さらりと流れる小動物のような茶色い髪が、僕の胸の中で揺れる。
「バカ……」
 頬を涙で濡らしたまま、それでもいじらしく僕の胸に擦り寄ってくるその優しい感触を慈しむつもりで撫でた。彼のヘッドフォンはあっさりと僕に明け渡してしまったくせに、僕が撃った傷についてはあそこまで駄々をこねるなんて、本当に彼の優先順位はどうなっているのかわからないと首を傾げてしまう。いや、わからないと思っているわけではなく、単に認めたくないだけなのだが。彼の優先順位の一番上に、自分がいるということを。
「ヨシュアのばか」
 それは僕にとってとても好ましくないことで、彼自身にとってもいい影響は与えないだろうと思う。他の何もかもを差し置いて僕を求める目の前の子どもを、ひどく愛しく思ってしまう自分が一番好ましくないというのはわかっているのだけれど。
 それでももう少し、あと少しと彼の傍にいることを止められない僕を、ネク君はいつかその手に握り締めた銃で糾弾してくれるときが来るだろうか。
 机の上に置かれている、彼によく似た小動物のぬいぐるみは彼と同じように僕の弾丸に撃ちぬかれてあっさりと落ちてしまったけれど、安全な箱に包まれたまま恐らく傷一つない姿で僕たちを見つめている。
「……バカヨシュア」
 断罪のときは来るだろうか。そのときを、僕はきっとずっと待っているのだけれど。



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