※性描写を含みます。ご注意ください。




 ヨシュアの部屋は予想通り、というかなんというか、何もなかった。
 お情け程度に机やら椅子やらの家具と、大きなベッド。あまりにもイメージ通りの様相に、なぜか残念に思うのは人間の性だろうか。
「つまらない部屋でごめんね、何かあるとすぐ街まで出ちゃうからさ。けど、ベッドの寝心地は保証するよ?」
 そう言って優しく下ろされたベッドの上は、たしかにさらさらのシーツも、ふかふかのマットも、とても気持ちよかった。
 RGの人間とは休息の取りかたが違うというヨシュアのベッドは、あまり使われていないのかもしれない。
 それでも微かにヨシュアの匂いがして、少しだけ興奮した。
 なかなかベッドに上がってこないヨシュアの様子を伺うと、片手に提げたままだったヘッドフォンを机の上に置いていたようだ。壊れ物を扱うような手つきは、それだけでやっぱり俺を嬉しくさせた。
 それから一緒にベッドに乗り上げたヨシュアは、脱いだ背広をその辺りに放り投げる。そのまま優しく前髪を梳いて、口付けてくれた。我慢できずに口を開くと、今度はすぐに舌を絡めてくれる。
「ん、んー……っ」
 くちゅ、と互いの唾液でいやらしい音が立つたびに、頭の奥がじんと痺れるように熱くなった。舌を伸ばしてヨシュアの歯の裏を舐めると、お返しみたいに舌を甘く噛まれる。そのまま口の端をべろりと舐め、くちびるでくちびるを食まれると勝手に唾液が零れた。
「ふ、ぁ……」
 一端離れたくちびるを追いかけようとすると、ヨシュアのゆびが零れた唾液を掬う。促されるままに舐め取って、飲み込んだ。
 そのままヨシュアの手を捕まえて、ちゅ、ちゅ、と吸い付く俺のくちびるを、ヨシュアのゆびが優しく撫でる。それだけで熱くなる身体を持て余しているのに、すげなくヨシュアのゆびは離れてしまった。
「靴くらいはちゃんと脱ごうか」
 くすくす笑いながら、ヨシュアの手がしゅる、と俺の靴紐をほどく。丁寧な手つきで両足分脱がせ、床に落とした。ヨシュアのことだから、自分の靴はキレイにそろえて脱いであるんだろうと思うと、なんだかおかしかった。
 丁寧な手つきそのままに靴下も脱がせられて、なんだか自分がまるで小さな子どものようで恥ずかしい。
 でもその優しい指先に、きっとヨシュアは今世界で一番優しく靴下を脱がせられるんだろうな、などとよくわからないことを考える。照れ隠しだ、うん。
 再び覆いかぶさってくるヨシュアに、ねだるように手を伸ばした。首筋に巻きつけた腕でぎゅっとしがみつくと、擦りつけるように勝手に身体が動く。
「ん……ヨシュ、ア……」
 そんな俺をあやすように、ヨシュアの手がするすると裾から服を捲り上げた。脇腹を撫でる手に、それだけでむずがゆい感覚が走る。
 だから、すでに硬くなっている胸の突起にゆびが触れれば、簡単に身体が跳ねた。
「あ……ゃ、やだっ」
 爪の先でくすぐるようにされたかと思えば、ぎゅ、ぎゅ、と強く摘まれる。そのたびにびくびく跳ねる身体が恥ずかしかった。
「ふ、ぅ……そこ、やっ」
 じれったい快感に身体の疼きは強くなるばかりで、いやいやと首を振る。それでも捲れた服から丸見えのそこを、見せつけるようにゆびを動かすヨシュアは意地悪だ。
「ゃ、いやぁっ……」
「いや? じゃあ、他にどこか触って欲しい?」
「ん、んん」
「ちゃんと教えて」
 耳元で囁く声が鼓膜を震わせるだけでどうにかなりそうなのに、外耳を舐める舌の感触に責められれば、もう抵抗なんてできなかった。
 震えるゆびで、意地の悪いヨシュアの手首を掴む。ちら、と様子を伺うと、ヨシュアはただ楽しそうに俺の挙動を促して、見つめているだけだ。
「こ……ここ」
 その視線に晒されている羞恥に耐えながら、掴んだ手を熱くなった下腹部にぐっと押しつけた。
 大きな手のひらに、ドキドキとうるさい心臓の音がヨシュアに聞こえてしまわないか心配になる。その指先が、くすぐるように服の上を撫でた。
「ここ?」
「あっ、ぁ……」
「ここ、触って欲しいの?」
「ぁ、さ、さわって……っ」
 はしたない自分を情けなく思いながらもこくこくと頷くと、ふふ、と笑う吐息が余計に羞恥を煽る。
「まだ何もしてないのに、こんな風になっちゃったんだ」
 くすくすと漏れる笑声が頬を撫でるだけで、先ほどから跳ねる鼓動が破裂してしまいそうだった。
 それなのに、やっぱりヨシュアのゆびは悪戯に形をなぞって動くだけだ。
 もうどうしていいのかわからなくて、はぁはぁと勝手に荒く漏れる息ばかりがうるさく聞こえる。
「や、だ……ヨシュアっ」
「なあに?」
「ちゃ、ちゃんとさわって……!」
「触ってるよ?」
 優しく囁くヨシュアはやっぱり意地悪で、下肢に響く快感はあまりにも切なくて、ひくつく喉から嗚咽が漏れた。
「ひ、ぅ……っも、ゃ……ぬ、脱がせて……」
 目尻に浮かぶ涙を優しい舌は拭ってくれるのに、その持ち主のくちびるから放たれる言葉は全然優しくない。
「僕が脱がせるの?」
「ふ、うぅ」
「触って欲しいところ、ちゃんと見せてごらん」
 無体な言葉と共に、ヨシュアの手はあまりにも簡単に離れてしまった。ひどい仕打ちに、思わずヨシュアの顔を見上げる。
 それでもヨシュアはその端正な顔に微笑を浮かべたまま、何も知らないような瞳で首をかしげるだけなのだ。
「ふ……ん、んく……」
 もうヨシュアの言葉に従う以外の選択肢は俺にはなくて、泣きながら自分のベルトに手をかけた。向けられるヨシュアの視線を感じて、ゆびが震える。
 それでもやわらかく頬を撫でる手の感触に勇気を得て、なんとかもつれる手指を動かした。ベルトを外して、ボタンもファスナーも追いやった。
 そのまま下着ごとゆびをかけて、ずり下げる。あらわになったそこがスミレ色の視線を感じて、とろりと雫を垂らした。
「う……よしゅ、あ」
 あまりの羞恥にもはや、ひ、ひと情けなく漏れる嗚咽も隠せなかった。震えるくちびるに、ふわ、とヨシュアが優しくキスをくれる。
「ちゃんとできたね、いい子だ」
「あ、っぁ……」
 今度は焦らすことなく、間違いなく屹立を掴む手のひらに、あっという間に上り詰めた。ヨシュアがゆびを動かすたびに、ぐちゅぐちゅと先走りが絡まって音を立てる。
「あっ、やだ、も……でちゃっ」
「いいよ、ネク君いい子だったから。出して」
「は、ぅ、うー……あ、あぁ……!」
 促されるままに、吐き出した白濁がヨシュアの手を汚す。
 びく、びく、と跳ねる身体は自分のものではないようで、荒くなる呼吸に何度も翻弄されながら、どうにか大きく息を吸い込んだ。
 射精の余韻に震えながら必死で息を整えていると、当たり前のようにねばつく手のひらを舐めるヨシュアに泣きたくなった。
「な、なんでいつも……舐めんなって言ってるのにっ」
 震える声で不満をうったえても、ヨシュアは平気な顔で首をかしげる。
「なんでって?」
「そんなの、き、きたなぃ……だろ」
「んー、ネク君のだから? それに、別に汚いことないと思うけど」
 全然答えになってないと思うのに、あまりに自信満々に言われて俺のほうが変なのかと疑いそうになった。
「ネク君の生きてる証でしょ?」
 何でもないように言われた言葉に、なぜだか胸が苦しくなる。
 すでに生き人ではないこいつも持つそれは、本来の目的を今後果たすことのないだろうそれは、どんな意味があるんだろう。ヨシュアはどんな気持ちでそんなことを言うんだろう。
 でも、目の前で笑うこいつを見ていると、そんな本来の目的なんて仰々しく考えずともいいように思えた。目的なんて、きっとその時々で変えていいに違いないのだ。
 それは単純に、こいつが気持ちよくなってくれた証だと思ったって、何もバチは当たらないと思う。
 だから、自分だけがよくなってしまった今の状況が申し訳なくて、恥ずかしくて、おずおずとヨシュアの下肢に手を伸ばした。
「ネク君?」
「ヨシュア、も……」
 あまり器用ではない手で対面にあるベルトを外すのは少し手間取ったけれど、なんとか目的を果たすことができた。
 ヨシュアのそこに手を伸ばしていると、覆いかぶさるこいつのネクタイが垂れて、ぴたぴたと頬を叩く。
 それをむずがる様子の俺を見かねたのか、苦笑したヨシュアの手でワインレッドのネクタイは襟元から抜き去られた。
 そのことに気をよくして、ウエストのボタンを外しファスナーを下ろす。少し躊躇したけれど、下着もずらしてヨシュアのものを取り出した。
 わずかに熱くなっているそこは、多少覚悟はしていたものの、いつもの様子よりだいぶ……大きい。当たり前といえば当たり前なのだが。
 少しの動揺が伝わったのか、ヨシュアが苦笑する。
「やめたくなった?」
「な……や、やめられないって言ったのおまえだろ」
「うん、やめないよ。だから、ちゃんと責任とってね?」
 わざとらしい言い方に、なんとなく緊張していたのがばかばかしくなる。ヨシュアの言葉通り、遠慮なく触ることにした。握って、擦っての拙い動きながらなんとかヨシュアのものに集中していると、ひやりとした感触が後ろに触れる。
「ん、っ……」
 広げた足を持ち上げられて、入り口をほぐすようにぬるぬるとしたものが動き回った。俺が先ほど出したものをまとった、ヨシュアのゆびだ。そのままぐぬ、と入り込むゆびに、少しだけ息が詰まる。
「ふ……っなんか」
「うん?」
「ヨシュアの、ゆび……いつもと、ちが……」
 呟いた言葉に、ヨシュアがおかしそうにくすくすと笑う。
「そりゃ、違う身体だからね」
 子どもの姿のヨシュアは、女の子のようにキレイな手をしていた。今俺の額に貼りついた前髪を梳くヨシュアの手もやっぱりキレイだけど、骨ばっていて男くさい。
 その長いゆびが俺の中を探っているものだと意識すると、嫌でもドキドキした。
 一生懸命ヨシュアの屹立を握っていても、ヨシュアのゆびの太い節が出入りするたび、探るゆびの本数が増やされるたびに息が荒くなって、手が止まる。
「ふ、うゅ……やぁ……っ」
 内部で動くヨシュアのゆびをぎゅう、と締め付けながら、勝手に腰が揺れそうになるのを必死で堪えた。慣らされた身体は今のヨシュアのゆびでも物足りなくて、あさましい自分に泣きそうになる。
「んっ……んぅ……!」
 それでもすぐに我慢がきかなくなってしまって、焦れたように動き始める腰が恥ずかしかった。
「物足りなさそうだね」
 からかうように落とされるヨシュアの声は、それだけで俺には猛毒のように感じられる。
「ゃ……ち、ちがっ」
「もっと奥?」
「ひ……!」
 長いゆびがぐぐ、と奥まで入り込むと、びくんと身体が跳ねる箇所に指先が触れた。
「ここ?」
「あぁ……! いや、やぁぁっ」
 がくがくと震える身体が怖いのに、ヨシュアのゆびは容赦なくその部分をぐ、ぐ、と押し上げる。あまりに無体な刺激に、そのたびに内部がびくついた。
 咄嗟にヨシュアのものを掴んでいた手を離して、その首にしがみつく。
「やだ、ぁ……よしゅあ……!」
「いやじゃないでしょ」
「ぁ……も、もう……いぃからっ」
「いいから……?」
 笑う声に、ぐずぐずと大事なものまで溶け出してしまいそうだ。
「よしゅあので、して……っ」
 涙声で情けなく懇願すると、中をなぶっていたゆびがずるりと引き抜かれた。無意識に引きとめようと締めつける粘膜に、余計に泣きそうになる。
「いいの?」
「ぅ、んぅ……うん……っ」
 こくこくと頷くと、ひくつく後孔にヨシュアのものが押し当てられた。熱い感触に入り口をくすぐられて、それだけで呼吸が変になりそうだ。
「すごく、痛いかもしれないよ」
「ん、んん」
「ネク君の細い腰じゃ、壊れちゃうかも」
「ぃ、いいって言ったろ」
「うん。もし壊れちゃったら、そのときまた考えようか」
 本気か冗談か分からない顔でそう言うと、ぐぐ、とヨシュアのものが押し込まれた。その瞬間は、なんだか変な声を上げてしまった気がする。
 開かれる感触は熱くて、なぜだか切なくて、痛いかどうかなんて分からない。
 ヨシュアがうまくタイミングを合わせてくれて、時間をかけてちゃんと全部おさまったときは、そんな自分の身体を褒めてやりたくなった。
 はぁ、はぁ、と呼吸を意識するとほんの少し引き攣れるような痛みはあるけれど、そんなの些細なことだ。
「入っちゃったね」
「ふ……ぉ、おっき……ぃ……」
「一応、褒め言葉かな?」
「ば、か……っ」
 軽口を叩くヨシュアが愛しくて、繋がったまま何度もキスをする。そのまま少しずつ突き上げられると、ぎゅうぎゅうと締めつける内部がヨシュアのもので火傷するんじゃないかと思った。
 さすがにきついのか、余裕がなさそうに眉を寄せるヨシュアのくちびるがかすかに囁く。
「ごめん、ネク君……」
「……?」
「制限、外れちゃうかも」
 言われた瞬間、ずる、と腕の力が抜けて、しがみついていた腕がシーツに落ちた。
「は、ぅ……やぁ……!」
「ちょっと、言うのが遅かったね」
 申し訳なさそうに息を漏らすヨシュアはやっぱり余裕がなさそうで、制限が外れるくらい俺の中は具合がいいのかと頬が緩みそうになる。
 それでも縋るものを失った身体は不安定で、どうしていいのか分からずにヨシュアのスミレ色を見つめた。
 いつもの鋭さを潜め、今は熱っぽく潤んで色気を垂れ流すその色に、またぎゅう、と内部が狭くなるのがわかる。
 それでもヨシュアは優しく微笑むと、シーツの上で所在無さげに揺れる手にゆびを絡めて、強く握ってくれた。
 その感触にひどく安心して、握り返せない自分が一つだけ不満だったけれど、俺の分までぎゅっと力を込めてくれるヨシュアをどうにも好きでたまらないと思う。
「よしゅ、あ」
「うん」
「すきっ」
「うん……」
「す、き……!」
「知ってるよ」
 落とされる声の優しさに、やっぱり俺は泣いてしまったのだけれど、腫れたまぶたにヨシュアはやわらかく口付けてくれた。


 じわりと、内部に感じるヨシュアの熱を噛み締める。
 それはひどく穏やかで、最中の激しさが嘘のように思えるのが不思議だった。
 壁にもたれたヨシュアをまたぐ体勢でぐったりと身を預ける俺の背中を、ヨシュアの手は優しく撫で続けている。
 なんとなく離れがたくて、終わった後も体勢を変えて繋がったままだ。
「なぁ……おまえのエントリー料って、俺に会えなくなるから……?」
 ふとずっと気になっていたことを口にしてみる。ヨシュアが珍しくふてくされていたから、あの後考えていたのだけれど、いくら考えてもそんな自惚れた答えしか出てこなかった。
「なんだ、ちゃんと分かってたんじゃない」
 呆れたように溜息を漏らすヨシュアの様子が、何を当たり前のことを、とでも言いたげで、うれしいというよりも恥ずかしかった。
「ついでに、ネク君のエントリー料の意味も教えて欲しいな」
 ちら、とヨシュアの視線が机の上のヘッドフォンに向けられたであろうことが、見なくてもわかる。
「やだね。ズルすんな。自分で考えろよ」
 つれないなぁ、と笑うヨシュアは、本当はわかっているのかもしれないし、わかっていないのかもしれない。
 その様子に今度はこちらが溜息を吐きながら、もう一つ、考えていたことをついでに口にしてみる。
「おまえがRGに来るのが負担になるなら、俺がこっちに来るのはダメなのか?」
「ダメだよ」
 思いのほか強い口調に驚いて、ヨシュアの胸元に押し付けていた顔を上げた。
 見つめるスミレ色はまっすぐにこちらを射るのに、その光は寂しそうで、悲しそうだ。
「あんまりこっちにいると魂から引き摺られちゃうから、本当は推奨したくないんだよ。僕がRGに行くぶんには問題ないんだけど……今日は、特別」
 ヨシュアにそんな目をさせてしまった自分が情けなくて、詫びるように目の前の首筋に頬を擦りつける。
 そうすると自然にこちらをくすぐるヨシュアの髪はやわらかくて、愛しかった。
「だから、これからも待たせるけど……待っててくれるかい?」
 なんでそんな当たり前のことを聞くんだろう。
 そんな風に聞いたりせずに、いつもみたいに強引に、待っててね、とでも言えばいいのに。
 やっぱりヨシュアはわかっているようでわかっていないなと思う。
 だからあえて声には出さずに、返事の代わりに一つだけちいさくキスをした。



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