッ」
「見られてると感じちゃう? いいよ、見ててあげるから。出してごらん」
 それでもヨシュアに導かれるままに動く手は止まらなくて、あっという間に上り詰める。
 びくん、と身体が跳ねると同時に白濁を吐き出す瞬間は、声も出なかった。は、は、と荒い息のままくた、とヨシュアに寄りかかる。
 そうするとヨシュアの細い髪の毛が首元をくすぐって、その感触に背筋が震えた。
 ひくひくと痙攣する身体を慰めるように、優しく頬に触れるくちびるに泣きそうになる。
「いたいの、とんでった?」
 からかうようにくすくすと笑うヨシュアに、びくつく喉ではまともに返事もできない。
 何も言えない俺に、ヨシュアは子どもに言い聞かせるような甘い声を出した。
「もう少し自分でやってみようか」
 溶け切った思考で、気づけば勝手な身体がこくり、と頷いていた。

 吐き出したばかりの精液でべたべたのゆびそのままに、自分で後孔を探らされる。
 手伝うように添えられたヨシュアのゆびと二本、まとめて押し込まれた。
「ゃ、いや……やぁぁっ」
 滅多に触れることのない部位の感触に、もやがかかったようだった頭が一気に状況を理解する。
 自分で自分の後孔にゆびを突き入れるなど、羞恥なんてものではなかった。
 いやいやと首を振っても、一度は頷いてしまった俺をヨシュアは許してなどくれない。
「そう、上手だね」
 ヨシュアのゆびにされるがまま動かしているうちに、段々と嫌がっていたはずの自分の指が勝手に動き始めた。
 後孔を犯すのは間違いなくこのゆびなのに、ぐちゅ、ぐちゅと音を立てる粘膜に締め付けられて、敏感な指先まで痺れるようだ。
 拙い自分のゆびと、緩やかにしか動かないヨシュアのゆびがもどかしくて、気づけば我慢できずに突き入れる本数が増えていた。
「こんな、の……ちが……」
 自分の意志を無視して動く身体に、溢れた涙にぼやける視界で首を振っても、ナカをかき回すゆびが止まらない。
 湧き上がる快感は強くなるばかりで、とめどなさに涙が零れた。
「違わないよ……気持ちいいんでしょ? ほら、もう三本も入ってるのに」
 ぐぐ、と押し込まれる長いゆびに、がくがく身体が揺れる。
「キモチよくない……やだ、見るなっ」
 ぎゅっと目を閉じても、中を暴れまわるゆびの感覚が鮮明になるばかりだ。
「きもちよくない? じゃあもう動かさなくてもいいかな」
 強がる俺への罰みたいに、ヨシュアの手が俺のゆびを押さえ込む。動かないゆびをもどかしそうに、内部がぎゅう、と狭くなって締め付けた。
 びく、びくとひくつく内部の感触だけが生々しくゆびから伝わる。
「やっ! ちが……っ、とめないで……やだ、許してっ……」
 哀願する言葉はもはや涙声で、発している自分でも情けないと思う。
「じゃあもう一人でできるよね? 見ててあげるから、してごらん?」
 あまりに無体な要求に一瞬思考が止まる。
 否やを唱えるひまもなく、ずるりとヨシュアのゆびが引き抜かれた。
「見るな……やだ、やだっ!」
 それでも制限がなくなったゆびは、俺の意思とは関係無く動き出す。
 涙でぐしゃぐしゃに濡れた頬を、ヨシュアの優しいくちびるが撫でる。
 そんな優しいヨシュアにいやらしい自分を見せつけていると思うと、また涙が出た。
「ネク君の手じゃ小さくて全部入っちゃいそうだね」
 穏やかに笑う声で吐き出される卑猥な台詞とのギャップに、気が遠くなる。
「やだぁ……見るなぁっ……」
 涙が頬を伝うたびに、ヨシュアの舌が優しく舐めてくれた。
 その感触はこんなにも優しいのに、見守るヨシュアはやっぱり優しくない。
 どうして今日はこんなに自分でさせるんだろう。
 もちろん、いつまでもヨシュアに任せっぱなしでいいなんて思ってはいないのだけれど。
 一人でも平気なように?
 ヨシュアがいなくても、大丈夫なように?
 勝手な想像に、震えがくるほど怖くなった。
「見られてるほうが感じるでしょ? 腰、動いてるよ。ネク君変態だもんね」
 酷い言葉に、それでも反応して収縮する内部にもはやヨシュアの思うとおりにならないところなんて俺の身体にはないんだろうと思う。
「そんなコト……ちが……っ!」
 何度も極まりそうな波がくるのに、うまく吐き出すところまでこぎつけられない。
 拙いゆびを噛み締める粘膜がびくびくと跳ねて、限界が近い。
「もういっちゃいそう? このまま自分でいくのと、僕のゆびでするの、どっちがいい?」
 一人は嫌だ。
 ヨシュアとじゃなきゃ、やだ。
「……よしゅ、あの……で……いき……」
 吐き出す息も絶え絶えで、うまく喋れやしない。
「聞こえない……もう一回言って?」
 ヨシュアなら、俺の頭の隅々まで覗くのだって容易いのに。
 意地の悪い言葉にもう強がりも保てなくて、泣きながら乞うた。
「いじ……わる……! ゆ、びじゃなくて……よしゅ……ヨシュア……の、が……欲しいっ」
 ひ、ひ、と情けない嗚咽が漏れて、泣きじゃくる俺のゆびをヨシュアは恭しく抜いてくれた。
「よくできました。ネク君いい子だったから、ちゃんとご褒美あげるね」
 幼子を褒めるように髪をすく手の感触ががたまらなくて、脱力しきった身体を叱咤して振り向く。
 そうするとすぐにヨシュアに口付けられて、夢中で舌を差し出した。
「ん、ゃっ……ふ、うゅ…………」
 くちゅ、と絡まる舌が立てる水音も、口蓋を舐められる感触も全部自分のものにしたくて、必死にヨシュアにすがりつく。
 唾液をこぼしながら離れるくちびるが名残惜しくて、ついばむように何度も追った。
「入る、よ」
 唾液でべたべたの顎を舐められる。ベルトを外して寛げたそこは既に勃起していて、嬉しくて胸がつまりそうだ。
 ヨシュアの腕が背中に回って、ゆっくり押し倒される。
 とん、と背中がシーツについてマットの反動を感じると、さきほどまで感じていたヨシュアの体温が冷えて少し寂しかった。
 正常位、というらしいこの体勢が実は一番好きだ。
 この体勢で挿入したときはヨシュアがたくさん動いてくれて、求められているようで安心する。
 もちろんヨシュアに気持ちよくなってもらうのに俺が自分で動くのはやぶさかではないのだけれど、やっぱりそれはそれとして嬉しいのだ。
 段々余裕がなくなるヨシュアの表情が見えるのも、お互いの鼓動が分かるくらいぴったり密着できるのも嬉しい。
 ただ、近すぎる距離は俺には嬉しくても、何か些細なことでヨシュアに嫌な思いをさせやしないかと少しだけ不安になる。
「ネク君」
 入れる間際に、名前を呼んでくれる声が好きだ。
 俺を安心させようとしてくれているのか、ただ求めてくれているのか分からないけれど、どちらにしたって俺には嬉しいばかりなのだから。
 ぐ、と入り込むヨシュアのものに、待ちわびていた内部が絡みつくような錯覚を覚えた。
「う、あぁ……」
 少しずつ開かれる感触に、ぶるぶると頭が揺れる。
 ヨシュアのものが全部入り込んだ瞬間、びくっびくっと身体が跳ねた。
 しばらく頭が真っ白になる。
 わけのわからないうちに徐々に視界が戻って、ヨシュアが動きを止めてくれても痙攣が止まらない。
「?」
 自分の身体が不安になって首をかしげると、ヨシュアがふわりと笑う。
 嬉しそうなその表情が不思議だった。
「ネク君、入れただけでいっちゃったの?」
 言われた意味がよく分からない。
「えっ……ぁ」
「しかも、ここから出なかったんだ?」
 くちゅ、とヨシュアのゆびが揺れる屹立に絡められる。
 震えるそこは白っぽくなった先走りがとろとろと流れてはいても、射精には至っていない。
「あ、やだ……さわんな、で……っ」
「ネク君、かわいい」
 そこを触られると過ぎる快感が怖くて、ゆるく首を振る。
 あまりよくわからないけれど、ヨシュアが嬉しそうだからいいかと思った。
「ヨシュアっ……よしゅあ……!」
 熱さも、痛みも、快感も、ヨシュアが与えてくれるものの全部が愛しかった。
 この幸せの、半分でもいいから、ヨシュアが俺で感じてくれたらいいのに。
「ふ……よしゅあ……き、きもち、いい…か……?」
「うん?」
「俺のナカ、きもち……ぃ?」
 滲む視界に映るスミレ色は細められていて、ほんのり赤らんだ目尻がキレイだ。
「ふふ」
「……?」
「ネク君は自分の抱き心地知らないんだよね。可哀想」
 こんなに幸せなのに、どうして俺が可哀想なんだろう。
「可哀想だから、教えてあげるね」
 言葉と共にヨシュアの手が腰を掴むと、そのまま突き上げられた。
「ゃ、あぁぁっ」
「ネク君の中、熱くて、やわらかくて、でも狭くて」
「う、うぅぅ」
「一生懸命ぎゅうぎゅう締め付けてくれて、かわいい」
「ゃ、だ……いうな……!」
「気持ちいいよ」
 落とされた言葉にそろそろと顔を上げる。
「きもち、いい?」
「うん」
「ほんとに?」
「本当に」
 見上げたスミレ色は熱っぽくこちらに向けられていて、慣れない表情にドキドキした。
「ネク君は?」
 こつ、と額がぶつかって、スミレ色の視線で見つめられる。
 もうそれだけで、どろどろに溶けてなくなってしまいそうだ。
「きもち、くて」
「うん」
「死んじゃ、っかも……」
 ふ、とヨシュアの笑う吐息を感じると、やわらかくキスされた。
 溶けてしまったらもうこんなキスをもらえないと思うと、それはとても困るけど、キスが出来るということはまだ溶けてしまってはいないらしい。
「ネク君は僕に殺されてばっかりだね」
 まったくだ、と思う。
「死んじゃったら、向こうで可愛がってあげるよ」
 それもいいかもしれないと思っても、ヨシュアのその言葉は嘘に違いないと何となく分かって悲しかった。


「あのさ」
 名前を呼ぶのが照れくさいときの俺のいつもの呼びかけに、ヨシュアが首をかしげる。
 抱き締められている今そうされるとこいつの髪が額を撫でて、少しくすぐったい。
「きょ、今日……なんで」
「うん」
「いつも言わないだろ……ああいうの」
 あまりに回りくどい言い方をしてしまったせいか、いつも察しのいいこいつでもさすがに不審そうな表情が解けない。
「す、好きとか」
 もごもごと口ごもりながら伝えると、ああ、と納得したように表情がゆるんだ。
 自分の言葉を伝えるのが下手な自覚はあるので、続きを促す視線にほっとする。
「お、おまえが……やさしいから……ど、どっか行っちゃうんじゃないかって、思って」
「ふうん……? 僕が?」
 興味深そうに寄越される笑いに、居心地が悪い。
 優しくされると不安になるなんて、どこのラブソングかと自分でも思うのだけれど。
 こいつの普段の行いのせいだ、ということにしておく。
「優しい僕はイヤ? 意地悪な方がいい?」
 そう言って繋がれる手の感触は、やっぱりどこまでも優しかった。
「ち、ちがう、どっちのヨシュアも……」
 好き、と言おうとしたけれど、気恥ずかしくてなんとなく悔しい。
「俺にもわかんない……」
「ふふ、ありがとう」
 濁して言ったのに、ヨシュアにはバレバレなようでやっぱり悔しかった。
「ネク君がさ、不安そうにしてたでしょ。この間」
「いつ?」
「熱烈に僕のこと押し倒してきて」
「あー……あーあー」
 思い出してしまった。あれは人生の汚点ベスト5に入れてもいいくらい、今考えると恥ずかしい。
「そういえば、あんまり言ったことなかったから。ちゃんと言葉で伝えないと、そろそろネク君に嫌われちゃうかなって思って」
 ヨシュアは何を言ってるんだろう。
 そんなのありえないと思うのに。
「俺に……」
「うん」
「嫌われないように?」
「うん」
 うなずくヨシュアの声は穏やかで、やばい、泣きそうだ。
「間に合った?」
 なのにヨシュアはなおも言葉をつむぐ。
 間に合ってない。全然間に合ってない。
「まだ僕のこと好き?」
 だってもう手遅れなのだ。ヨシュアなしで俺はいられないのだから。
 これ以上手遅れにするのはやめてほしいのに。
「ああ」
 俺のこんな一言だけで、そんな嬉しそうな目をするなんて反則だ。
「本当に?」
「ああ……」
 震える返事に、情けない表情まで見られたくなくてうつむいた。
 顔を埋めたシャツのヨシュアの匂いと、優しい声で胸が破裂しそうだ。
 やっぱりこいつはその声と言葉だけで俺の息を止めてしまえると思った。
 それでも、この胸をこんな風に痛ませるのも、優しく撫でてくれるのも、きっとずっとヨシュアだけなのだ。
 この感情のすべてを明確な言葉で伝えられないことが、ひどくもどかしい。
 何も言葉なんて出てこなくて、ただこの気持ちが少しでも伝わればいいと思いながら、繋いだ手をぎゅっと握った。



かっとなってやった。いちゃいちゃしたらいいと思った。今はすっきりしている。
高樹さんとのメッセからたくさんネタいただきました。ありがとうございます! 20080820


→もどる