エロ文です。そしてキョンがメイド服です。
閲覧の際はどうか自己責任で。































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「本当にいいんですか?着替えなくて」
 いいっつってんだろ、分からん奴だな。
 俺としては、少々締め付けのきつい女物の下着のせいで、帰り道の間にばっちり臨戦態勢だ。
 着替える時間が惜しいし、それ以前に、
「イメクラエッチは男の夢だろ?」
 そのためと言っても過言ではないこの格好なのに、わざわざ着替えてどうする。
「……まあ、否定はしませんが……あなたが着る方を夢見ていたとは晴天の霹靂です」
 うるさい。俺だって本当なら着せて脱がせての方を夢見てたさ。
 どこで何を間違ったのか、今は着て、あまつさえ脱がされたいとか、頭のネジが一本どころか三ケタくらい飛んでったようなことを考えているのはお前のせいなんだぞ。
 お前が悪い。だから責任取れ。
「やれやれ……本当に困った人ですね」
 その台詞は俺の十八番じゃないか。勝手にとるんじゃない。
などと、とてもお隣さんに聞こえていたりしたら申し訳ない以外の何物でもない会話を交わしているのは、古泉の家の居間である。
 正直こんな会話を交わすのも惜しいほど切羽詰まっている俺は、玄関に入って扉が閉まった時点でコトに及ぼうとしたのだが、
「靴くらいは脱いでくださいよ」
 の古泉の一言で一蹴され、そのまま居間まで引き摺られてきたわけだ。
正直この恥ずかしい格好で、古泉のコートを羽織っていたとはいえ公道を歩いた羞恥と、隣に古泉がいる期待で俺は臨戦態勢どころか膝から崩れる寸前だったので、引き摺られたというのも案外間違っていないと思う。
 もともと言葉遊びが好きなこいつが、俺との言い合いを楽しむようにまだ何か言い募ろうとしていたが、いい加減こっちが限界だ。
「……っも、いいだろ……!」
 痺れを切らした身体が勝手に、なけなしの力で古泉を引っ張った。
 油断していたのか、古泉があっけなく俺の上に倒れこんで来る。
 尻餅をついた俺の上に、古泉が覆い被さる体勢だ。
「あ、ぶないですね」
 古泉が呟いたが、床にはカーペットが敷かれているし、何より下に俺がいるんだからさほど衝撃はなかったはずだ。
 こら、わざわざ引き倒したのに起き上がろうとするんじゃない。
 引き留めるように首に腕を回すと、困ったような変な顔をされた。
 おいおい、それじゃせっかくの男前が台無しだぜ。
「本当はね、僕も困ってるんですよ」
 そんなの、その顔を見れば誰でも分かるさ。
 観念したように、古泉の顔が近づいてくる。
「僕も男性の女装に興味があるわけではなかったはずなんですが」
 こつん、と額を合わせた古泉の手が、太腿を這うようにスカートを捲り上げる。
「っ、……!」
「なかなかどうして悪くないな、とか思ってる自分に戸惑ってしまって」
 朝比奈さんがSOS団通常業務でお召しの清純派メイド服と違い、俺が今着ているのは膝上丈のイメクラ仕様だ。膝上どころか、ちょっとでも捲られれば簡単に下着がお目見えしてしまう程度の。
「ん、んっ……!」
 捲り上げたその手で、古泉が内腿の辺りを撫でてくる。
 古泉の手が動くたびに、たっぷりとあしらわれたフリルがまとわり付いてくすぐったい。
「おやおや、これは随分と余裕のないことですね。涼宮さんからお借りした衣装が汚れてしまいます」
 もう完全に下着は手遅れだな。
 既に濡れているのが布越しに見て分かるそこを、古泉に揶揄するように言われて耳が熱くなった。
 というかちょっと待て。古泉は今なんて言った?
 戸惑っていると言った。悪くないと思っている自分に。何が悪くないって?
 俺のこの格好がだ。
 すでに下半身の熱に浮かされかけた頭がゆっくりとそのことを飲み込むと、体中の血液が顔に集まってくるのが分かる。
「顔赤いですよ?どうしました?」
 ワンテンポ遅れた俺の反応の原因が、古泉には分かりかねたらしい。
 いいや、なんでもないぞ。そのまま続けてくれ。
 口が裂けても、今の言葉が聞けただけでこんな格好した甲斐があったなんて断じて言わないからな。
 俺がだんまりを決め込んだ間にも、不思議そうに古泉の手が腰回りをくすぐっている。
「っ、おい……」
「なんでしょう」
「も、いい加減に」
 ちゃんと触れ、という言葉を言う前に古泉は察したらしく、下着の上からゆっくりと撫でられた。
「あ、あっ……!」
 布越しのもどかしい動きに、腰が跳ねるのが抑えられない。
 というか言う順序を間違えたな。頼む、まず下着を脱がせてくれ。
 焦らされて張り詰めたそこは女性用の下着に上手く収まるはずもなく、正直そろそろ痛い。  そんなこと、同じ男のこいつが見れば分かることなのに、古泉はそ知らぬふりで俺の胸元に顔を寄せてくる。
 そのままずれたエプロンの脇から、ブラウス越しに胸を舐められた。
「ん、んぅっ」
 じんわりと湿る生地の感触に背筋が震える。そのまま押しつぶされたり転がすようにされて、子供みたいに頭を振った。
「も、やめ……」
「イメクラセックスは男の夢でしょう?脱がせたら勿体無いかと思って」
 くすくすと吐息で笑う古泉の声にくらくらする。
 与えられる快感の全てがもどかしすぎて、苦しい。
「こ、古泉っ……!」
 それから散々反対の胸も弄られて思わず古泉にすがりつくと、ようやく古泉の気が変わったらしい。呼びかける声が、情けなくも涙声になってしまった。
 スカートが捲れた下腹部に、ゆっくりと手が這わせられる。
「ひ、ぁっ」
 下着のゴムに沿うように撫でられて、変な声が出た。古泉の服を掴んだ手が震える。
 ゴムを引っ張って進入してきた古泉の手が、ゆるゆると下着を下ろす。
 ようやく圧迫感から解放された安堵と、これから与えられる快感への期待で息が荒くなるのが隠し切れない。
「は、こ、こいずみ……!」
 古泉の手に擦り付けるように腰が動く。はしたないと分かっていても、止めるなんて無理だ。
「あ、あぁっ、あ」
 今度は焦らされることなく、直で握られて扱かれた。2回、3回。
 頭を振るたびにぱさぱさと頬にかかる髪が鬱陶しい。
 あ、これはやばいかもしれない。
「ぁ、古泉、ちょっ、たんま……待っ……!」
 何かの衝動が胸までせり上がってくる。
 やばい、待て、待て待て待て。
「い、あぁぁっ!」
 古泉の指が先端を擦った瞬間、衝撃が走った。
 ガクガクと腰が震える。上手くできない呼吸が苦しくて、ぎゅっと目を瞑った。
 はぁはぁと上がる息を抑え込んでようやく目を開けると、古泉の手が白く汚れている。
 かあ、と全身が熱くなった。古泉が俺の顔を覗き込んでくる。
「大丈夫ですか?」
 おい、こんなときにそんな真面目な顔で心配そうな声を出すんじゃない。
 ろくに触られてもないのに射精しちまったとか、どんなギャグなんだそれは。
 ここは、もうイっちゃったんですか?とかなんとか言って俺の羞恥を煽る台詞を吐くべきだろ。
 古泉の目に少しでもからかいの色があれば、なけなしの反論で照れ隠しのひとつもできるっていうのに。
 汚れていないほうの手で優しく頬に触れられて、泣きそうになった。
 ちくしょう。この天然め。
「ぉ、おまえが……っ変に焦らすから……!」
 あまりの情けなさに涙声になってしまい、慌てて俯いた。目頭が熱い。
「すみません」
 だから謝るなっつの。余計みじめになるだろ。
 ここは自信満々に、そんなによかったんですねとか言っていればいいんだ。
 こっちはとんでもなく恥ずかしい思いをしているというのに、古泉はそんなこと気にもかけていないようで段々腹が立ってきた。
 もういいっ、続けろ!
 もはや羞恥も何もどうでも良くなって、古泉の手をひったくると自分からそこに導いた。
 正直、熱を吐き出したとはいえ古泉に慣らされた身体は満足しておらず、早く触れられたい。
 が、古泉の興味は別にあったらしく、手はそのまま太腿を滑ってガーターベルトをなぞった。
「ん、く……」
 くすぐったさと快感で、背筋がぞくぞくする。
 今日の俺はミニスカメイドに女性下着、ガーターベルト付の完全装備だ。
 よって、下着を下ろされた今はガーターベルトにオーバーニーのストッキングだけをまとっているわけで。
 改めて確認すると、なんだか、ものすごく、うわ……という感じだ。
 可愛い女の子の装備ならば、それなんてエロゲ?的なそそる光景だったのだろうが、生憎着ているのは俺なんだよな。正直がっかりだぜ。
 余談だが、ガーターベルトは下着の下に着けるものである。じゃないとトイレにもご主人様とのあれやこれやにも不便だろ?
 結構間違っているのが多いんだよな。どこでとは言わないが。
 閑話休題。
 そんなどうでもいいことが俺の頭をよぎっているうちになおも古泉がベルトに指を添わせてくるので、いい加減我慢も限界だ。
「い、から……早くしろよ!」
 また反応を始めているそこを古泉に押し付けると同時に、古泉のものも膝で押してやった。
「っ」
 古泉が漏らす短い吐息にさえ興奮する。
 制服越しだが、まだ半勃ちというところだろうか。なんだかものすごく悔しい。
「相変わらず、積極的ですね」
「……んなの、お前が動かないからだろっ」
 このマグロが!とまでは言わないが、そんな古泉に時折、いやかなり頻繁に不安になることが多いのは事実だ。
 いつも切羽詰まってるのは俺ばかりで、古泉は拒絶せずただ困ったように笑うだけだ。
 お前、本当は俺のことなんて何とも思ってないんじゃないか。
 なんて言えるはずもなく、俺はなりふりかまわず必死になるしかない。
 いちいち遠回りな愛撫にも古泉の態度にも苛ついて、色々なものが限界だった俺は、悲鳴を上げる身体を起こして古泉を突き飛ばした。
 驚く古泉を尻目に、構わず馬乗りになる。
 熱に浮かされた頭はフラフラだし、膝なんてとっくにガクガクだったが、意地で踏ん張った。
 勢いのまま、古泉のベルトも外してやった。
 そのまま自分の指をくわえて唾液を絡め、膝を立て、ひくつく後孔に触れる。
 くそ、この瞬間ばっかりは何回やっても慣れやしない。
 古泉がやってくれりゃ楽なのにな。こいつの指なら、俺の頭は快楽にまみれて何もかも分からなくなれるのに。
 俺が我慢できないのがいけないのか?
「んっ……ぅん」
 ごちゃごちゃと考えながら、なんとか指を一本潜り込ませた。
 びっくり顔で見上げてくる古泉に見せ付けるように、心持ち足も広げてやる。
「は、ぅ……う、く……んっ」
 古泉の指みたいに長くもなければ器用でもない自分の指では、快楽にはほど遠かった。ただひたすらに圧迫感と違和感が出入りするばかりだ。
 奥まで入れるのも指を増やすのも怖くて、ただ浅い場所を行き来させる。
 これでは古泉を受け入れる準備には程遠く、息苦しさが増すだけだ。
「は、ふぁっ……」
 ふと、先程から古泉が所在なさげにさ迷わせていた手で、頬に触れてきた。
 優しく添わされて、愛撫でもないのに身体が震える。どうしようもなく息が上がった。
 そういえばこいつまだ勃たせてなかったなと思い、そのまま屈みこんだ。
 さっきベルトは外してやったので片手でホックを外し、口でファスナーを下ろす。躊躇なく下着もずらして、古泉のものを取り出した。
「あの……」
 古泉が身じろいだが、無視した。
 うるさい、黙ってろ。こういうときは何もしなくても勝手に勃たせとくもんだろ。まったく。
 モノの大きさを目の当たりにして多少怯んだものの、どうにか口を開けてくわえ込んだ。
 何とも言えない味が広がったが、古泉のものだと思うと嫌悪感などは全く湧いてこず、俺も現金だなと思う。
 やり方なんてさっぱり分からなかったが、男なんだし感じるところなんて似たようなもんだろと開き直って舐め回した。
 舐めたり甘噛みしたりで時折古泉が息を詰めるのを見ると、そう検討外れでもないらしい。いい感じにでかくなってきた。
「ん、んぐ……は、んく」
 古泉のをくわえながら、何とか後ろの指も動かす。
 さすがに指は増やせないが、古泉のものに奉仕している興奮で大胆に出し入れできた。
 時折古泉が無言で優しく髪を撫でる感触にもぞくぞくする。一応気遣われている、のだろうか。
 ばっかお前、ご奉仕はメイドのお約束業務だろ?
 つーかお前の気遣いは優しすぎて苦しいんだよ。
「はっ、ふぁ……んっ、んん……!」
 唾液にまみれた古泉のものが大きすぎてくわえきれなくなったころに、優しく肩を押された。
「もう、いいですよ」
 そろそろ乗っかって入れてもいいだろうかと考えていたので戸惑ったが、そのまま指を引き抜かれて後ろ向きの四つん這いにされる。どうしていいか分からずに振り向こうとしたら、やんわりと背中にのしかかられて手を握られた。そして、後孔に指が触れる感触。
「ふ、あっ……こ、古泉っ?」
「もう少し慣らさないと、辛いですから」
 耳にかかる息と、背中に感じる古泉の体温に心臓が跳ねた。近い。なんだか色々なものが近い。
 先ほどまでのギャップに戸惑っていると、あっという間に指が二本挿入された。稚拙ながら慣らしていたおかげか、抵抗が少ない。
「あ、ぅ……うぅん……!ゃ、あ、はぅっ」
 でもそれ以上に、古泉の指であることに全身が反応した。
 自分の指では違和感と息苦しさしか感じなかったのが嘘のように、腰が跳ねる。
「あ、あぅ……ふ、くっ……こ、こいずみ……!あっ、ぁん……!」
 器用な指が、ゆっくりと中を掻き回す。
 身体の変化についていけず、古泉に握られていない方の手がカーペットを引っ掻いた。
「は、はぁ……ん、んゃ……はっ、あぁっ」
 古泉の指が動く度に沸き上がる快感を逃がしたくて、床に額を擦り付ける。頭を振っていやいやをすると、端から見たら子供みたいに見えるんだろうと思った。
「こ、こいずみぃっ……ふあぁっ……!」
 今の快感でさえ持て余しているというのに、容赦なく指が増やされた。つっぱっった膝がガクガク震える。
 古泉の長い指が奥まで入り込む度、びくんびくんと全身が痙攣した。
「は、あぁっ……ゃ、古泉、待っ……!ぁ、あぁ……!」
 古泉の指に翻弄される身体は、ただ頭を振ってだらしなく開いた口から涎を垂らすしかできない。
「痛く、ありませんか?」
 指の動きとは裏腹に、気遣わし気に古泉が囁く。
 馬鹿野郎、こちとら良すぎてどうにかなりそうだっての。
「こ、こいず……もっ……もういいから……!」
 わざと意識を残すような快感が苦しかった。早く行きつくところまで行かせて欲しいのに。
「もう少し我慢してください」
 震える身体を後ろから抱き締めるように、古泉が体重をかけてくる。身体が跳ねる度に、重ねられた手があやすように動いた。たまらない。
「も、もぉ……ほんとにい、から……!は、ああぁ……!……い、……いれろよ……っ!」
 涙声になって懇願すると、古泉が苦笑したのがわかった。
 最後に押し広げるように指をぐるりとしてから、ゆっくり引き抜かれる。
 取り込んだものを逃すまいと、反射的に締め付けてしまった。ああもう、なんて正直なんだ俺の身体は。
 物足りなさに腰が揺れるのを必死に抑えていると、ゆっくりと熱いものが押し当てられた。
「は、あぁ……っ」
 正直、その感触だけでたまらない。堪えるように頭を振ったが、もはや我慢できずに腰を突き出した。
 内部を満たすものを必死に取り込もうと、後孔がせわしなく開閉する。
 古泉に見られていると思うと脳みそから沸騰しそうだったが、止められない。
「あっ、は……はやく……っ」
 はしたなく急かせば、今にも膝から崩れそうな腰をしっかりと掴まれた。
「力、抜いててください」
 言われた瞬間、古泉のものが押し入ってくる。
 散々待ち望んでいたものに満たされる歓喜と、ずぶずぶと割り開かれる衝撃に、口から勝手に悲鳴紛いの声が出た。
「ひっ……!ぃ、あ、あぁっ!」
 とっさにすがるものを求めて、近くに落ちていた古泉のコートを掴む。さっきまで俺に貸し出されていたやつだ。
 抱き締めるように顔を埋めると、古泉の匂いがした。
 一男子高校生の癖に、なぜこいつはいつもいい匂いを振り撒いているんだろう。
 匂いが鼻先をくすぐる度、胸が高鳴って困る。
 と、俺がコートと戯れていると、布地を握りしめた両手を古泉の手によって掴まれ、引き剥がされた。
 そのまま床に縫い止めて、上から指が絡められる。
「僕よりも、僕のコートと遊びたいんですか?」
「ゃ、ちが……っああぁ!」
 少し乱暴に突き入れられて、快感で頭が真っ白になる。
 なんだどうしたんだ。心持ち声が困っているようにも、不機嫌に聞こえる。
 何か古泉の機嫌を損ねるようなことをしただろうか。よく分からないが、古泉が俺の行動で感情を振れさせるのは珍しい。
 少し、いやかなり、嬉しい。
「そちらがご所望なら、すぐにでもご希望通りに致しますが」
 などと呑気に構えていたら、せっかく奥まで満たされたものがずるりと抜ける感触。
「あ、ゃ、やだ……!まっ……こいずみっ!やあぁ……!」
 抜かれる感触に震えながら、必死に力を入れて締め付けた。突然のことに困惑しながら、必死に頭を働かせる。
 なんだ、古泉はどうしたんだ。
 抜けそうになるのを押し留めるように腰を突き出す。一度与えられたものを失うのは、今の俺には耐えられない。
「ゃ、いやだ……!古泉がいぃ……!じゃなきゃ、や、だから……っあぁぁ……!」
 古泉の表情が見えないのが怖い。
 古泉の目には、まだあの優しい光は宿っているだろうか。もし冷たく消え去っていたらと思うと、背筋が震えた。
 と、
「……冗談ですよ。びっくりしました?」
 優しい声音が降ってきて、抜けかけていたものがずぶずぶとあっさり中に戻ってくる。
 再び満たされる感触に、深く息を吐いた。変わらぬ優しい声にも、心底安堵する。
 ええい、たちの悪い冗談なんか言うんじゃない。本気で怖かったんだぞ。
 ああ、やばい、今ものすごく。
「こ、こいずみ……!」
 伝わるように、絡められた指をぎゅっと握り返した。
「顔……見たい……っ」
 古泉が驚いているのが、空気で伝わってくる。
「み、見えないと……怖……っんん……!」
 さっきの想像がぶり返して、声が震えた。
 ああもう、古泉お前、今どんな顔してる?
 もどかしさに、必死で振り返ろうとしてもうまくいかない。じんわりと涙が目に浮かぶのを感じていると、やんわりと肩に触れられた。
「少しだけ我慢してください」
 それだけ言って古泉が俺の肩を掴むと、いつの間にかぐるりと視界が反転した。入れたまま体勢を変えられたのだと理解する前に、衝撃で声が出ない。
「っ……!!」
 内部をまんべんなく擦られたような感覚に、全身がびくびくと跳ねた。とっさに古泉の首に腕を回してしがみつく。
 ぎゅう、と力を込めても揺るがない均整のとれた肢体の感触に、ほ、と息を吐いた。
 さっきまでの不安が嘘みたいに溶けていく。
「ん、く……」
 ようやく内部が落ち着いて顔を見ようと腕を緩めると、こつん、と額を合わせられた。
 恐る恐る目を上げると、古泉はいつものように優しくて少し困ったような顔をしている。目に浮かぶ光はこちらがドキドキするくらい穏やかだ。
「こ、こいずみ」
「はい」
「古泉」
「何でしょう?」
 目の前でくすくすと笑う古泉の吐息を感じながら、ねだるように唇を寄せた。
「ん、んぅ」
 子供のような稚拙なキスを繰り返すと、応えるように古泉の舌が唇をなぞる。
 素直に口を開くと、すぐに舌が絡め取られた。
「は、ふぁ……ん、く……」
 巧みにあやすような古泉のキスに、翻弄されながら必死に応える。
 古泉から見たら下手くそなことこの上ないんだろうなと思うが、こいつはそんなことで俺を笑ったりしないからどうでもいい。
 段々俺の息が怪しくなってきたのを感じたのか、ゆっくり唇が離れた。名残惜しく思いながら酸素を補給する。
 間近にある古泉のきれいな顔に見とれていたら、ごく控えめに揺すられた。
「いいですか?」
「ぅ、うんっ……」
「動いても?」
「い、いぃ……!い、からっ」
 この上まだ確認してくる古泉をもどかしく思いながら、ぎゅっとしがみつく。
 ついでだから、古泉を焚き付ける意味も込めて首筋に噛みついてやった。きれいに浮いた骨にも喉仏にも、見とれそうになって困る。
 こいつにも造作の整ってない部位なんてあるのか?想像がつかん。
 子供じみた悪戯に苦笑しながら、古泉が律動を始める。最初はゆっくり、段々早く。
「ふ、あぁぁっ!あ、あぅっ……んん!」
 待ちわびていたこの瞬間まで、古泉はいつもののんびりした様子でもったいぶって見せる。
 だが、一度コトを始めてしまえば、普段の調子が少し崩れていっそ荒々しい仕草も覗かせるのを知っている。
 古泉と繋がることは素直に嬉しいが、本性を見せないこいつの素に近い部分が見られると言うことも、俺が頻繁にこいつを誘う理由の一つであることは否定できない。
 まあ、本当のこいつなんて神さまだって知らないんだけどさ。
 些細なことだと言われようと、俺にはこの時間だけで十分すぎるほどなのだ。目の前の、少し眉根を寄せた余裕の無さそうな表情だけで。
「ん、んんっ……こ、こいずみ……っ!」
 古泉が容赦なく動くせいで、抑えようもなく内部がぎゅうぎゅうと締め付けているのがわかる。
 こいつがいつもの余裕しゃくしゃくな態度を崩すところなんて、滅多に見られたもんじゃない。
 そうさせているのが俺の身体だと言うことが、不思議でたまらなかった。そんなに俺の腹具合はいいもんなのか、と、男同士にも関わらずこいつを受け入れられる器官があることに感謝した。
「う、ひあぁ……!ゃ、あぁっ、は、古泉……!」
 されるがままに揺さぶられていると、不意に古泉の指が俺のものに絡む。
「ひ、はぁ……あぁ、やだ、さ、触んな……!やぁぁっ!」
 あからさまに射精を促す動きに、呼吸もままならない。あまりに過ぎる快感が怖かった。
「あぁ、やだっ……ふ、こいずみ、こいずみっ」
「はい」
「古泉っ」
「ここにいますよ」
 快感でわけも分からず名前を呼ぶ俺のうわ言に、いちいち返事をする古泉がおかしかった。
 普段はいらんほど弁舌が立つくせに、こんなときの古泉はあまり口を利かなくなるから、余計に。
 おかしくて、嬉しくて、苦しくて、気持ちいい。
 最後はあっさりとやってきて、じんわりと中に古泉の精液が吐き出された感触に震えながら、古泉と自分の腹を汚した。

 やるだけやった後は、気が済みましたか?とでも言いたげに淡々と古泉は乱れた制服を着替え、俺の身体も簡単ながら清めてくれた。
 ちぇ、相変わらずそっけない奴だな。
 俺はといえば身体を包むだるさと幸福感に身を任せながら、メイド服も着替えないままだ。
「そんなに気に入ったんですか?その格好」
 古泉のコートを布団代わりに、だらしなく寝転がる俺の隣に腰を下ろしながら、古泉が不思議そうに尋ねる。
 そんなことは俺の男としてのプライドにかけて断じてないと言っておくが、なんとなく着心地がよくて馴染んできた気がする。なんだ、これは何かに毒されてるのか?
 ああ、一応言っておくが下着だけは替えさせてもらった。いつまでもあんなガーターとストッキングをまとっている趣味はない。
 スカートのフリルからのぞくトランクスが男の夢をぶち壊しだがな。
「可愛いだろ?」
 特に何の考えもなしに言ってみたら、古泉は困ったように苦笑を漏らしながらあっさり言った。
「ええ、可愛らしいですよ。男の方が着ているという違和感も、心構えによっては案外ささいなものなのですね。また一つ賢くなりました」
 なんの衒いもなく言われてしまって、仕掛けた俺のほうが照れてしまった。ええい、天然め、天然め。
 誤魔化すように古泉のコートを抱き締め、丸くなる。
「もうお休みですか?帰ってきてから何も食べてませんけど」
「ん……」
 古泉の声質は柔らかく耳に心地よくて、聞いているうちに眠気の誘惑が襲ってきた。満場一致で、俺は睡眠をとる。しばらく我慢してくれ、俺の食欲。
 眠気に思考を奪われながら、とりあえず言うべきことは言っておいてみる。
「起きたらテーブルに夕食が並べられていて、お風呂も沸いてますからねというシチュエーションを希望する」
「おやおや……どっちがメイドなんだか」
 お前はどっちかっていうと執事だがな。
 呆れたようなポーズを取ってはいるが、きっと起きたころにはほかほかのご飯が用意されているであろうことを俺は疑わない。
 古泉が吐息で笑うのを空気の振動で感じていると、頭のフリルに軽い感触が落とされる。どうやら古泉がヘッドドレスにキスをしたらしい。相変わらず気障な仕草が嫌味な程に似合うやつだ。ドキドキしてしまった。
「おやすみなさい」
「ん、おやす……み……」
 ちゃんと最後まで言えただろうか。やんわりと髪を梳く古泉の手が心地よくて、よくわからない。
 古泉の体温とコートの匂いと、身体にまとわりつくフリルの感触に包まれながら、目を閉じた。

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