※性描写を含みます。ご注意ください。 「今日は?」 布団を捲りながらベッドに上がり込むヨシュアにそう言って視線を向けると、何とも言いがたい微妙な顔をされた。 ここのところずっとなその態度に、いい加減むっとする。 「だってネク君、今日も朝早かったでしょ? 疲れてるんじゃない?」 昨日は起きられなくなるから、という理由で断られて、今日はこれだ。というかそろそろ、こんな調子で煙に巻かれ続けてかれこれ一週間はしていない。 「それとこれとは関係ないだろ」 思わず不機嫌な声音になってしまうのを隠す気にもならなかった。 「うそ。ご飯食べ終わった後、ソファでうとうとしてたじゃない」 う。見られてたのか。 「あ、れは…! 別に、腹いっぱいになったら誰だって眠くなるだろ。明日、休みだし」 「次の日が休日なら夜更かししても大丈夫なんて、ネク君お子さま」 わざとらしく肩をすくめたヨシュアは、誤魔化すように俺と自分に布団を被せる。 キングサイズの広いベッドは、寝そべっている俺の横に大人サイズのヨシュアが入ってきてもまだ余裕があるくらいで、ここに一人で寝ると広すぎて落ち着かないこともしばしばだ。 ご丁寧にぽんぽん、と掛け布団を叩くヨシュアの動作は丸っきり子ども扱いで、そのまま枕に顔を埋めようとするのを阻むように抱きついた。 「ヨシュアっ」 「なぁに」 子どもをあやすような声色は、俺しか聞けない優しいものなのに。 「ヨシュアは、俺とするの嫌なのかよ」 抱きついた身体の感触とか、温かさとか、ヨシュアの匂いに思わずドキドキしてしまったけれど、困ったように笑うヨシュアのオトナの表情が俺は嫌いだ。 「いやなわけじゃないけど」 「じゃあなんだよ」 「だから……」 このままだとまたヨシュアに口先で言いくるめられて、うやむやにされてしまうのが目に見えている。だったら、そうなる前に行動に移してしまえ。 「欲求不満でこのままじゃ眠れないって言ったら、してくれるのか?」 身も蓋もない俺の言葉で驚いた表情をするヨシュアを尻目に、布団を跳ね除けた。そのままのしかかるようにして、無理矢理ヨシュアの下肢を探る。 「あ、こら、ネク君っ」 下着の中に手を突っ込んだ辺りでいよいよ焦ったのか、俺の動きを押し留めようとヨシュアが身を起こす前に、体勢を低くして取り出したものにくちびるを近づける。 「じゃま、したら、噛み付くから……思いっきり」 「……それじゃ脅迫だよ」 まあ、俺がヨシュアの身体に傷つけるようなことできないって、ヨシュアにも分かっているんだろうけど。こういうときは勢いが大事なのだ。 ふう、とため息を吐きながらも何とか俺の本気が伝わったのか、ヨシュアはまた困ったように笑っただけだった。俺がこういうことを言い出すと、いつもヨシュアは困った顔をする。 困らせたいわけじゃないんだけど。俺が、子どもだからなのかな。 「んっ……」 大きく口を開いて、まだ何の反応もしていないヨシュアのものを迎え入れる。 慣れているわけでもないし、手順もよく分からないけれど、同じ男なんだから感じるところは一緒だろう。多分。勝手にそう思いながら、何となく検討をつけて舌を這わせた。 痛くしてしまわないように、ぬるぬると唾液を纏わせながら先端をしゃぶると、少しずつ反応して勃ち上がるのが嬉しい。そんなの男の生理反応だなんて冷静な頭では考えるけれど、嬉しいものは嬉しいのだ。 男が男のものを咥えるなんて去年までの俺が聞いたら卒倒しそうな話だけれど、それがヨシュアのものだというだけで、今の俺には嫌な気持ちなんて全然湧いてこない。 ヨシュアの身体で汚いと感じるところなんてあるわけないし、ヨシュアは全部がキレイだからそれもごく当然なことなのかもしれなかった。 ただ、今のヨシュアはオトナの姿で、要するに今俺が咥えているものも子どもサイズのヨシュアのものではなくて、徐々に大きくなるものに口内を圧迫されて少しばかり苦しいのは否めない。 「んく、ん……んぅ……」 「まったく、どこでこんなこと覚えて来るんだか」 ヨシュアの大きな手がするすると髪を梳いてくれるのは嬉しかったけれど、笑いながら呟かれた言葉は少し酷いんじゃないかと思う。こんなこと、誰かに教えられたからするんじゃなくて、俺がそうしたいと思ったからしているに決まってるのに。 「ふ、ぅ……」 それでも必死に手とくちびるを動かしていると、いよいよ屹立を咥え切れなくなってくる。苦しさに一端口を離して、今度は横から咥えるように愛撫を繰り返した。 先ほどから感じるヨシュアの視線に、はしたなく身体の熱が上がる。今の俺をヨシュアはどんな気持ちで見てるのかな、なんて思うと見て欲しくない気持ちと、見て欲しいような気持ちとで物凄くヘンな気分になった。 多分、今の俺は、すごく嬉しそうな顔でヨシュアのものを咥え込んでいるに違いないから。 「ネク君」 「ん、んっ」 「ヘンな顔」 柔らかく頬を撫でる指先に、それだけで簡単に身体が震えた。先ほどから太腿を擦り合わせるようにしてなんとか我慢していたけれど、それも限界で、ヨシュアの屹立から手を離すとそのまま下着ごと自分のズボンをずり下げる。 「は、ぁう……う、うーっ」 もう完全に勃ち上がってしまっている自身は無視して、後ろに手を伸ばした。ヨシュアの先走りがぬるつくゆびを這わせただけでひくつく後孔に、そろそろと指先を埋めていく。 「ふ、あっ……! ふ、ぅ……く」 「やらしいね」 「ぅや……み、るなっ……」 「そうかな? すごく嬉しそうだよ」 ふふ、と笑いながら指摘する声に、ああやっぱり、とどうしようもなく恥ずかしくなる。きっと俺自身、もっとヨシュアに見て欲しくて、触って欲しくて仕方ないのだから。 「僕も手伝ってあげる」 す、と背筋を撫でる感触にびくつく暇もなく、そのまま後孔まで滑ったヨシュアのゆびが粘膜の抵抗も空しく押し込まれた。 自分のゆびとヨシュアの骨ばったゆびとに圧迫されて、びくん、と身体が跳ねる。 「ゃ、あ……! しゅ、よしゅあっ」 「ほら、ちゃんと慣らさないと」 ぐちゅぐちゅと押し広げるように容赦なく動かされて、久しぶりの感触に内部がきつく収縮した。がくがくと腰を揺らしても、お構いなしにヨシュアの長いゆびは奥まで入り込んで、く、く、と粘膜を押し上げる。 「うあぁ、ぁっ……はぁ、あぅ……ゃ、いや……っ」 「ホントにいや?」 「ん……んぅ……んー…!」 自分では怖くて触れないところでもヨシュアは当たり前のように触れてきて、強い刺激に耐え切れずに身体が揺れる。 はぁはぁと荒くなる呼吸に口が閉じられなくなって、愛撫できない代わりのように、ヨシュアの性器に頬を擦り付けた。粘つく先走りすら愛しくて、くちゅくちゅと音がするのも構わずに頭が動く。 「よ、しゅ……ヨシュアっ……」 「なあに」 「も、ゆび……やら……」 ちゅ、ちゅ、と性器の先端に口づける度に薄く吐き出されるヨシュアの息で、簡単に我慢できなくなる。 「うん」 それでも後ろをぬちぬちと弄りながら、だから? とでも言いたげな意地悪な声に、震える身体に鞭打って無理矢理押し倒すようにのしかかった。ずる、と抜けていくゆびの感触に、名残惜しそうに締め付ける内部はもう蕩け切ってしまっている。 「も、う……いれる、からっ」 押し倒されたヨシュアはびっくりしたようなウサギの目をしていたけれど、すぐににやついた余裕の表情に戻ってしまうのが少しばかり悔しい。 「僕に選択権はないんだ」 「う、るさい……っ」 からかう声音に、その手に乗るものかと切り捨てて、ヨシュアの身体にまたがる体勢で後孔に屹立を押し当てた。それでもぬるりと滑って逃げてしまうものに、じりじりと熱がわだかまる。 どうしようもなくなって、結局自分で後孔を押し広げながら、掴んだヨシュアの屹立の先端を何とか押し込んだ。 「ふ、あ……あぁっ……!」 先端が入ってしまえば、あとはずるずると体重に任せて性器が中に入り込む。 ゆびとは比べ物にならない大きさのものが内部を割り広げる感触に、びく、びく、と身体が痙攣した。 「ひ、ん……っん、んぅ」 「大丈夫かい?」 「ぅ……く……」 今のヨシュアのものははっきり言って規格外で、ぎゅう、と粘膜が締め付けてしまうたびに圧迫感が凄まじい。 久しぶりなせいもあるけれど、ヨシュアは今の姿を晒すようになってからあまりこういうことをしてくれないから、というのもあると思う。ヨシュアがもっとちゃんとしてくれれば、きっと慣れるのも早いと思うのに。 「ネク君?」 「や……! ぅ、動い、ちゃっ」 「うん?」 「うごくな……!」 ずる、と屹立がほんの少し内部に擦れるだけで、言いようのない快感が全身を駆け抜ける。 ヨシュアの腹の上で揺れる俺の屹立は、既に白っぽくなった先走りでべたべたになっていて、少し動いただけで簡単に達してしまいそうだった。 「ぅ、うぅ……んく、ぅ、やだ……っで、でちゃっ」 ぎゅう、とヨシュアの服を掴んで何とか堪えようしても、何度も襲い来る波に身体が痙攣するのが止められない。 「ネク君」 「や……らっ……やぁぁ……!」 それでも、こんな状態で動くななんて土台無理な話で、ヨシュアが少し身じろいだ瞬間に簡単に爆ぜてしまった。ぱたぱた、と白濁がヨシュアの腹を汚す音に耳を塞いでしまいたくなる。 「出ちゃったね」 「ん……んっ……ぅ、ごめ、なさ……」 一部始終を傍観していたヨシュアの声が、からかうように笑ってでもいてくれたらまだ強がりを保てるのに、ただ事実を確認するように淡々と告げるものだから余計に恥ずかしくてたまらない。 俺ばっかりいつも余裕がなくて、ヨシュアは何でもないような顔をしていて、こんなのは不公平だ。欲しがってるのは俺だけなんだって、見せつけられているようで泣きたくなる。 「ネク君、ちょっと降りて」 ヨシュアの顔が見られなくて俯く俺の頭に、浴びせられた言葉が一瞬理解できない。徐々に言葉を反芻するうちに、腹の底が冷たくなった。 「え、う」 「一回、抜くよ?」 「よ、よしゅ……や、ぁ」 抵抗する暇もなく大きな手のひらに腰を掴まれて、ずるずるとヨシュアのものが抜けて行く。 「ひ、ぅ……っや、やだ……やだぁ……!」 暴れようとする俺の手足を難なくいなしてベッドの上に横たわらせると、ヨシュアはそのまま身を起こした。 背中に感じるシーツの感触が冷たい。どうしよう、気を悪くしたのだろうか。 「よしゅ、あ……ごめ……やめちゃ、や……」 そのまま離れてしまうのが怖くて恐る恐る服の裾を握ると、苦笑したヨシュアが俺の顔の横に手をついて覆いかぶさってくる。ヨシュアに押し倒されている形になって、先ほどとは逆の体勢に戸惑った。 「ああ、大丈夫だよ。やめたりしないから」 「よ、しゅ」 「そんな顔しないで」 そう言って降りてくるキスの感触が優しくて、思わず泣きそうになる。拙い口づけで応えながら、必死に手を伸ばして首にしがみついた。 ぐ、と思い切り脚を持ち上げられて、露になった箇所に再びヨシュアのものが押し当てられたのが分かる。 「だって、これだけ熱烈に煽られてさ」 先端で入り口をくすぐるように少しずつ捻じ込みながら、呟くヨシュアの声はどことなく楽しそうだ。 「い、ぁ……よしゅ、っあ、ぅ」 「動かないで見てるだけなんて」 ヨシュアはそのまま一気に押し込んだりしないで、いちいち内部がヨシュアのものを食い締めるのを確かめるように少しずつ入り込んだ。 焦らすようにゆっくりゆっくり挿入を進められると、徐々に広げられる粘膜の感触の生々しさにまともな声も出せない。 「あっ、ぁ」 「ちょっと無理、でしょ」 「ぅあ、う……だ、め……だめっ……」 あと少しで前立腺に届きそうなところまで挿入されて、思わず逃げるように腰を引いた。今奥まで突かれたりしたら、どうなってしまうか自分でも分からない。 「ね?」 それでもすぐにヨシュアの手に捕まえられて、逃げることなんて許してもらえなかった。 「よしゅ、あ……ゃ、待って……まっ」 「だーめ」 「ゃ、あっ……あぁぁ……!」 言葉と共に根元まで強く押し込まれて、あまりのことにがくん、と身体が痙攣する。強すぎる快感を認識する間もなく、そのまま射精してしまった。 びゅく、びゅく、と精液を吐き出すたびに内部を締め付けてしまって、その度に強制的に走る快感にゆるゆると首を振る。 「ん、んん……は、ぅ……はぁ、は……」 「また出ちゃったの?」 「んく、ぅ……ゃ」 「僕、まだ一回も出してないのに」 呆れたようにため息を吐きながら、よいしょ、と何でもないようにヨシュアは俺の腰を抱え直した。 「でも、これくらいじゃ欲求不満、解消されないでしょ?」 そのままゆっくりと律動を始めるヨシュアに、わけも分からずにしがみつく。 「よ、しゅ……よしゅあっ……!」 「最後まで付き合って、ね」 掠れた声音で囁かれて、甘く口づけまで落とされてしまっては、大人しくうなずく以外に俺に選択肢なんてあるわけもなかったのだけれど。 「アメリカだと、三日間愛してるって言わなかっただけで離婚理由になるらしいぞ」 「……」 「しかも週三回以上のセックスが義務付けられているとか、いないとか」 「ネク君」 はー、と今にも盛大なため息を吐き出しそうなヨシュアに、渋々と顔を上げる。 「なんだよ」 「僕ってどこのコンポーザーだっけ」 「渋谷だろ?」 「……僕とネク君が住んでるのは?」 「渋谷だな」 そんな分かりきっていることはどうでもいいのだ。ついでに信憑性の疑わしいアメリカ云々の話も正直どうでもいい。 それでどうしてこんなどうでもいいことを言い出したかなんて、ヨシュアにはとっくに分かっているはずなのに。 不満たらたらの視線をじとりとヨシュアに向けると、今度こそ盛大にため息を吐きながら抱き締められた。ぎゅう、と腕に力を込められると、ヨシュアの胸に顔を埋めるかたちになって表情が見えない。 「今後出来る限り、努力はするよ」 あ、また曖昧に濁してうやむやにしようとしてるだろ。 「ホントだな」 「んー」 「ちゃんと聞いたからな」 うーだのあーだの返事にもならない声しか発しなくなったヨシュアは、もう既に眠ってしまう気らしい。 そのやる気のない態度に不満を残しながらも、ヨシュアの匂いと体温に包まれているうちに、俺にもうとうとと眠気が襲ってくる。 「今度また欲求不満になったら、容赦なく押し倒すから」 あたたかい胸に頬を擦り付けながら呟いた言葉に、ヨシュアはまた困ったような笑い方をしているんだろうなというのが漏れた吐息で分かってしまって、何とも悔しかった。 20090407 →もどる |