さすがにまずいかな、と正直そう思った。

 消えるなら彼のいない場所に、と移動したのに。
 いつかの選択で崩壊を選んだ世界。僕にはふさわしいと思った。
 なのに。
『バ、カヨシュア……』
 どうして彼は僕がどこにいてもわかるんだろう。
 何も知らない顔で、一番僕のことを知っているんだろう。
 ネク君が名前を呼んでくれるから。触れる手は温かいから。
 僕の手を、握ってくれるから。
「……俺を置いて行くな……」
 声にならない彼の声を聞いてあげられるのはきっと僕だけだろう。
「ねくくん、が」
 僕だけだから。
 彼に教えてあげなくては。

「ネク君がいてくれて、よかった」

 君がいるせかいで、僕は消滅してあげたりなんてしないのだと。



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