このゲームも、大分進められた。
どういう流れになろうとも、僕の気持ちに変わりはない。


ケータイをぱたんと閉じたヨシュアは、足元で目を閉じるネクに視線を落とした。
さっき、3日目のゲームが終わったところだ。
不条理とも言えるゲームをクリアし、今はすぅすぅと寝息を立てている。
――流石に、僕が選んだだけはある。
実力もソウルも、ヨシュアの考えている以上の結果を出していた。
ヨシュアにとってのネクは選ばれたゲームの駒。
それだけの筈だ。

「ん…」
居心地の悪いアスファルト。薄汚れた地面。
それをベッドにしたネクが小さく身動きをした。
目を閉じたまま、眉間に皺を寄せた、苦しそうな顔で。

「よしゅあ…」
乾いたくちびるが動き、ヨシュアの名を呼ぶ。
「…?」
思わず座り込み、耳を寄せた。
「殺さ…ない…で…」
「……」


宇田川町のあの日。
一瞬で変わる表情。怯えた瞳。

――僕は、ネク君を

殺した。

ヨシュアは一つ呟き、膝を付いた。

「      」
耳元で呟いた言葉は、謝罪なのか、断罪の言葉なのか?

伸ばした手は小刻みに震えた。
突然鳴りだしたケータイ電話に、ためらいなく通話ボタンを押す。
「…あ、羽狛さん。うん、大丈夫。僕は、ね」
目線をネクに落としたまま、ヨシュアは立ち上がった。
「羽狛さん」
呟きに似た声色。
「僕は」
――間違ってたのかな
身動きするネクが視界に入る。
「…なんでもない」

電話を切り、ヨシュアはネクに背を向けた。
空が白み始める。

「今日も、長くなりそうだ」

――あと、4日か。
そして、長い一日が始まる。