※性描写を含みます。大人×子どもですのでご注意ください。 抱き上げられて立ち上がったものの、すぐに膝が崩れてしまって歩けたものじゃなかった。 呆れたように嘆息したヨシュアに米俵のように担ぎ上げられても、文句の一つも言えやしない。 俺を肩に乗せたまま軽い足取りで歩くヨシュアの背中はやっぱり俺の知らないもので、ドキドキしてしまったのは本当に不可抗力だと思う。 それにしても、この状況は、はっきり言って異様だ。 スーツ姿の男に担がれたまま、渋谷の街中を歩いている。 RGからこちらの様子は見えないとはいえ、行きかう人々が自分には変わらず見えているのだ。 宇田川町の辺りはまだ我慢できたものの、スクランブル交差点に差し掛かった辺りでさすがに文句の一つも言いたくなる。 見慣れた人ごみの中での自分のこの体勢は、正直ないと思う。 いつも歩き回るのを面倒くさがっていたこいつがわざわざこんなことをするのは、十中八九嫌がらせだ。 「おい」 「なあに?」 オトナの姿でもあのときと変わらず柔らかい口調で話すこいつは、慣れないせいかなんだかアンバランスに感じる。 それでもああ、ヨシュアなんだな、と思ったらすぐに気にならなくなった。 「なんでわざわざ街中歩くんだよ。なんかサイキックとかあるだろ。飛べるやつとか」 「あるよ?」 平然とのたまうこいつの辞書には、悪びれるという単語は載っていないに違いない。 「向こうじゃなかなかできない体験だろうから、堪能させてあげようと思って」 やっぱり嫌がらせかよ! 見えないこいつの顔は、それはそれは楽しそうに破顔しているのだろうことが容易に想像できて、それでも自分の両足で立つこともできない俺には、この公開羞恥プレイをひたすらに耐えるしか術がない。 やっぱり嫌なやつだ、とせめてもの抵抗に力の入らない手で背中を叩いた。 「それで? ここまでついてきて、ネク君はどうしたいのかな」 渋谷川を越えた辺りから、やけに身体が火照っていることに気がついた。 ヨシュアに質問したところ、俺の肉体ごとUGに合わせて変換されているため、今ここにいる俺は霊体だけでなくちゃんと肉体もついてきているのだと言う。 久しぶりに触れた(とはいえ、ゲーム中もめったに触れることはなかったのだけれど)ヨシュアの体温に興奮してしまったのだと分かっても、それを自分で認めるのはあまりにも恥ずかしすぎる。 ミッションの来ないまま日が暮れて、路地裏に引っ張りこまれたあの日をどうしても思い出してしまう。 訪れない一日の終わりにヨシュアが気まぐれを起こして、俺の身体を無理矢理開いたあのときは、嫌でいやで仕方なかったはずなのに。 まだ記憶に鮮明に残る審判の間で、玉座に腰掛けたヨシュアの膝に座らされているこの状況も、比べられないくらい恥ずかしいのだけれど。 「ネク君」 「っ……」 命令するような呼びかけに、それだけで肩が跳ねた。 変だ。こんなの、絶対おかしい。 「何びくついてるの? 怖くないよ」 ここに来るまでに、一人も死神に会わなかった。どこに行ったのかとか、こいつは一人で大丈夫なのかとか、そもそもここに俺なんかを連れ込んでいいのかとか、些細な疑問が頭をよぎる。 「今のところ近いゲームの予定はないから、みんな休暇を取ってるよ。RGあたりで遊んでるんじゃない?」 頭の中を読んだような解答に驚いた。 でも俺は今参加者バッジなど持っていないのだから、ヨシュアが俺をスキャンするなど造作もないことかもしれないと納得する。 それよりも、ヨシュアが喋るたびに震える身体のほうが、今の俺には大問題なのだ。 ヨシュアは俺に罠を仕掛けたのだろうか。俺の身体に何かしたんだろうか。 仕掛けるとしたら五日目の、あの夕闇のまぐわいでと考えるのが自然な気がする。 とはいえ、こいつが俺を騙したことなんて数え切れなくて、明確にいつから、とか、どんな、とか、そんなの分からない。 分からないのに、身体がうずいてたまらなかった。 問いかけられても、ヨシュアの望む答えが見つからない。 「ゃ、っ」 何も答えない俺を嗜めるように、ヨシュアの指先が頬をなぞる。 そのまま無防備な耳のふちをなぞられると、勝手に声が漏れてしまった。 「僕が怖い? ……なにもしないよ、今はね」 くすくすと笑う声に、頭がくらくらする。 「んっ……い、今はって……」 誘導されてるのか、って思ったけど、言わずにいられなかった。 「じゃ、じゃあいつするんだよ」 びくつく身体はまぎれもなく俺のものなのに、もうヨシュアの言うことしか聞く気がないみたいだ。 悔しくて、せめてもに精一杯にらみつけた。 「して欲しいって言うまでかな?」 おどけたように飄々とのたまうヨシュアは楽しそうで、明らかに遊ばれている。 「ふ、ぅ……そ、そんなの……言うわけなぃ、だろっ」 もう一度頬を滑った指が今度は震えるくちびるを撫でて、それだけで息が上がるのが自分でも分かった。 キレイな長いゆびは記憶の中のものより骨ばっていて、大きな手のひらはヨシュアじゃないみたいだ。 勝手に、ドキドキと鼓動が早くなる。 ヨシュアの膝にまたがるように乗せられたこの体勢では、くっついているあちこちから熱くなるようで、どう逃げていいのか分からない。 「そう……じゃあ、待とうか」 呟くと、片手で抱え込むように腰を押さえられて、余計に体温が上がった。 逃げられない。 「ぅ、やだ……っ離せよ……! 絶対言わないっ」 抵抗しようとしても、ろくに動かない身体では身じろぎするのが精一杯だ。 ぎゅう、とヨシュアの上着を掴んで、皺にしてやるくらいしかできない。 「別にいいよ? 言うまで待つだけだからね」 首をかしげる仕草は、今の姿形では全然可愛くない。 子供の姿でも、オトナの姿でも、こいつには見下ろされてばかりだったのに、今この体勢ではわずかにヨシュアのほうが見上げる形になる。 慣れない視線に戸惑った。 ただでさえ整った、元々のこいつの顔にだってドキドキするのに、あどけなさの抜けたオトナの表情は全然見慣れなくて、どうしていいのかわからなくなる。 「っ、あんま、見んな……! なんか、お前の顔、やだ……」 せめてもの抵抗にぎゅっと目を瞑った。 本当はこいつの顔ごと押し退けたかったのだけれど、腕を上げる動作すら思う通りにならないのだ。 「ひどいなぁ、僕はずっと見てたのに」 呟かれた言葉は意味深で、今ののぼせきった頭ではまともな思考もままならない。 ゲーム中に、代理人として監視していたことだろうか。それとも。 それとも、ゲームが終わったあとも見ていてくれたんだろうか? くすくすと顔に近づく気配に、漏れる吐息がくちびるにかかる。触れそうで触れない距離が、危うい。 すでに思考はもやになって、うやむやのまま消えた。 「ゃ、やだ……! くすぐった……っ見るなってば!」 ヨシュアに見られていると思うと、ぞくぞくと変な感覚が背中を駆け上がる。 ふるふると首を振りそうになったけれど、きっと今動いたらくちびるが触れてしまいそうで、動けなかった。 こんな感覚、知らない。どうすればいいのか知っているのは、たぶんヨシュアだけだ。 「そんなにイヤ? そんなに……コドモの僕のほうがいい?」 困ったように呟かれた声音は聞きなれなくて、そっと目を開けると、視界に入る表情も見慣れないものだった。 触れそうだったくちびるが離れる。 「えっあ、ちが……や、じゃなくて……っど、どっちもお前だろ……!」 その仕草に不安になって、慌てて抱きついた。 気だるい腕も、ヨシュアの都合のいいように動くみたいでとても癪だ。 「うん、そうだよね、ありがとうネク君」 あっさりと放たれた言葉に、騙された、と思う。 それでも「お礼だよ」と優しくキスをされて、与えられた感触になけなしの力も抜けてしまった。 「ん……別に、礼言われるようなことじゃ……むぅ」 照れ隠しの言葉も遮るように、繰り返しくちびるが触れる。そのたびに、震える身体が恥ずかしかった。 それでもヨシュアのキスは舐めるようについばむだけで、先に進もうとしない。 腰ごと抱え込んだ腕は何もしてくれなくて、遊ぶ指先がいたずらに耳たぶを撫でるだけだ。 「ん、んく」 うずく身体をきっとヨシュアはとっくに分かっているはずなのに、気付かない振りをする。 どうしていいのか分からなくて、見下ろす形になる今の体勢にも戸惑いながら、ただヨシュアの瞳を見つめた。 子供のときも、オトナの今も、変わらないスミレ色。 「どうしたの? 僕の顔に何かついてる?」 わざとらしい言葉だ。 そんな風に言われて素直になれるわけないって、全部こいつは分かってるんだ。 「な、なんでもな……」 咄嗟に口をついた言葉に、後悔する。 そうじゃなくて、そんなことが言いたいんじゃなくて。 「ぅ、よ、ヨシュアっ……」 じんわりとまぶたが熱くなるのが分かった。嫌なのに、勝手に視界が潤む。 もう、ヨシュアに触れているところも、触れていないところも、どこもかしこも限界なのだ。 「なに? ここにいるよ? ……どこかツライ?」 楽しそうな吐息が首筋を撫でて、そのままやわらかい部分に噛み付かれる。 「あっ……ゃ、やだ……! も、もぉ……っ」 びくりと震える身体は、もう俺の言うことなんて聞きやしない。 もうとっくに熱くなっている股間をヨシュアに押し付けるように、勝手に腰が揺れた。 いやいやと首を振っても、ヨシュアはそ知らぬ顔で振舞う。 「強情だなぁ、ちゃんと言わないとわからないよ」 気が付くと抱え込まれたまま服の裾から捲り上げられていて、骨ばった手のひらがゆっくりとお腹を撫でた。 ひくりと震える腹筋をからかうように、脇腹から、へそから、何度もゆびが行きかう。 「ふっ……う、うぅ……も、ぃや……!」 あまりに焦れったい無体な感触に、漏れる声は嗚咽交じりになった。 「っ、し……」 「し?」 「し、したぃ……」 やっと口にした声は消え入りそうなほどで、あまりの情けなさにそれ以上つむぐ言葉がわからなかった。 「うぅ……やだっ……よしゅ、ぁ……ふ」 言葉にならない声は、ただの意味のない音になる。 その音を慰めるように、ふんわりとやわらかいキスが降りた。 「よく出来ました」 優しい温度に、不明瞭な視界が余計にぼやけた。 子どもは堪え性がないね、と笑う表情から目が離せない。 「よ、しゅあ」 「ご褒美になんでもしてあげるよ?」 やっと与えられた許しに、縋るようにヨシュアの首にしがみついた。 「も、もっと、キスして」 再び降りてきたくちびるに無意識に口を開くと、今度こそするりと舌が入り込んでくる。 くちゅ、といやらしい音が鼓膜に焼きついて、咄嗟に目を瞑った。 視界を遮ると歯列を撫で、口蓋を舐めるヨシュアの舌の感触が余計に鮮明になって、身体が熱い。そのたびにヨシュアの身体に擦り付けるように勝手に腰が動いた。 「ん、っんぅ」 「キスだけでいいの……?」 息継ぎの合間の意地悪なヨシュアの言葉に、強がれる余裕はもうなくて、ふるふると首を振る。 閉じていたまぶたを上げると、細められて淡い色の睫毛が縁取るスミレ色が、すごくキレイだ。 「いいよ、おいで」 今の俺はヨシュアに命じられたなら、渋谷川に飛び込むことも厭わないかもしれないとか、馬鹿なことを考えた。 「んぅ……ふ、ぁ」 ヨシュアの指が中を動き回るたびに、ぐちゅぐちゅと水音が響く。 何もないに等しいこの部屋は無駄に広くて、些細な音も全部反響してしまうらしい。 あまりに恥ずかしいその音を立てているのが自分の身体だなんて信じられない。 せめてもに漏れる喘ぎ声は堪えようとしたのだけれど、ヨシュアに咎められてはそれも叶わなかった。 響く声も水音も、ずぶずぶと頭の中を浸食して、段々と麻痺してくる。 ヨシュアのゆびにされるがままに一度いかされたのが不満で、「お前は?」と視線で責めると、分かってるよと視線で返されて、前を寛げてくれた。 取り出したヨシュアのものと、俺のを大きな手がまとめて掴んで、一緒に擦られる。 「あ、はぁっ……ぁ、やあ……!」 ヨシュアのものに擦れる感触と、先端をくすぐる指先がたまらない。 前から後ろから攻め立てられて、湧き上がる快感のあまりの切なさにふるふると頭を振って耐えた。 はぁ、はぁと荒くなる息が整う暇もなく、ヨシュアに手を取られる。 「ネク君も触ってみる?」 否とも応とも言えぬまま導かれて、熱い屹立に手を添えさせられた。 望まぬ行為のはずなのに、ヨシュアと自分のものを擦り付けるように勝手に指が動く。 「ぁ……やだ……お、っき……」 どちらのものとも分からない先走りが握る手を濡らすたび、ぎゅうと内部のゆびを締め付けてしまう。 がくがくと震える滑稽な身体を、ヨシュアは笑ったりしない。 そんなヨシュアの晒された下肢を目にするのはひどく悪いことのように思えて、見たらいけないと思いながら目が離せなかった。 中途で止める結果になったものの、一度は受け入れた行為なのでこれからどうするのかは分かっている。 望んだのも、自分だ。 ただ、初めてでも何とかなったあのときとは少しばかり話が違う。 あのときのヨシュアは子供の姿で、今のヨシュアは本来の姿なのだろう、オトナの形をしている。 まあ、その、大きさも当然違うわけで。 正直な話、規格外だと思う。 そもそも今のヨシュアのゆびでさえ、咥え込むそこがぎちぎちと音を立てそうなほどなのだ。 ゲーム中に一度だけ味わった子ども姿のヨシュアの細いゆびなど比にならない。 なら、その屹立も、比にならないだろうことは想像に易いわけで。 ずる、と抜かれるゆびに身体が震えた。 「ネク君、もういい?」 「ぁ……よ、ヨシュア」 自分の想像に不安になって、行為とは裏腹に穏やかな瞳を見つめる。 「怖い?」 俺の考えなどお見通しなのだろうヨシュアは、優しく諭すような声をくれた。 「す、少し……」 本当は少しどころでなく怖いのだけれど、ヨシュアと繋がりたい気持ちも紛れもなく本物だったので、曖昧に濁すしかできない。 安心させるように、ヨシュアのくちびるが額に触れる。 ゲーム中に肌を重ねたときは完全に無理矢理だったので、こんな風に優しく触れるヨシュアは今こうしていなければ知らなかったんだと思うと泣きたくなった。 「ネク君の腰、こんなに細いから心配だけどね……大丈夫だよ」 相性は悪くないと思うし、と呟く声音は聞きなれないものだ。なんだかヨシュアが優しい。 やわらかい声音に、詰めていた息を吐き出す。 了承の意を込めて、ぎゅ、とヨシュアの首にしがみついた。 「息、詰めないでね」 かく、と笑いそうになる膝を支えるように腰を掴まれると、ぐ、と熱が押し当てられる。 うずく内部を割り開かれる感触と共に、腰が落とされた。 「あ、あぁぁ……ッ」 予想をはるかに上回る熱と痛みに、自分のものじゃないような声が出た。 がくがくと揺れる背中を、宥めるようにヨシュアの手が撫でる。 「ネク君、ちゃんと息吸って、吐いて」 呼吸もままならない俺にヨシュアは口付けてくれて、なんとか楽になるように息を吐き出す。 それでも力を抜くことができなくて、身体を支配する痛みにどうしていいのか分からなかった。 大丈夫? と視線で尋ねるヨシュアに、全然大丈夫じゃない、とぶるぶる首を振る。 平気な顔をしているけれど、俺がこんな有様ではヨシュアだって痛いはずなのに。 と、ヨシュアの手がするりと、俺の服を胸の上まで捲り上げた。 「ネク君、知ってた?」 こんなときに、世間話でもするような声音に眉を顰める。 「これ」 胸元を撫でるゆび。 涙でぼやける視界を叱咤するようにまばたくと、指し示された場所を見て、驚いた。 見覚えのない傷アト。火傷、とは少し違うだろうか。 ヨシュアが愛おしそうに傷アトを見つめる。 「ここ、ずっと痛かったでしょ?」 痛かった。ヨシュアのことを思うたびに、胸が痛んだ。 撃たれた、心臓が。 「UGの君には残しておいたんだよ」 ゆびが、ゆっくりと傷アトを撫でるのを見ているしかできない。 「ぃ、あ、あぁッ」 途端に跳ねる身体と、傷に触れられるたびにずるりとヨシュアの熱が入り込む生々しい感触。 限界まで広げられる内部に、いやいやと首を振る。 「ゃ、いやぁ……! は、入っちゃぅ……はいっちゃ」 「ほら、大丈夫だって言ったじゃない」 にこりと笑うヨシュアのくちびるが傷に触れて、舐められる。そのまま歯を立てて愛咬するヨシュアに、気が狂いそうになった。 「やぁぁ……! っそこ、さわ、な……」 「触って、でしょ?」 「い、ぅや……ぁっこわれ、ぅ……ぁああ!」 抵抗しようとするたびに傷に爪を立てられて、力の抜け切った身体の最奥まで貫かれた。 びく、びくと痙攣する身体が信じられない。 「ゃ……ぁ、あ」 「壊れなかったね」 宥めるように、ゆっくりとヨシュアの手が背中を撫でる。 まともに声も出せないのに、返事などできなかった。 「ほら、この部屋、渋谷の風景が一望できるんだよ」 そんなの、知ってる。ゲームが終わるたびに、この部屋で目覚めたのだから。 相変わらずヨシュアの口調は天気の話でもするかのような暢気さで、行為とのギャップに頭がついていけない。 「自分が守った街に見下ろされながら犯されるのって、どんな気分?」 最悪だ。 「自分が撃たれた場所で犯されるのって、どんな気分?」 最低だ。 反射的に閉じていた目をゆっくり開くと、視界に写るスミレ色があまりにまっすぐ俺のことを見ていて、涙が出た。 失った意識を取り戻したとき、相変わらず俺はヨシュアの膝の上に乗せられていた。 違うことといえば、乱された衣服はきちんと整えられていて、先ほどとは逆に後ろから抱えられるようにされていたことくらいだ。 俺を子供のように抱えるヨシュアの挙動に不信感を募らせつつ、しばらくされるがままにぐったりしていると多少冷静さが戻ってきた。 あまりに度が過ぎる自分の身体の変化と、それまでの羞恥が一気に蘇ってきて暴れだしてしまいそうだ。 オトナ姿のヨシュアの波動に自分が慣れてきたのか、ヨシュアが多少抑えてくれているのか分からないけれど、身体も少しばかり動くようになったが、暴れられるほどではない。 悔しい思いをしながら、その代わりと言わんばかりに俺の身体に起きたあの変化について問い詰めた。 が、当のヨシュアは飄々としたものだ。 「さあ? 久しぶりのネク君はずいぶん素直で、可愛かったけどね」 意味が分からない。 僕は何もしてないよ、と言われたって信じられるものか。 「んー、推測だけど。一度僕を受け入れてることと、この傷が僕の波動に反応しちゃったんじゃないかな」 もっと意味が分からない。 言葉と一緒に服の上から傷を撫でられて、跳ねる身体が悔しい。触るな、と悪戯なゆびを捕まえてぎゅっと握った。 そもそも最中の記憶を掘り起こせば、こいつの言い方から推測するに、この傷が残っているのはこいつのせいじゃないか。 なら、どう考えても自分の失態はヨシュアのせいなのだけれど、文句を言ったところで通じる気がしなかった。 もうこの件については諦めることにする。 そもそも今まで散々放っておいた俺に、なんでわざわざあんな風に会いに来たんだ。 「だって僕に会いたがってるくせに、いつも宇田川町にいるんだもの。CATと僕と、どっちが好きなの?」 あまりに子供じみた答えに、困る以外に術がなかった。 もしかして、それだけの理由で誘拐の真似事をしたのだろうか。 いや、まあ、俺が連れて行けといったのだから合意の上なのだけれど。 内心呆れてしまったものの、嫌な気持ちも、怒る気もしなくて、この気持ちを正直に表すならば『嬉しい』以外に言いようがない自分は、もう本当にバカなんだと思う。 「それで? 知りたいって言ってた僕のこと、少しは分かった?」 自分の単純さ加減に軽く落ち込んでいると、そんなことは知らないそぶりでヨシュアが楽しそうに問いかける。 あのときの、俺の言葉を反復するヨシュアに胸が高鳴った。覚えていてくれたのか。 この程度のことで簡単に浮上する自分は、いやはや、まったく単純以外に言いようがない。 そのスミレ色を見れば、ヨシュアが望んでいるだろう答えはすぐに分かった。 俺はただそれを、ヨシュアの望みどおりに口にするだけだ。 「全然。分かるわけないだろ」 お腹に回された腕をぎゅう、と抱き締めれば、どうやら正解だったようで、褒めるように優しく髪を撫でられる。 「そう」 満足そうな声音に、俺も嬉しくなった。 「なら」 絶対的な強制力を持つ柔らかなその声音は、まぎれもなく命令なのだろう。 きっと、これからもずっと俺を縛り続けるものだと確信した。 この、川の向こう側で。この、奈落の底で。 「また、ここにおいで」 俺が落ちてくるのを、ヨシュアはいつだって待っていてくれるのだ。 高樹さんとのメッセからネタいただきました。ありがとうございました! 20080802 →もどる |